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「さぁ、どうぞ」

「ありがとうございます…」


初めて手にする私だけに作られた刀を受け取れば、柄の部分は金と白で出来ていて頭金からはひらりとした布が垂れている。
珍しい装飾品に目を奪われていると、そわそわと動く鉄穴森さんの姿が視界に入った。

きっと、刀身が何色になるのか気になっているのかもしれない。


「で、では…抜かせてもらいますね」


傍らに置いてある日輪刀は白だった。
私は白なのだろうか。それとも別の色なのだろうか。
ひと呼吸置いてゆっくりと鞘から取り出し光に当てる。

私の色は、


「…透明…?」

「ほう…なんと美しい」


峰の部分は透明となり、刃の部分だけが銀色に光っていた。
鉄穴森さんは食い入るように私の日輪刀を見つめ感嘆の息を洩らしている。

単純に綺麗だと思ったのは私も同じだった。
冨岡さんも興味深そうに刀を見ている。


「珍しい呼吸の使い手とお聞きしました。何かしらの派生とならば似通った色もあるとは思いましたが、まさか透明とは」

「へ、変なのでしょうか…」

「変ではないですよ。ただ、とても珍しいというだけです」


鉄穴森さんはゆっくりと頭を振って私の言葉を否定した。
しかし、父から貰った刀は白だ。
父も月の呼吸を…そう思った時、子供の頃に言われた言葉を思い出した。

『父さんはほとんど習得することは出来なかった。月の呼吸というのは修行をすれば誰でも会得する事ができるわけじゃない』


もしかしたら父さんは、月の呼吸の使い手では無かったのかもしれない。
少し困ったように眉を下げた父さんの顔を思い出した。


「あの、鉄穴森さん」

「何でしょうか」

「透明の日輪刀は今まであったのでしょうか」

「残念ながら私が見たのは初めてです。しかし里長ならば知っている事もあるかもしれません」


父さんは代々と言った。
それが何代あるのかは知らない。でも私の前に誰かが呼吸を使っていなければ代々と言われることはないはず。
月の呼吸の使い手が透明の日輪刀を使っていたかは分からない。
それでも、何だか刀に認められているようでとても嬉しかった。


Next.



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