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【拝啓 月陽
元気でやっているか。此方は少し時間が掛かりそうだ。
今日は犬に噛まれた。
怪我をしないよう気を付けろ。冨岡義勇】


そう書かれた手紙に少し噴き出してしまった。
文でも変わらない相変わらずの口下手に早く義勇さんに会いたいなと思う。

犬に噛まれたと言うことはどういう意味なんだろう。
そう言えば義勇さんは余り動物に好かれなかった。

きっとその様子を見てしのぶさんは笑ってるんだろうな、なんて想像をすると自然と顔が綻んでしまう。

夜に返事を書こうと懐にしまって、薪を取りに外へ向かった。

その後調査を終えた小芭内さんをお風呂に案内して、買ってきてくれた素材を調理する。
お米は炊いてあるし、火も起こしてあるから煮物や焼き物、味噌汁もさっと仕上げてお風呂から出てきた小芭内さんと部屋に居るであろうおこいさんの元へ向かった。


「おこいさん、失礼します」

「月陽ちゃん」

「お身体の方は大丈夫ですか?」

「あぁ、少し休んだら良くなったよ」


日も暮れたので、持っていた藤の花のお香を部屋の隅に置いて後ろからご飯を持って来てくれた小芭内さんも中へ入ってくる。


「さ、一緒に食べましょう」

「一緒に…?」

「今日は冷えるからな。この炬燵で俺達も食べていいか」

「あぁ…あぁ、勿論ですよ」


そう言って泣いたおこいさんと私達の三人でご飯を食べた。
余りご飯は減っていなかったけれど、その代わりに小芭内さんに無理矢理食べてもらったので片付けも楽になった。

片付けも終わり、一度お風呂に入らせて貰うと小芭内さんが部屋で待っている。
何だか違和感を覚えるその光景に干して乾いた隊服を持って横へ座る。


「とうでしたか?」

「ここから西の方角に廃れた廃墟があると聞いた。その辺では度々人が消えるという噂らしい。全く、こんな分かりやすい情報があると言うのに何故気付かなかったんだ」

「確かに…じゃあ今日はとりあえずそこへ行きますか」

「あぁ、お前はそのままの格好でいい。一般人を装い街道を歩いてそこへ行け。俺は隠れながら後を追う」

「了解です」


おこいさんのお店で買った着物の中に日輪刀を隠し、父から貰ったものは背中へ隠した。
何か言いたげな小芭内さんに、きっと父から貰った日輪刀の事だろうと上掛けを着ながら口を開く。

別に隠す程のものではないから。


「これ、父から貰った日輪刀なんです」

「そうか。刀身の色はお前と同じなのか」

「いいえ。無一郎と同じ白なので、きっと霞の呼吸だったのでしょう」

「ほう…それを使うとどうなる?」

「体力の消耗が激しくなります。どうしてだかは分かりませんが、やはり使い手が違うと駄目なのでしょう」

「なる程な。月陽、お前の呼吸はなかなかに珍しい。実力を聞いてはいるが無駄に張り切りすぎんよう自重することを忘れるな」

「了解です」

「おこい殿の様子を見たらすぐに出るぞ」


小芭内さんもおこいさんの様子が気になるのか、雪駄に足を通しながら玄関から近い場所にある部屋を顎でさした。
それに頷いて踵を返そうとした時、またもや気配無くおこいさんが背後にいて思わず仰け反ってしまいそうになる。

小芭内さんも気付かなかったのか僅かに目を見開いていた。


「お出掛けになるのね」

「は、はい」

「どうか気を付けて…必ず戻ってきてちょうだい」

「心配せずとも大丈夫だ。おこい殿は布団で休んでいるといい」

「ありがとう、小芭内君」


小芭内さんはおこいさんに名前を呼ばれて照れ臭そうに目を逸らしていた。
君付けなんてなかなかされ無い立場に居るから照れ臭いのかもしれない。

気を付けて、と再び言ったおこいさんは私達の手を握り玄関の所で見送ってくれた。




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