む
日本に来てからどのくらい経ったか。数えるのも面倒臭くなってもうわからない。ベッドから起き上がり部屋を後にする。あれから何度か別々に住む事を提案されたけどオレは全部却下した。別にオレの心を読んだところでどうこうなる事でもないからな。キッチンへ向かえば、いつも通り朝食の準備をしている総太。歩み寄りそっと腰に手を回してみたら、肩をビクつかせ、勢い良く振り返った。少し涙目になっている。
「驚かして悪かったな」
「う、うん」
そっと離れて椅子に座る。
前に手伝おうか?と言ったことがあるが座っているように言われてしまったので、大人しく座って朝食が出来るのを待つ。ぼーっと腕を見て思い出す。細い・・・ちゃんとご飯を食べているのか心配になりそうなくらいに細い総太。驚いた顔はなんだか可愛かったな。瞳が潤んでて・・・困ったような表情に変わって・・・ほんのり頬も赤かったような気がする。何処か色気があったな。その辺にいる女の子なんか比べ物にならないくらいだ。
「いたっ」
「総太?」
総太の元へ走り寄れば、指を切ってしまったらしい。水で血を流そうとしている総太の手を掴んでそのまま口に運び咥えていた。
「じゃ、ジャンルカっ!?」
「ん?」
「ゆ・・・ゆっゆゆゆ指っ」
顔を真っ赤にして指を引き抜こうとしているので、指を抜かれないように噛んでみたら今度は泣きそうな表情を浮かべている。きっと意地悪されているとでも思っているのかもしれない。まぁ、あながち間違ってはいない。今まで気が付かなかったがこういう反応をするんだな。もっと意地悪したくて指を一本一本舐めていけば、案の定、総太は泣き出した。
(可愛いやつ・・・)
- 41 -