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ゾッとするようなきれいな瞳に冨岡は言葉が出なかった。
満月を瞳に閉じ込めたような月陽に見つめられ、暫く無言の時間が流れる。
先に口を開いたのは月陽だった。
「すみませんっ!余計な事を言ってしまいましたか!」
「…は」
「殴っていいです!すみませんでした!」
忽然とその場から姿を消したと思えば冨岡の横に現れふわりとした感触が頭を包む。
一瞬なんの事だか分からなかった冨岡だが自分が抱き締められている事に気づくと月陽の身体を引き剥がし距離を取った。
「近い!」
「ごめんなさい、とても寂しそうな顔をさせてしまったから」
「…お前とは任務を共にするだけの関係だ。馴れ馴れしくするな」
「はい」
しゅんと頭を垂れ自分が元にいた場所へ戻ると、もう一度だけすみません、と一言呟き残りのご飯を食べ出した。
十二鬼月ですら揺さぶる事が出来ない冨岡の精神は月陽に抱き締められただけで良くも悪くも心を動かす。
(他人に抱き締められるなど鱗滝さん以来だ)
変な意味では無く、あの柔らかい感触は己の姉を思い出す。
冨岡は残りのご飯を平らげ手を合わせると台所へと食器を置き、自分の部屋へと戻った。
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