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「じゃあ、四人でお昼食べましょう。甘露寺様には足りないかもしれませんが…」

「いいのよ、いいのよ!一緒に食べようと思ってお菓子沢山買ってきたから大丈夫!」

「伊黒様もよろしいですか?」

「…俺は余り食べない。少し頂くが、俺に分ける予定だった物は甘露寺に入れてやってくれ」

「ふふ、分かりました。行きましょう、義勇さん」


伊黒は甘露寺と月陽に甘い。
格別に甘露寺には甘いが、月陽にも何だかんだ甘いから安心は出来ない。

だが人前では俺の名字を呼ぶと言った月陽が名前で呼んでくれているしとりあえずは良しとしよう。
伊黒は様付けで俺は名前呼びのさんだからな。


「おい冨岡。何だその得意げな顔は」

「いや」


俺の変化に気づいた伊黒が絡んできたが、月陽の飯が冷めてしまうのは残念だ。
しかし、と後ろを振り返って甘露寺に宥められる伊黒と俺のすぐ側を歩いている月陽を見て賑やかになったなと思う。

自分の家に甘露寺は勿論伊黒が来たのは間違いなく月陽の存在が甚お陰である事は、嫌われていないと自負している俺でも分かる。
月陽の周りには自然と人が集まった。
ふと、遠い存在に感じる時があるのはそういう所が俺とは正反対だからだ。

そんな事を考えていると俺が見ていることに気付いた月陽が微笑みかけてくれる。


「義勇さん?」

「手伝う」


二人を居間に座らせ食事を取りに行く月陽を手伝う為に一度降ろした腰を上げる。
今日は4人分の食器もあるし、どんな小さな事でも手伝えば嬉しそうに笑ってお礼を言ってくれるからそれを目当てに最近は何かしらやる事を心掛けていた。

結局単純なんだ、俺は。
月陽が笑ってくれるならこれくらいの事なんて簡単だった。


「助かります、義勇さん」

「…あぁ」


好きだ。思わず言ってしまいそうになる事がここ最近多くなった。
その言葉はまだ伝えないと決めた俺は目を細めて月陽の頭を撫でる。

居間の方で甘露寺の悲鳴が聞こえたがまぁ大丈夫だろう。
たまに一人で暴走している所を良く見るし伊黒がついている。気にすることもなく忙しそうにする月陽の手伝いをした。


「まぁ!なんて美味しそうなの…」

「月陽にしては意外だな…甘露寺、布巾はここだ」

「きゃー!私ったらはしたないわ」

「お口に合うといいのですが」


両手を合わせて食事をし始める二人を見て、俺も食べ始めた。
甘露寺が美味いと言うとまた嬉しそうに笑う。そうだろう、月陽の飯は旨いんだと俺も同意するように頷く。

珍しく絡んでこない伊黒を見れば味噌汁に口を付けて黙りこくっている。


「い、伊黒様?お口に合いませんでしたか…」

「……悪くない。そう落ち込んだ顔をするな。お前の手料理だからこそ甘露寺の口に入れる事を許してやったんだ。光栄に思え」

「そうですか。認めてもらえて嬉しいです」


伊黒は口に含んだ味噌汁を飲み干すといつもの様に話しだした。
俺はこの料理をほぼ毎日食べている。と心の中で自慢する。
口に出すと月陽が照れるから言わないが。

その顔を見ていいのは基本的に自分だけでありたいと思っている。

しかし甘露寺は本当に旨そうに食うな。
俺もあのように食えればもっと月陽が喜んでくれるのだろうが残念ながらそのような特技は持ち合わせていない。


「義勇さん、皆で食べるとまた違った雰囲気でいいですね」

「…そうだな」


俺は月陽と二人がいいが、お前が喜ぶのならたまにくらいこんな事もいいのかもしれないな。




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