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不死川様と別れて帰路についた私は義勇さんの屋敷の目の前で立ち往生している。
きちんと話そうとは思ったけど、いざ話すとなると少しだけ緊張してしまう。


「うぅ…」

「何してる」

「…いえ、義勇さんになんて話そうかなって」

「迷うならば思うままに聞けばいい」


初めて義勇さんのお屋敷に来た時のように私が門へ寄り掛かっていると後から声をかけられた。
さすがに義勇さんだって分かったけど、恥ずかしい私はあえてそのまま話を続けていると背中が包み込まれる。

義勇さんの服からは吉原の匂いがしたけど、須寿音さんの香の匂いはしなかった。
自分は何を勘違いしていたのだろうと思う。

二人がそんな事するはずが無い事なんか分かっていたはずなのに。


「すまない」

「いえ、私が勝手に誤解してしまっただけなんです」

「俺が須寿音殿の元へ行かなければ良かっただけの話だ。月陽は悪くない」

「私が悪いです。お二人を信じていたはずなのに」

「戻ってきただろう」


ぎゅう、と痛いくらいに抱き締められて首筋に顔を埋められる。
義勇さんはこんなに愛情表現をしてくれているというのに、なんて不甲斐ないんだろうか。


「ごめんなさい、義勇さん」

「俺はいい。だが須寿音殿がとても心配していた」

「はい。ちゃんと須寿音さんの所にも謝りに行きます」

「俺も共に行く」


須寿音さんはあの時焦ったように私に手を伸ばしてくれていた。
その手をすり抜け言葉も聞かずに飛び出してきてしまったんだ、須寿音さんにはとても申し訳ない事をしてしまったと反省する。

あんなに優しくて、あんなに私を想ってくれる人になんて事をしてしまったんだろうか。

段々と視点が下がる私の顎を義勇さんが擦り、振り向くと唇がそっと触れ合う。
まるで励ましてくれるかのように短い口付けをされて、義勇さんの袖を掴んだ。


「もう二度とお前に黙って吉原には行かない」

「…はい」

「俺が、あそこに居た理由は聞かないのか」

「はい。義勇さんが話したくないのなら、聞きません。話してもらえなくたって信じてるので」


気にならないと言えば嘘になる。
でも、何となく聞かなくてもいいかなとも思ってる。

必要な事ならば義勇さんは話してくれるだろうから。


「…見回りに行くか」

「そうですね」


結局須寿音さんに話を聞く事は出来なかったけど、この件のお陰で私の心も決まった気がする。

良いのか悪いのかは分からないけれど、義勇さんに愛してもらうのに怖がる必要は無いと思う。
痛いとは聞いたことがあるけど、それ以上の経験はしてるだろうしきっと大丈夫。

痛かったとしても義勇さんと繋がった証なら甘んじて受け入れようと思っている。


「義勇さん」

「?」

「頑張って満足させられるようにしますね!」

「………煽らないでくれ」


ふんっ、と意気込んだら義勇さんが頭を抱えて首を振った。
何が駄目だったのだろうと想いながら管轄の地区の見回りへ歩を進める。

やっぱり義勇さんの横は幸せだ。




Next.
次は裏になるかと思われますが、飛ばしても大丈夫な内容ですので拙い裏は見たくないという方はスルーして下さいませ!



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