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私の期間限定の私室となる部屋はとても広かった。
何と贅沢なんだろうか。
元々客間として使う予定だったのか、部屋は綺麗にされてあり布団も新品の如く太陽のいい香りがした。


「冨岡さんて綺麗好きなんだなー」


ぽつりと独り言を言いながら、けして多くはない荷物を広げる。

風呂敷には予備の隊服と刀の手入れをするための道具、殆ど使ったことの無い化粧道具、普段持ち歩いている応急処置用の薬が入った小物入れ。

そして、焼けた跡から掘り起こした父と母の形見の短刀と手鏡。


「何だか嫁入りするみたいだね」


冗談交じりに形見に向かって話し掛けた。
父が放った光を見た後、家の外で目覚めた私は鎮火した家に入り父と母の遺骨を探した。
骨は殆ど見つけられなかったけど、なんとか少しだけ集められたものを庭があった場所に埋めた。

目覚めた後、どうしてかひとりぼっちになってしまったと言うのに涙が出なかった。
父と母が居ないという虚無感や絶望感はあるのに、私の瞳に涙が溢れることはいつまでも、そして今でも無い。
かと言って感情を無くしたわけではないのだ。

多少取り繕う所はあるが、今の私の性格はこの17年間培ってきたものであることに間違いはない。

暫くの間形見を見つめた私は、大切に風呂敷でそれを包み元からあった鏡台の横に置かせてもらった。

さて、と空を見れば夕飯までに時間はまだまだありそうである。
とりあえず買い物にでも行こうかと思い冨岡さんの私室へと向かった。



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