〜3rd
吐き出す息が白い。もう冬なんだな、なんて思いながら家に向かって歩く。慣れない道を歩きながら一人苦笑いを浮かべて。周りの風景を観察しながら歩いていればあっという間に家に着いてしまった。ドアを開けて中に入れば、柔らかい笑みを浮かべながら大好きな人が迎えてくれた。
「おかえり、一人で本当に大丈夫だったか?」
「うん、大丈夫だよ」
家の中に入り二人並んでソファに座る。用意されたココアを受け取って一口飲めば、甘い味が広がった。ちらりと隣を見ればジャンルカにそっと触れるだけの口付けをされる。驚いて手に持っていたマグカップを落としそうになってしまったのに気が付いたのか、キスをしながらマグカップを取られてテーブルに置く音が聞こえた。
「良い所だな、ここ」
「母さんの実家のような所だからね。十六夜の家には心を読む力を持った子が生まれるんだ。僕や母さんみたいに第三の目を持って生まれる人も居れば、持たずに生まれてくるものもいる。第三の目を持っている者は死ぬまでその力を持つことになるんだってお婆ちゃんに昔、教えてもらった」
「ここに住んでいる人達はお前を受け入れてくれるんだな」
「昔から続いているのと、地主であるからじゃないかな?此処は時代に流されない場所だから・・・」
「地主か・・・・総太が跡を継ぐのか?」
「そうかもしれないし、違うかもしれない。決めるのはお婆ちゃん」
そういって微笑めば、ジャンルカはほんのり頬を赤くしながら僕の頭を撫でてきた。冬休みに入って直ぐ、電話が掛かってきた。お婆ちゃんにジャンルカと僕の顔を見せに行きなさいといわれたからだ。父さんも一緒に行きたかったらしいが、どうしてもいけないらしい。ジャンルカのお母さんと何かあるらしい。電話を切る際に「あの人は子供にうんざりしているからきっともう駄目だよ」と言っておいた。ジャンルカは捨てられたようなものなのだから。父さんは「母さんにも同じ事を言われたよ・・・」といっていた。
(きっとジャンルカのお母さんは気が付いていないんだろうな・・・)
- 53 -