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それから細やかな祝いを二人でして家に帰れば、柱になるという連絡を受けた他の同僚たちからも祝いの手紙が届いていた。


「わー!色んな人から届いてる!」

「そうだな」

「ふふ、嬉しい」


届いた分の手紙を抱き締めた月陽を俺が抱き締める。
寂しくはあるが、人に好かれ纏める力のある彼女は前々から柱の素質がある人間だった。

なるべくしてなった月陽を祝ってやれないなど男として駄目だと錆兎辺りに怒られそうだから。


「おめでとう」

「…ありがとうございます」

「月陽は月柱か。お前に相応しい名だな」


鬼の出る暗い夜道を照らす光になりうる月陽に相応しい名だ。
食事も風呂も外で済ませた俺達は一度互いの自室に帰り寝間着に着替えて、自然と俺の部屋に寝に来るようになった月陽を受け入れる。

いつも通りの行動ばかりか普段より身を寄せてくれる月陽に嬉しいはずなのに、何故か日中の視線を思い出した俺は嫌な汗が出てそれを何とか誤魔化そうと腕の中に収まった月陽の身体を強く抱き締めた。


「義勇さん、私が柱になるのが心配ですか?」

「いや」

「大丈夫ですよ。一緒にいられる時間は少なくなるけど、帰る場所は貴方の元だけですから」

「あぁ、そうしてくれ」


俺の不安を拭い去るように背中を優しく叩いてくれる月陽の唇に触れた。
音を立てて離れると俺を見つめる瞳が嬉しそうに細められる。

昨日抱いた所でまだ足りない俺は月陽の身体を貪るように抱いた。
本当なら子を孕んで貰いたいが、避妊薬を飲んでいる彼女にその思いは通じない。

必死にしがみついて俺の背に手を回す月陽にいつもより激しくしてしまうのは昼間の視線のせいなのか何か分からない。

それでも月陽の体温を出来る限り近くに感じていたくて何度も求めた。
気をやってしまった月陽に折り重なるような体勢で目を閉じる。


「月陽…側に…ずっと」


どうしようもなく愛しいと、失いたくないと心が叫び散らしてどう発散したらいいのか分からない。
誰かこの突然訪れた感覚をどうにかしてくれ。

そう思いながら意識を失う様に眠った。


起きた頃にはこの意味不明な感情も無くなってるといい。



次の日、目を開けたら居るはずの月陽の姿が忽然と消えていた。
夜着を着ながら屋敷の中を探しても、どこにも姿がない。


「月陽。月陽…どこだ」


何度名前を呼んでも返事が無い。
心臓が耳や脳から響いてるかのように心音が煩くて仕方がない。

何故居ない。
月陽の鴉を呼んでも彼女の居場所が分からないと首を振られる。

俺に無断で出掛けるなど長い間一緒に居て一度も無かったから、余計に焦りがうまれた。
彼女の部屋に行っても日輪刀だけが無く、隊服や羽織はそのまま畳んである。

鬼が来たのならば俺が気付かない訳がないし、月陽が起こさない訳もない。

正常な呼吸が出来なくなる。

どうしたらいい。

また無くすのか。

大切な人を。


「頼む…返事をしてくれ…っ」


お前が居ないと俺は生きていけないと言ったじゃないか。
帰る所は俺の元だと、言ってくれたじゃないか。



その後も俺は色々な場所に行って月陽を探した。
すぐにお館様へは手紙を送り、追って他の柱にも手紙を出したがいい返事は一つもなかった。

月陽との生活が、まるで夢だったかのように思えてくる。

仕事の合間に月陽を探す日々の中、眠りについた俺は夢を見た。
小さな少女が俺を見て心配そうに駆け寄ると、肩を叩きこう言った。


『――今、楽になる魔法をかけてあげるね』



その後彼女の捜索をする者は誰一人として居なくなった。





一部end.

全40話、これにて一部は終わりになります!
何て終わり方してんの…と書いていた本人も思っておりますが、そこはあえてこの終わりにしたと言っておきますっ!

この続きはまた二部にて書いていきますので、引き続きお付き合いいただけたら幸いです。
月の子の更新についてはその内memoにて追記をするかと思われますので、そちらにて情報をお待ち下さい。
ここまでお付き合いいただいた方々に感謝を!
本当にありがとうございました!!


あお。



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