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膝から崩れる様にして意識を飛ばした月陽を冨岡が抱き留めた。
もうすでに女鬼は結晶となり粉々に粉砕されている。


「よくやった」



継子ではないが実質冨岡にとっては隊士全員が部下であり、月陽もまた例外では無い。
その部下が元下弦の鬼を倒した事に労いの言葉を掛けてやったが、恐らく彼女の記憶にはないかもしれない。

月陽の頬や肩、それから一番出血している太腿を止血してやり抱き上げた。
本来なら担いで行きたい所だが、彼女の格好では大切な所が丸見えになってしまいそうであったので自分の羽織を掛け横抱きに抱える。


隠は既に手配済みであり、自分が片付けた小物の方はもう処理がされて始めている頃だ。
ゆっくりと廃墟から外へ出てみれば、やはり隠が近くまで駆け寄ってきた。


「お、お疲れ様です柱!…と、その女性は」

「こいつは俺が見る。大した怪我もない。作業を続けろ」

「はっ!」


受け取ろうと両手を差し出した隠に頭を振って近くの村の藤の家へ向かう。
道中それなりの隠に会ったが殆どの者がその光景に目を丸くしたというのは後日談。
それがちょっぴり噂になった事は冨岡が知る事もなかった。

藤の家へつくまでの間、月陽の呼吸や刀について思案する。
本来白の刃は霞の呼吸を使うものが出るという。しかし月陽は月の呼吸であり、師である父から譲り受けた物がこれだったと彼女は話していた。


(永恋の父を調べてみるか)


元々鬼殺隊であったというなら何かしらの情報は本部に行けば分かるだろう。
この任務に出る前に永恋に刀を打てと言ったが、嫌そうな雰囲気を醸し出していた。
それ程に手放したくないのであろうが、刀は摩耗していればいつかは折れるし相性というものもある。

冨岡は小さくため息を吐いた。


(説得させるには骨が折れそうだ)


元は深入りせず聞かれた事にだけ答えようと思っていた冨岡だが、月陽の刀技に興味を惹かれた。
鬼を凍てつかせ、頸を斬らずとも鬼殺出来る月の呼吸とやらは胡蝶が使っている蟲の呼吸とはまた違う技法である。
前に会った時は確か別の型で首を跳ねていたし、何個かの型を使い分けながら戦っているのだろうと予想した。


Next.



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