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「ぎ、義勇さんは恥ずかしい人じゃないですよ!」
「なら、今月陽に口付けしたいと思っている俺は何だ」
「…もう、私達は恋仲ですから。そう思っているのは仕方の無いこと、なのではないでしょうか」
そう言った瞬間、もう一度抱き締められて口付けをしてくれた。
優しく触れた後、少し離れてもう一回。
「………」
「……ぎ、義勇さん私これ死にそう」
「言うな」
見つめ合って短い沈黙の後、二人で勢い良く顔を逸らして震えた。
世の恋仲の人達はこれを当たり前にして、しかもこれ以上の事をしているのかと考えると酸欠で呼吸困難になりそうだ。
「……と、とりあえずもう寝ましょうか」
「そうだな」
「それじゃ、おやすみなさい!」
「…月陽」
恥ずかしくてどうにかなりそうな私はこの空気から逃れる為に目の前にある義勇さんの体を両手で押すと、それを逆に絡めとられて優しく握られた。
義勇さん、私もうこれ以上はどうにかなってしまいそうです。
「な、何ですか?」
「一緒に寝たい」
「っええぇぇえ!?」
「…安心していい。何かするつもりはない」
仰天しすぎた私が思わず大きな声で叫ぶと、首を振った義勇さんは絡んだ手の甲にまた口付けをする。
それは信用していいのですかと言いたくなったけど、義勇さんがそう言った以上何するつもりもない事はよく分かっていた。
ただ添い寝をしてほしいのだろうけど、この前の勝負の時と私達の関係は違う。
早鐘を打つ心臓のまま私は寝れるんだろうかと思ったけど、許しを請うようにもう一度口付けされて折れてしまった。
仮に、もしこのまま事が進んだとしても義勇さんならいいと思えたから。
全てが初めてで、雰囲気も壊してしまいそうなほど焦ってしまう私だけど、義勇さんとなら頑張っていける気がした。
手を引かれて義勇さんの部屋に入るのは初めてだ。
この前は強制的にぽいっと布団に投げられたことを思い出す。
「そう緊張されると俺が困る」
「え!?」
「約束した以上それを破るつもりはない。大切にしたいと思っている。だが、お前がそういう反応をすると少しだけ揺らいでしまいそうになる」
だから、いつも通りでいて欲しいと義勇さんは私に言う。
そんな事言われても、関係が関係なのだから仕方がないだろうと思う。
でも、大切にしてくれようとする気持ちは嬉しい。
「義勇さん、また腕枕してくれますか?」
「そこは嫌だと言われてもする」
「ふふっ、変な所強引ですね」
寝間着に着替えた時に敷いていたのだろうか、この前のように準備されていた布団に二人で寝転がる。
前と変わらない義勇さんの部屋なのに、私達二人の関係は変わった。
絡められた私の左手と義勇さんの右手はそのままに寄り添う。
さっきまでは色々と緊張したり、焦ってしまったりしていたけど何だかんだ結局義勇さんの側にいると落ち着く。
無一郎と任務を終えた後全速力で帰ってきたからなのか、前回同様私の方が先に眠ってしまいそう。
「ぎゆ、さん」
「あぁ」
「だいすきです」
「…俺もだ」
そう言って瞳を閉じたら額に義勇さんの口付けが落とされた。
心も体も義勇さんで満たされて、私は眠りについた。
何だかんだ緊張してても、人は睡魔には勝てない。そう言い訳を頭の中でしながら。
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