心を読む
「心を読む事が出来るんだ」
マグカップを見たままそう告げた総太。心を読む事が出来るだと?正直、それを信じろといわれても信じられる訳がない。手っ取り早くそれが本当か確かめる方法と言えばやっぱりオレの心を読ませてみるしかないよな。そっと息を吐き出し総太を見た。出来るならそれは冗談であって欲しい・・・。
「冗談だったら本当にいいね」
(・・・とりあえず、ナツミと凄く仲がいいよな?付き合ってるのか?)
「なっちゃんとはそういう関係じゃないよ?父さんが理事長のお友達なんだよ。だから小さい頃からお互いの事を知っているんだ」
(幼馴染みたいなものか・・・答えたくないなら答えなくていいけど、水のみ場で何があったんだ?)
「・・・無意識」
「無意識?」
「この能力の弱点は無意識なんだよ。何も考えていない人間や突然の出来事に対応出来ないんだ。水のみ場でもそう・・・突然の事に対応できなくなってパニックを起こしただけ」
そう言って苦笑いを浮かべる総太。どうやら本当に心が読めてしまうらしい。ゆっくりと息を吐き出し視線を床に落とす。つまりこれまでもこの先もオレが考えている事の全てが総太に筒抜けになってしまうという事か。そういえば此処へ来た初日もなんだかこんな様な事があった気がする。最初からずっとオレの心を読んでいた、と言うことか。
「父さんに頼んで別々の家で住めるようにお願いしてみるよ」
「なんで?」
「なんでって、常に心を読まれている状態なんて嫌じゃないの?確かにこの力は僕が心を読もうと思わないと読む事が出来ないけれど・・・」
「お前はこの家で一人で暮らすのか?」
「どっちでもいいかな・・・僕が出てってもいいし、残ってもいい。まずは父さんに許可をもらわないと」
ベッドから降りようとする総太をベッドに戻す。数回瞬きをしてじっとオレを見ている。心の中を探っているのか・・・。何も考えず総太を見ていれば次第に困惑した表情を浮かべ視線を泳がし始める。良く見れば可愛い顔たちだ。ぐっと顔を近づければ距離を取ろうと肩を押されるが気にせずそのままの距離を保つ。
「此処で一緒に暮らすんだ」
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