ハート
”いつも通り”が流れていく。朝起きて、朝食を食べて、一緒に朝練へと向かう。朝練が終わって教室へ。少し時間が経てば教室にはクラスメイトが集まり、HRが始まる。授業が始まって、左隣から声を掛けられる。可愛らしい女の子に愛想笑いを浮かべながら、小声で談笑した。昼休みになって、オレは右斜め前の女の子から渡された弁当を食べる。すぐ近くの席の子達と。放課後になって部活へと向かう。知らない子がいた。クラスメイトではないよな。視線をその子に向けながらも、部室へと入っていった。さっきの子の隣にはナツミが心配そうに寄り添っていて、胸の中が酷くざわついた。だけど、わからない。どうしてこうなるのか。いつも通り練習をして、部活は終わった。帰り道、前をみれば、ナツミと一緒に居た子。駆け寄り腕を掴んで振り返らせれば、目の前には瞳。宙に浮いている瞳・・・・
「お前は一体・・・・?」
「これは貴方の願望・・・」
「ちがう」
「違わない・・・じゃあ貴方は僕の名前を思い出すことが出来ますか?」
「・・・・それは・・・」
「僕と貴方の関係を思い出すことが出来ますか?」
「・・・」
「そして・・・貴方の過去を思い出すことが出来ますか?」
オレの過去・・・。イタリアに居たんだ。イタリアでマルコやフィディオやアンジェロ達と一緒にいた。サッカーをしたり、出掛けたり、ナンパをしたり。ゴンドラのこぎ手になりたくて沢山練習をして、後はFFIにも出た。イタリア代表として選ばれた。毎日が楽しかった・・・楽しくて・・・たのしくて・・・・
「そう、毎日が楽しかった・・・・そして、これからも」
「違う・・・違うんだ・・・」
手を伸ばして宙に浮いている瞳を手に取った。知っている。オレはこの瞳を知っている。瞳からは赤い雫が溢れ出している。とても泣きたくなった。知っている筈なのに思い出せない。きっと一番忘れたくない記憶の筈なんだ。どうしたら思い出せるんだ。
胸が痛い--------------
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