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「と、鳥肌が止まりません…」

「……」

「睨まないで下さいよ、何かこの種生理的に受け付けないんで…す…ひぃ!動いた!動き始めましたよこの種!」

「煩い」


とりあえず意思疎通は無理だと判断した鬼をこれ以上気持ちが悪い物を生み出さない内に頸を斬り、怒られない範囲で蠢く物体から距離を置いた。
いや、もう怒られましたけども。

冨岡さんが蠢く物体を裂き、刀身を振るって綺麗にしているのを見たけど絶対鳥肌立ってる。


「冨岡さん、きちんと懐紙で拭いてから鞘にしまいましょう」

「…」


私の言葉に嫌そうな顔をしたけど、懐紙を取り出した冨岡さんはきちんと拭いてくれていた。
少しは気持ち悪いと思ってたのかな。

踵を返して元来た道を戻ろうとした瞬間、蔓が動き出し強い鬼の気配を感じた。


「後ろだ、永恋!」

「はい!」


先程鬼が取り込まれていた蔓が二股に別れて襲い掛かってきた。
それと同時に互いが反対方向へ飛び一撃を免れ壁にめり込んだ蔓を斬る。


「妾の餌を取るなんていい度胸じゃないか」


ゆったりとした声に振り向くと、草木色をした体の女鬼が下弦に罰印のついた目で私達を見つめている。
先程の蔓がやはりこの鬼の血鬼術である事は見て取れた。

元十二鬼月だったようだし私は相手の出方を窺うため、下段に構え辺りの蔓の位置を確認する。

鬼や人の血を吸い、それを栄養分として自分の力にしているのだろう。
だとしたら今の私達がいる場所は少々不利になる状況だ。


「血鬼術、呪林結界!」

「わ!」


私と冨岡さんの間から太い蔓が生えてきて場所を分断させられた。
この空間に居るのは私と、目の前の女鬼だけだ。


「男の方は骨が折れそうだからね。弱そうな女から食ってやろ」


妖艶に微笑んだ鬼に口の端が引き攣る。
隣の空間から小さく舌打ちをしたのはおそらく冨岡さんだろう。
何かあったのかと声を掛けようとした時、足元から棘がたくさんある蔓が生えてきた。

それをぎりぎり避けて体制を整える。
落ち着け、大丈夫。そう言い聞かせていれば更に鬼は楽しそうに笑った。



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