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朝、冨岡はいつものように同じくらいの時刻に目を覚した。
うっすらと開けた視界には額を合わせるようにくっつき目を伏せた月陽の顔がある。黙ってその場から起こさないように身を起こし、一瞬で昨日彼女が寝ていた布団まで移動する。

真顔で心臓の部分を抑え早鐘を打つ鼓動を落ち着かせた。


「う…母さん…お腹空いた…」

「!」


ころり、と寝返りを打った月陽の脚と胸元が見えた瞬間音もなく掛け布団を投げつけ部屋を出た。
同じ部屋にしたのはやはり間違いだったかと後悔しながら廊下を歩いていると、先程出てきた部屋が勢い良く開いた音がする。


「と、冨岡さん!おはようございます!」

「…まずは服を着ろ。俺は一度出る」

「あーっ!お目汚し失礼しました!」


面倒を見る上でまずはそこら辺の教育が必要だろうか、と考えながら顔を洗いにその場を後にする。
その後はいつもよりゆっくり支度をして部屋に戻ると隠が届けてくれていたらしい隊服に身を包んだ月陽が正座をして待っていた。


「昨日はご迷惑をお掛けしてすみませんでした」

「謝ることじゃない」

「あうっ」

「だが一つだけ助言をするなら、お前は自分の日輪刀を作れ。それは手放さなくていい。二本帯刀すればいい」


側に置いた日輪刀を目で指しながら冨岡は続けた。
小さく月陽の瞳が嬉しそうに輝いたのを視界の片隅に入れながら説明を続ける。
普段無口な冨岡だが、必要最低限は渋々ながらも話す男ではあるのだ。


「お前の呼吸を使った時の異常な疲労はもしかしたらそれで解決されるかもしれない」

「異常…私が体力不足と言うことではなく?」

「細かくは俺にも分からない。だがお前は生きて鬼を殺すんだろう。試してみろ」


そこまで話した所で襖越しに小さくこの家の持ち主の声が聞こえた。
朝食が出来たようで、月陽が立ち上がり襖を開けると鮭大根が乗った膳が運ばれて冨岡の表情が少しばかり綻んだ。



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