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燃え盛る炎の中、父は初めて見せる涙を流しながら虚ろになっていく瞳を私に向けた。



「月陽…父さんを母さんのそばに、朝陽の側に連れてってくれるか…」

「っ、」

「父さんは、もう駄目だ。分かるだろう?」



赤子のように私の頬を撫ぜて、柔らかく微笑む。
医療の知識もない私でも、父の命の灯火が消えかけてることくらい分かった。

でも、それを上手く飲み込む事ができない。
何も言えない私を急かすようにもう一度父が私の名を呼ぶ。

涙を流しながら無言で頷いて必死に父の重たい身体を母の身体の近くまで運んだ。



「朝陽…すま、ない…守ってやれなくて」

「父さん、私も側にいる。一緒に、いきたい」

「…月陽、お前は逃げなさい」

「や、やだ!ひとりぼっちじゃ嫌だよ!」



強く握りしめられたままの母の手を優しく撫で、手を繋ぐ。
そこに私は入ることを許されなかった。

駄々をこねるように首を振って言う事を聞かない私を父は優しい眼差しのまま懐に手を差し込み何かを取り出す。
それを私の胸に押し付けた。



「父さんと母さんの最期の願いだ。頼む、生きてくれ。私達の可愛い可愛い月陽」

「や、や…やだ…」

「愛してるよ、月陽…さよならだ」

「父さん…っ、いやだ!」


縋り付こうと伸ばした手は父に届くことなく、強烈な光を目にした最後私の体は吹き飛ばされ意識は途切れた。




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