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中に入ってみたら予想通りというか何というかとても殺風景なお部屋だった。
悪口ではなく、何となくいつ居なくなってもいいというような感じだ。

冨岡様の家なのに私物であろう物は最低限。
柱の方々が忙しいのは分かるが、それにしても私物が少ない。


「あ、あの…冨岡様、お台所をお借りしてもよろしいでしょうか」

「構わない」

「ありがとうございます」


冨岡様のお宅ではあるが、下の者が何もせず床に尻をつくなど失礼である。
来る途中の町で、お茶と茶菓子を買っておいた。
お台所を借りる許可を得た私は意外と綺麗な(失礼)やかんへと手を伸ばした。


「冨岡様、お待たせいたしました」


これまた意外と綺麗な急須に茶葉を入れ、蒸らした後手前の湯呑みをお借りして冨岡様の前に持ってきていた茶菓子を一緒に出した。


「あぁ」

「お口に合うと良いのです、が…」

「……」


何だ、この沈黙。
間違ったのだろうか。お饅頭は嫌いであっただろうか。

どうしよう、座るに座れない。
ただただじっとこちらを見つめる冨岡様にどうしようかとお茶を渡した体制のまま沈黙が続く。


「…お前は」

「は、はい!」

「お前は食べないのか」


長い沈黙を破ってくれたのはまさかの冨岡様。
そこでしたか!

お気遣いありがとうございます、と言えば戸棚の中を指差し湯呑みはあれを使えと言ってくれた。
お察しする事が出来ずすみませんと心の中で謝りながら自分のお茶も淹れ、今度こそ冨岡様の向かいに座らせて頂く。


「……あの、冨岡様」

「なんだ」

「お館様から何かご連絡を頂いてはおりますでしょうか」


私は懐に入れたお館様からの手紙を取り出しながら聞けば、冨岡様は1つ頷いた。
あぁ、よかった。それなら話は早そうだ。
後は冨岡様からのお返事を頂くだけ。

居住まいを正して冨岡様の口が開くのを待った。




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