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朝、私は布団から体を起こし深く深呼吸をした。
父と母を亡くし、あれから十年が経つ。
寝間着を脱ぎ黒い洋装へと着替え、裾にかけて白から淡い水色へと変わっていく羽織を肩に掛ける。
鏡台の前に座り髪を整え、そこに置いてあった三日月型の首飾りをつけた。
「父さん、母さん、行こう」
私はあれから鬼殺隊に入隊した。
産屋敷耀哉様、お館様から直々にお声掛け頂き最終選別を通過し今は甲の階級を頂戴し今では40体以上の鬼を殺した。
支度が終わり藤の家を出ると私の鎹鴉が木に止まってこちらを見ている。
「任務?」
「月陽、冨岡邸ニ迎エ」
「…冨岡様の屋敷に?」
「ソウダ」
「あの、何で…」
「オ館様ノゴ指示」
「………分かりましたー」
冨岡様。
鬼殺隊最上の階級である水柱様。
水の呼吸を使い、無口なお方。
前に一度任をお供させて頂いたこともあるが、何を考えてるか分からなくて困った記憶がある。
でも一つだけお供させて頂いたときに分かったことがあった。
あの人はとてもやさしい人だと思う。
だって、この首飾りを綺麗だと褒めてくれたから。
「ねぇねぇかー君」
「ナンダ」
「冨岡様とは同じ任に着くって事でいいの?」
「…ソウ捉エテ問題ハナイ」
「えぇ、含んだ言い方だね…」
冨岡様の家まで然程距離はない。
肩に止まっていたかー君は私が走り出す事を察知したのか空へ舞い上がった。
「とりあえず同じ任に着くということは少し急いだほうが良いよね。飛ばすよ、かー君」
昼までには冨岡様の元へとたどり着けるだろう。
柱との任となればそれなりの鬼との戦闘も考えられる。
着くのは早い方がいいと判断し私は地を蹴った。
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