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風呂を出て藤の家にお礼を言って屋敷を出る。

先に出ていたのか、私達を待つように伊黒様が木に寄り掛かっていた。


「準備はいいか」

「はい」

「月陽、お前にはこれをやろう」

「煙玉ですか?」

「冨岡と俺は問題ないだろうがお前はまだ柱ではなく、実力もまだまだだ。有事の際にはそれを燃やして空へ投げろ。鬼も押し寄せるかも知れんが俺達も気付いてそっちに行ける。良く頭を使ってやる事だ」

「ありがとうございます!」

「助かる」


伊黒様から煙玉を渡された私はお礼を言って懐にしまった。
ここからは3つの方面に別れてことに当たらなければならない。

歩きながら私達に説明してくれる伊黒様の情報によれば、東南北から何かに釣られるよう一心不乱にこちらへ鬼が向かっていると言う。
伊黒様は東、義勇さんは南、私は北と聞かされた。
隊士は既に到着しており、私の所には5人の隊士を配属してくれたらしい。

5人で15の鬼を討つのなら私が出来る限り数を減らし、すり抜けた鬼をお願いすればいい。
こんなたくさんの鬼を相手に作戦指揮を取るのは初めてで、少しだけ手が震える。

隊士の命を左右するのは、私だ。


「月陽、あまり気負うな」

「義勇さん」

「お前が緊張していれば下の愚図共も震えるというもの。柱候補なのだ、少しは胸を張れ。俺達もそうだがお前を推薦したお館様の顔に泥を塗るな」

「伊黒様…はい。私頑張ります」

「では行くぞ」

「はい!」


義勇さんの一言で自分の持ち場へ走り出す。
大丈夫だ、私は出来る。必ず隊士達を生き残らせて、私も義勇さんと伊黒様の元へ帰るんだ。

胸元で揺れる首飾りに触れて気持ちを落ち着かせる。

無一郎だってあんなに成長していたんだから、私も少しは成長した所を義勇さんに見せたい。


「お疲れ様です!」

「お疲れ様です。貴方達の指揮をする永恋と申します。異例ではありますが、複数の鬼と対峙するとの事で貴方達を救援に呼びました。柱でなく私で心許無いかもしれませんがどうかよろしくお願いします」

「私は永恋さんで良かったですよ!」

「よろしくお願いします!」

「俺、前から永恋さんに憧れてたんですよ」


私の元に来てくれた隊士はとても明るく柱ではないのに受け入れてくれた。
憧れるなんて少し照れくさいけど、それがとても嬉しかった。


「東と南には伊黒様と冨岡様が行ってくれています。今から基礎陣形を組むので、どんな状況になっても孤立だけは避けてください。貴方達は私が必ず守る。だから、信じて欲しい」

「お、俺頑張ります!」

「はい!」

「ありがとう。では作戦ですが、まず私が先頭で来た鬼を複数蹴散らすので取り逃したら二人一組で必ず仕留めてください。一人は私の後ろで状況を教えながら戦って欲しいのですが、どなたかお願いできますか?」

「それなら俺が!」

「えと、すみません。お名前をお聞きしても?」

「村田だ、よろしく頼むよ」

「村田さんですか!よろしくお願いします」

「…君が、冨岡の」

「何か言いましたか?」

「いや、何でもない」


村田さんはとても良い人そうだし、階級を聞けば庚だそうできっと他の人よりは経験がある事から私の背中を任せる事になった。
周りの子達とも上手に話をしているし、連携も取りやすそうな事はとても有り難い。


「さて、そろそろ来ます。皆さん油断せず必ず生きて帰りましょう。村田さん、よろしくお願いします」

「任せてくれ!君に怪我なんてさせたらきっと俺は切腹より酷い仕打ちを受けるだろうしな…」

「?」


それぞれ陣形を組み、ざわつき始めた目の前の景色に構えを取った。
ここで何体倒せるかがこれからの作戦に響く。


「月の呼吸…捌ノ型!葉月」


絶対に負けないし、絶対に死なせない。
先人を切って突撃してきた複数の鬼へ乱れ切りをくらわせた。



Next.



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