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暫く目を瞑っていると、鈍い音が目の前からして驚いて瞳を開けたら柱に頭をぶつける冨岡さんが居た。


「ちょっ、何してるんです?!」

「目覚ましだ」

「怖い!何この人!」


思ったままを言ったら頭を軽い力で殴られた。
奇行に走ったの貴方じゃないかとか思ったけど次はもう少し強いのが来そうでその言葉は飲み込んでおく。

いつものようにてちてちと早歩きの冨岡さんの後ろを不満げな顔でついて行きながら、さっきの事を少しだけ思い出して私も思わず柱に頭をぶつけた。
その音に振り向いた冨岡さんが何やってんだこいつみたいな顔をしてたけど、貴方もやってましたからね。

普通に町娘として変装できているかよく見ていただけなんだろうけど、悪くないって言葉が少し嬉しかった。
胸が締め付けられるような感覚に首を傾げながら今度こそ冨岡さんの後ろについていく。


「お昼ご飯はどこで取るか決まってるんですか?」


こくりと前を見ながら頷いた冨岡さんに、今日の昼は何だろうと考える。
私は特に好き嫌いもないので、大体は冨岡さんに任せているのだ。

しかし浅草は何度来ても凄い人混みだと思う。田舎出身の私からすると、ちょっと落ち着かないのが本音。
任務なので文句は無いし、鍛錬代わりに人にぶつからないように出来る限り早歩きで通るなんて事をやった事がある。

お陰で初めてここに来た時いつものように帯刀していたら警官に追われたのにあっという間に巻けた事はいい思い出。

しかし鬼が出ていると言うのに町の人は特に変わらずいつも通りを過ごしているようだ。
目の前を歩いていた冨岡さんが足を止め蕎麦屋さんへ入っていく。
今日のご飯はお蕎麦らしい。

暖簾をくぐり奥の席へ座った。


「いらっしゃい」

「ざる2人前」

「かき揚げそばください!」


気前の良さそうな女性が注文を取りに来てくれたと思ったら、冨岡さんに紙をこっそり渡していた。
おや、積極的!と思えないのはそれが一般人がするような動きではなかったから。

隠や隊士は各々現地での生活をしつつ、鬼が出現した際に情報をこちらに教えてくれるのだ。



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