小さい頃に父親が突然いなくなった。母さんに聞いたら「ちょっと遠くへ出掛けているのよ」と言われた。1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月・・・同じ回答。4ヶ月目には「知らないわ」。5ヶ月目に「新しいお父さんよ」。義父さんも母さんもオレをいつも避けていた。視界に入れないように・・・。離れて離れて・・・5年が経って、母さんに父さんの死を聞いた。「ちょっと遠くへ出掛けている」なんて嘘だった。そのときから父さんはもういなかったんだ。何故、母さんがそんな事を言ったのかは知らないし知りたくも無かった。



(両親から愛されなかった・・・・だからジャンルカは・・・?)



女の子と沢山遊んだ。愛想笑いをして、喜びそうな言葉を並べて。だけど、手を繋がなかった。キスをしなかった。抱き合わなかった。ただ、話をして・・・思ってもいない言葉を囁いて。それだけをした。少しでも気を紛らわしたくて。寂しいと思った時に都合よく傍にいる存在を求めていただけだった。



(後は繰り返し・・・・これがジャンルカの過去の一部・・・)



閉じていた目を開き、第三の眼をジャンルカから反らした。たくさんの涙を流しているジャンルカの目を手で覆い、抱きしめながら名前を呼べば術が解け、そのままベッドに倒れこんだ。



「嫌な事を思い出させてごめん・・・・」

「・・・・・」



視界が変わった。天井が見えたかと思えば、ジャンルカの顔が見えて。そのまま深く口付けられた。ジャンルカの奥にある過去の記憶を表層意識へと登らせる事が出来たのはほんの一部分だけ。殆どが断片的にしかわからなかった。何度も繰り返された口付けが漸く終わった頃には、ジャンルカは落ち着いているように感じた。



「ジャンルカ・・・」

「別に怒ってなんかいない・・・多分、聞かれても答えなかったと思うからな・・・」

「・・・・・・」

「ちゃんと愛してくれるんだろ?」

「うん・・・僕が出来る限りで」

「ありがとう」




初めて見る穏やかな微笑みだった-----------




願望 END












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