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あの後夕飯の準備をしようとしたら、冨岡さんと私の鴉が同時に今日の任務を告げたのでそれは中止となった。
(冨岡さんの鴉がおしい間違いをしていたから、全てが同時というわけでもなかったけど)

冨岡さんの鴉はおじいちゃんで、たまに単語間違いする時があるけどそこもまた可愛いと思えてしまう。
暇な時毛並みを整えてあげると膝の上で居眠りする様子は本当に可愛らしい。
冷静なかー君とは違って新鮮な気持ちにもなる。


「どっちを使うんだ」

「私の日輪刀を使います」

「そうか」


それぞれ部屋に戻り、必要な物を取って家の外で待ち合わせた。
今回は浅草での任務故に電車を使い都会へ向かうらしい。
準備途中で私服を持ってこいと冨岡さんに言われたので少しだけ荷物が重いのは、町娘を狙った鬼が出ているからだと思う。

廃刀令が出たこの時代、浅草で刀を堂々と差すのは面倒くごとになるため竹刀入れに日輪刀を隠した。


「…冨岡さん」


いつもなら外で鉢合わせたら特に何も話すことなく歩き始めるのだけど、今回だけは違った。
というより私が止めた。


「電車に乗るんですよね?」


私の質問に首を立てに振って肯定をする冨岡さんの腰には堂々と日輪刀が下げられている。
この人天然過ぎて怖い。警官に話し掛けられた事ないのかな、なんて思いながら冨岡さんの日輪刀を失礼ながら没収させてもらった。

背中に隠して欲しいと言ったら頭から日輪刀がちょんまげのように出てた。


「私が言うのも何ですが、都会や警官の居そうな所に行くときは日輪刀を隠さなきゃ駄目じゃないですか」

「その必要はない」

「いやいや、あるある!無駄に職質受けて時間も潰されるし最悪連れて行かれますよ!」

「きちんと説明すれば何とかなる」

「なりませんよ!?」


私はちょっと不貞腐れ気味な冨岡さんを半ば引きずるように歩き出した。
彼の日輪刀も背負ったので少し重いけど仕方ないと思いながら歩いていると、竹刀入れと私服が入った風呂敷を取り上げられる。


「え?」


その代わりなのか、冨岡さんの軽そうな荷物を渡され今度は前を歩かれた。
突然の優しさに戸惑いながらも、有難く好意を受け取りその背中を追った。



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