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冨岡さんが他の鬼を仕留めに行って少し経った。
何度かこの鬼の腕や足を切り落としたがすぐに蔓が巻き付いて再生される。
 
本来なら長月で斬り落としてしまいたいがこの呼吸は突きの攻撃ゆえに躱された時の隙が大きいし、未だに消耗が激しい。
しかしこのままやり合っていては結局再生の出来ない私が不利になる一方だ。

下弦とはいえ、それなりの実力があるんだろう。
だからといって驕るわけでもなく私に絶え間なく攻撃を仕掛け防御も抜け目がない。


「…月の呼吸 参ノ型、弥生」


粘着質な音を立て横から飛び出してきた蠢く種を斬り落とし、残骸を横目で見れば小さく触手のような脚がジタバタと動いて止まった。
見なければよかったと心底後悔しながら鬼へ突進する。


「同じ攻撃ばかりじゃ妾は倒せぬ!妾はまた十二鬼月に戻ってあの方に血を分けてもらうのだ!貴様如き妾の血肉にしてやるわ!」

「月の呼吸 肆ノ型、長月」

「っ!」


顔や体に蔓が当たったが、気にせず鬼に攻撃を当てることだけを考えた。
当てれば再生を止めることが出来る。
一突き、肩に狙いを定め当てることが出来たが僅かばかりズレてしまい腕を落とす事は出来なかった。

鬼は叫び声を上げながら体制を整えようとした私に力任せに振るった蔓を伸ばしてくる。
髪の毛を数本切られただけで避けられた私は、肩を溶かし続ける光を見つめた。

次はあそこを狙って斬り落とす、と一歩踏み出した瞬間太腿に嫌な感覚を覚えた。


「しまっ…!」


蛆のような形になった種だったものが私の太腿に齧りついた。


Next.



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テーマ「人外ファンタジー」
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