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急いでそれを斬り払った私は視界の端で鬼が笑いながら腕を降っているのが見えた。
痛む太腿に気を使う暇もなく転がるようにそれを避け、体制を整える。
「もう終わりかい、女ァ!!」
「うるさい、狭い室内で響くんだよ」
「あの男はどうせ来ない!さぁ、早く死ね!死ね!妾の肩を熔かした責任は貴様の血で償、え…?」
「月の呼吸 捌ノ型、葉月」
私が弱ったと慢心した鬼に乱れ斬りを放った。
手と足を両断し、再生をし始める前に体を削ってやる。
栄養素となる物も減ってきたのか、少し再生が遅れてきた。
近づいて来ている気配に気付いてゆっくり息を吸った。
「私は死なない。私は生きて、人々を守る!それが役目だ!」
顔と胴だけとなった鬼へ間合いを詰め、上へと飛び上がった。
蔓で自分の体を回収しようとする手段はもう見切っている。
「塵と消えよ。拾壱の型 霜月」
鬼の頸に一太刀入れ、横をすり抜けて刀を鞘にしまった。
私の様子に焦りの表情をしていた鬼がまだ自分の首が繋がっている事に下品な笑い声を上げだす。
「アハハハハ!どうした!妾の首はまだ繋がっているぞ!貴様如きが切れる訳がなかったのだ」
「…うん、斬るつもりはなかったから」
「息も絶え絶えで、可哀想に!よしよし、妾が食ろうてやろ…う…?」
「さようなら」
辺り一面が冷気に包まれ鬼の首から氷が突き出る。
ゆっくりと顔や体を覆い尽くしていく様子に蔦を使って氷を落とそうとするが、ぎゃくに蔦まで凍らせていく。
最初にこの部屋を分断した蔦の結界は千切れ、向こう側で技を出そうとしていた冨岡さんの姿が見える。
拾壱の呼吸、霜月。それは霜の如くひっそりと私が斬った場所へ生えだし、鬼やその鬼を基とする物ならば触るものは全て凍らせ壊す。
ゆっくりと、じっくりと。
しかしこの技を使うと体力が物凄く消耗し、一日一回出してしまえば私は気絶間際まで困憊してしまう。
「とみ、おかさん」
その場に座り込んだ私に近付き体を支えてくれる冨岡さんの優しい香りを最後に気を失ってしまった。
「良くやった」
優しい声が聞こえた気がした。
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