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鬼を倒した俺達は手を叩いて喜びを分かち合うと、目の前の隊士が永恋さんにふっ飛ばされる。
どうしてだとか疑問が生まれる前にまだ消えていなかった身体が最期に道連れをするべく僅かに再生した腕を振り上げていた。
それをひと振りで両断すると今度こそ灰になって消えていく。

尻餅をついたまま唖然とその様子を見ていた隊士が慌てて立ち上がる。


「……気を抜くのが早いです。頸を落として終わりではないという事をしっかり覚えていて。死にますよ」

「す、すみません…」

「今回は私が居たから良かったものの、ここに居る誰もが先程の腕の餌食になり得たことをよく覚えておいて下さい」


いつもの優しい笑顔を消した永恋さんは俺達に淡々と事の重要さを説くと、鬼の血がついた刀を振り鞘へ納めた。
その様子は女ながらにここまで登り上げた鬼殺隊の剣士としての威厳があり、かっこよさがある。

更に惚れ直してしまった俺はただぼーっと永恋さんの顔を見つめていた。


「園内さん、聞いていましたか?」

「は、はいっ!勿論!」

「そうですか。少しぼーっとしていたようですが、私はてっきり先程の攻撃で何か怪我をされたのかと…」

「全ッ然元気です!相手の出方を伺うなんて基礎中の基礎なのに、わざわざ永恋さんに助けてもらった不甲斐なさに少し考え事をしてしまって…」

「鬼を目の前にするといざやろうとしていた事をやれない方はよく居ます。今度から気を付けてくださいね」


俺の返事に納得がいったのか、にこりと微笑んだ永恋さんは山を降りるために踵を返し歩き出した。
あぁ、そんな凛々しい所もかっこいいななんて思う俺はかっこ悪い男なんだろうか。

出来るだけ側に居ようと駆け出した瞬間、前を行く永恋さんの足が急に止まって思わず肩に触れてしまった。


「あっ、す…すんません!」

「冨岡さん。来ていらっしゃったのですか」

「とっ、冨岡さんってまさか水柱…」

「そこのお前。何故永恋の肩に手を置いている」


そっと永恋さんの肩越しに止まった原因の人物を見たら不機嫌そうに眉を寄せた水柱が居た。
ひょっとしてもしなくても俺だと気付いて慌てて永恋さんの肩から手を離す。


「冨岡さん、お疲れ様です。なぜこちらに?」

「お前の指揮の様子を見ていた」

「そうだったんですか。だったら先に言ってくれたらいいのに」

「俺が居てはお前以外の者の気が緩むだろう」

「あっ、なるほど!」


水柱怖ぇとか思ったけど、ちょっとだけ俺達の思考からズレた二人は頷き合ってる。
何だその二人だけの空気感。ふざけんなよ。

それに水柱が居て気が緩むどころか緊張して満足に身体を動かせないってだけだ。
何でお前がいて気が緩むんだよ、とか心の中でいろいよ突っ込みながら親しげに話す二人を不服そうな表情を浮かべて水柱を睨んだ。

あの人は俺の、


「園内さん、行きますよ!」


涼やかな綺麗な声に顔を上げると、目の前に首を傾げながら俺を見ている永恋さんが居て心臓がおかしくなりそうだった。

手に入れたい。
この女を手に入れたい。

どんな事をしてでも自分の物にしようと、俺を見つめる月陽を見て思った。



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