かぶ
お風呂から上がり今は、総太の部屋にいる。オレの髪を乾かしてくれている総太と第三の眼で遊ぶオレ。あれだ、周りから見たら絶対に総太が兄に見えるだろう。別にどうでもいいけれど。コードを引っ張り過ぎると総太が痛がった。痛覚あるのか、これ。と思えばすかさず「一応身体の一部だからね、それ」と苦笑いしながら言われた。総太の母親にも同じものがあったらしい。そういえば総太の母親も人の心を読む事が出来たんだったな。だとすればこの能力は遺伝なんだろうな、とぼんやり考えていた。
(総太の傍は落ち着くな・・・)
「ジャンルカは変わってるね」
「変わってるって・・・そうでもないと思うけど?」
「僕と一緒に居て落ち着くって思うのジャンルカぐらいだよ?」
「サッカー部の奴らやナツミや理事長は違うのか?」
顔を上げて下から総太の顔を覗き込めば、ほんのりと頬を赤くしながら総太が苦笑いしていた。ふよふよと浮かび始めた瞳を見詰めながら何が違うんだろうか?と考え始めれば、優しく髪を梳かれた。
「皆は安心するじゃなくて・・・自分が傍にいてあげないとって気を使わせちゃってる感じかな・・・最近はジャンルカと一緒に居る事が多いからあまりそうでもなくなったけど・・・」
「じゃあこれからもオレと一緒に居ればいいだろ」
「ふふ・・・そんな事しちゃったら、ジャンルカのファンの子達に怒られちゃうよ」
「関係ないだろ、決めるのはオレとお前なんだから」
振り返り、向かい合えばぽかんっとしている総太。そしていきなり部屋を飛び出したかと思えば体温計を持って戻って来た。体温計を脇に挟まれ、首や額を触られる。とりあえず落ち着かせようと総太の両腕を掴み目の前に座らせる。体温計の電源を消して近くに置き、どうしたのか訊ねれば、総太は酷く困惑していた。
「さ、最近ジャンルカ・・・全然女子に興味ないなって・・・」
「・・・・え?」
「はじめてあった頃のジャンルカはいつも女子の事を考えていた。あの子可愛いなとかあの子、結構好みだとか・・・だけど、あの水飲み場での出来事から女子の事を考える事が減ってきて、最近は全く考えていない・・・」
「言われてみれば・・・確かにな・・・」
「それで、さっきの言葉を聞いて、もしかしたら具合でも悪いのかなって・・・女子の事を話しても全く反応しなかったから・・・」
「オレはお前の中で相当な女好き設定なんだな」
じとっと見ればごめんと言いながら俯いてしまった。まぁ・・あながち間違ってはいないんだろうけれど。確かにあれ以来、女の子の事なんて殆ど考えていなかった。考えるのは総太の事とサッカーの事ぐらいだった。
(まさか・・・)
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