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それにしても美味しい蕎麦だった。
冨岡さんの蕎麦湯を少し頂けたし満足だし、鬼の情報もある程度集められたしで今回の調査は順調。
後は、新しく使う日輪刀との相性がいい事を祈るしかない。
「仕事が早いですね、さすが隠」
「その為にここに居る」
「そうですね」
後はこのまま日が落ちるのを待つだけ。
ある程度鬼が出現する範囲が限られているらしく、逃げ道になるような裏通りや人通りの有無を直接確認し終わったところだ。
できる準備は終えたとは言えまだ時間はある。それまでは自由時間なのか、一度藤の家に戻るのか。
「そこのお嬢さん!」
「ん、私ですか?」
ぼんやりと歩いていたら快活そうな男性に声をかけられた。
冨岡さんは私に気付いてないのか、いつの間にか姿が見えなくなってる。
何かの押し売りだろうか。それだったら面倒だな、なんて振り向いて男性の顔を見上げた。
「お嬢さん、この廃刀令に刀を二本も持ち歩くなんて珍しいな」
「…もしかして、鬼殺隊の方ですか?」
「……何だ、地味に正体バラしやがって。もっと派手に驚いてみろ」
それでも隊士かと言われたのでそうですと返事をしておいた。
目の前の快活そうな男性は髪の毛をかき上げ色っぽい男性へと変化する。
随分と偉そうな態度の人だなと顔をまじまじ見てみると、白銀の髪に筋肉質な高身長の派手好き。
もしかして、と私は目を見開いた。
「宇髄天元様ですか?」
「おっ、やーっと良い反応したじゃねぇか。お前が派手に珍しい月の呼吸の使い手だろ」
「え、えぇ。そうです」
「更にあの冨岡と仲良くやってるみたいだし、お前の事が気になってな!」
宇髄様の言う通り月の呼吸は珍しいし、冨岡さんとある程度やって行けてる私は珍獣扱いなのかもしれない。
前に本部に一日だけ寄ったときに同僚にドン引きされながらも褒められた覚えがある。
あれ?褒められたのかな。
「しかしまぁ小綺麗な格好してんじゃねぇか。嫁の次くらいに可愛い顔もしてるしな!」
「何と勿体無いお言葉。宇髄様はお口が上手なのですね」
音柱 宇髄天元様はお嫁さんが三人居ると聞いたことがある。
豪快なお姿に豪快な笑い声、そしてなんて素敵な男性なんだろうと思った。
奥様方の話をした時に本当に優しい瞳をしていらっしゃる。
本当に好きなんだなって思ったし、それと同時に羨ましくも思った。
誰かを愛し、愛される事がいつか私にも来るだろうか。
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