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今回は女子限定と言うことで、甘露寺様・胡蝶様・私の三人で小料理屋の部屋を貸し切り(さすがは柱の財力)ご飯と甘い物を食べながら話す事になった。
冨岡さんにはきちんと場所を伝えているので許可は勿論貰っている。
「お呼び頂きありがとうございます!」
「ふふ、そんなにかしこまらないでください」
「そうよそうよ。まずその様付けをやめましょう!折角女性同士集まれたんですもの」
「それはいい考えですね。では月陽さん、その様に」
「うっ…じゃあ蜜璃さんとしのぶさんで」
しのぶさんの淡い瞳と蜜璃さんのキラキラした瞳に見つめられて私は折れた。
敬意は払っているし、お二人がそれを望むならそれでいいだろう。
「まぁ、名前で呼んでくれるのね!可愛いわ月陽ちゃん」
「距離が近付いたようでいいですね。では何からお話しましょうか」
その言葉に蜜璃さんがそわそわし始めながら私を見た。
とても嫌な予感がするのは気のせいであって欲しい。しのぶさんに視線を移すとにっこりと微笑み返された。
逆に怖い!
「はいっ!」
「どうぞ、甘露寺さん」
「月陽ちゃんと冨岡さんはどんな関係なのかしらっ!」
「…継子ではないですが、その様な関係と思っていただければ」
「あら、継子の様な関係で首にあんなものを付けるんですか?」
「首?」
「あーっ!何でもないです間違えちゃったかもしれません!」
手を顎の下で組みながら美しく首を傾げたしのぶさんに失礼ながら大きな声で誤魔化す。
個室で良かった…。
蜜璃さんは気付いていないようなので良かったけど、なんて言ったらお二人は納得してくれるのか。
やはり一つ屋根の下男女が共に生活するとこういう質問が来るのはきっと当たり前のことなのだろうけど、残念ながら私も納得するような答えを言ってあげられない。
付き合ってもいなければ、そういう身体だけの関係と言うわけでもないのだから。
「首は事故でして、本当に義勇さんとは何も…」
「じゃあ月陽ちゃんは冨岡さんをどう思っているのかしら」
「いつの間にかお名前で呼んでいるし、進展したようですもんね」
「あ!いや、それはただ伊黒様が私の名前を呼んだから俺もって言われただけで…」
「それって嫉妬じゃないかしら!」
「あらあら冨岡さんも珍しく可愛い所があるじゃないですか」
開始数分、もう既に帰りたい…。
やはりというかなんと言うか、女子同士が集まると色恋の話になるんだなと思う。
寧ろ私はこの為に今日お誘いしてもらったんじゃないかと言う程にお二人の興味が完全に私と冨岡さんの関係に向いている。
「そ、そんな事より蜜璃さんは伊黒様とどうなんですか?」
「え、伊黒さん?」
「そうですね。私の中で冨岡さんと伊黒さんは2大奥手だと思っているので、そこは気になります」
よし、話題を伊黒様と蜜璃さんに変えられた。
しのぶさんが何か言いたげに見てたけどそこは流しておこう。掘り返されても私は何も答えられないから。
「そうね、伊黒さんはとっても素敵よ。優しいし、私がどんなに間違っちゃったりしても見捨てないで側に居てくれるの。ありのままの私で居ていいって言って貰えてるような気がして凄く嬉しいわ」
「早くくっつけ」
「え?しのぶちゃん何か言った?」
「いいえ、何でもないですよ」
「…はは」
キュンキュンしながら頬を染める蜜璃さんはきっと伊黒様の事を思い出してるんだろうなって思う。
とりあえず私もしのぶさんの意見に同意します。伊黒様はきちんと言葉にすべき。
薔薇色の頬とか言えるくせに何故想いを伝えられないのかが私にとってもしのぶさんにとっても甚だ疑問だ。
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