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今になってあれは修行だと分かったけど、当時の幼い私にとってはただただ嫌われたのだと思う事しかできなかった。

一人で山を駆け下り、少しずつ降りる時間が短くなってきた頃木刀を持たされ再び山を降りろと言われ、それも慣れたら下山後に素振りを腕が千切れるんじゃないだろうかと思う程させられた。

それが1年半続き、誕生日に渡された刀を持たされた。
これを貰ってから厳しく変わってしまった両親を恨めず、この刀のせいだと押し入れの奥にしまっておいたはずなのに。


「…父さん?」

「これから最後の修行を言い渡す」

「さい、ご…?こ、これが出来たらもう山へ行かなくていいの?父さんと母さんは前みたいに戻るの?」

「あぁ。私から教える事はもうない」

「頑張る!私頑張るよ!」



これが終われば優しかった父や母に戻ってくれるのならばと私は身を乗り出して最後の修行というものにくいついた。

抱きしめて欲しい。
良くやったと褒めて欲しい。
またあの刀を譲り受ける前の家族に戻れるのならば私はやれる。




「技を習得しなさい」

「は、はい!」



わざ?
技とは何だろう。
何か教えてもらっただろうか。
刀を渡されたんだ、何かしらの父からの指導をしてもらえると思いとりあえず返事をした。

しかし父は部屋の奥へと引っ込み出てこなかった。



「とっ、父さん!?わたしなにも教えて貰ってないよ!」

「月陽」

「母さん…」

「月陽、よく聞きなさい。母さんが教えられる事は一つだけよ」




戸惑う私の頭に触れ、まるで子守唄を歌うかのように母は教えてくれた。




「四季折々の風や匂いを感じなさい。そして満ち欠ける月を見なさい。そうすればきっと見えてくるわ」




当初私は母の言ったこの言葉の意味が分からなかった。
四季折々の風を感じて、匂いを嗅いで、月を見て何が変わるのかと。

何が何だかも分からない私はただ刀を握り素振りをするしかなかった。




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