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その後冨岡さんの家に帰った私達は、お館様から届く指令を遂行しつつ頼んだ私の刀が届くのを待った。

冨岡さんとは特に変わらず仲良く(?)過ごしている。


「月陽」

「あ、お帰りかー君!」


刀鍛冶の人にお願いしてから数日後、自分の鴉が完成した事を教えてくれた。
鬼殺隊に入ってそれなりに経ったけど、まさか自分の刀を打ってもらう事になるとは思わなくて少し落ち着かない。

入隊してから一度も刀が折れた事がないと言ったら冨岡さんが感心してくれた。多分。


「冨岡さん!もう直刀が届くそうです!」

「あぁ」

「何だか緊張します」


道場で鍛錬をしていた冨岡さんに報告しに行くと、手を休めてこちらを向いてくれた。
今まで私は何度も自分の日輪刀を作れと言われてきた。父と母から貰った刀は捨ててしまえと言われた。

でも、二つとも帯刀したらいいと言ってくれたのは冨岡さんが初めてで。
この刀の存在を冨岡さんが認めてくれたみたいで嬉しかったのは昨日の事のように覚えてる。


刀とは物である。そんな事はよく分かってる。
でも、この日輪刀は私の家族を守り今までの私を守ってきてくれた存在なんだ。
だからこの刀だって大切な私の一部。


「こんにちは」


日輪刀を抱き締め幸せな事ばかりでもなかった思い出に浸っていると、意外と目の前に居た冨岡さんと背後から聞こえた声に肩が震えた。
それと同時に動きを止めた冨岡さんも道場の入り口に立つ人物へ視線を向ける。


「初めまして、月陽さん。私は刀鍛冶の鉄穴森と申します」

「はっ、初めまして!本日はわざわざ遠い所まで御足労頂きあびっ…ありがとうございます!」

「あはは、そう固くならずに。すみません、外から声を掛けたのですがお返事が無かったので入らせてもらいました」

「いや、こちらこそ出迎え出来ずに申し訳ない」


刀鍛冶の方も個性が強いと聞いていたけど、そんな事は微塵も感じられない程、鉄穴森さんは穏やかに笑った。


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