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「と、冨岡さんは恋仲の方はいらっしゃるのですか?」
「……………」
何を言っているんだと言いたげな目を見て月陽はそれを肯定と取ったらしく瞬時に詰め寄った距離を呼吸を使い大幅に広げた。
それと同時に床にひれ伏す。
「申し訳ありません!私とした事が大切な事を聞くのを忘れておりました!ご安心ください、やはり町に宿を取って今すぐ家を出て行きます!!」
「…」
「お館様からのご指示は任務を共にしろとの事で寝食まで共にしろとは言っておりません!図々しいにも程がありました!!」
ひぃぃ、と声が聞こえそうな顔でまくし立てると冨岡の返事も聞かずに自室へ荷物を取りに行こうと立ち上がった。
その瞬間遠く離れていたはずの冨岡が月陽の腕を掴む。
「いない」
「え?いらっしゃらないのですか?」
「…そんな暇はない」
「お、想い人とかも…」
「いない」
「そうでしたか!はぁぁ、良かったー」
冨岡の返事に月陽が胸に手を当て安堵したようにため息をついた。
しかし、安堵した所で冨岡が掴んだ腕は離されず先程の机を挟んだ時より近い距離で顔を見つめられていることに気付き再び肩に力を込める。
これ以上は失敗してはいけない、そんな気がしたのだ。
「お前は」
ごくりと唾を飲み込み冨岡の言葉を待つ。
「鍛錬でもしてこい。煩くてかなわん」
「えっ!しかし夕飯のお買い物を…」
「それなら鍛錬のつもりで全力で走って戻ってこい」
「は、はい!お騒がせして申し訳ありませんでした!」
ぺこりと頭を下げると、掴まれていた腕は離され冨岡は去っていった。
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