妖怪



無意識にジャンルカに能力を使ってしまっていたなんて・・・。きっとマルコがあの女の子に呼ばれた時からだ。今、僕の隣にはジャンルカしか居ない。もっと言ってしまえばこのグラウンドには僕とジャンルカしかいない。だから僕の能力はジャンルカに全て向かっていってしまっていた。


(イドの開放を使ってしまうなんて・・・)



ジャンルカの本能。
無意識に求めているモノ。
彼は一体何を求めているんだ?ジャンルカに使ってしまっている術を解いてあげないと・・・。
抱きしめてくる腕がどんどんきつくなっていく。絞め殺されるんじゃないだろうか?とさえ思えてきた。上手に息すら出来なくなってきて搾り出すように名前を呼べば、ただ抱きしめてくる腕に力を入れてくるだけだった。無意識の思いが流れ込んでくる。愛されたい、愛したい、と何度も何度も繰り返し聞こえる。時折流れる映像。大人の女の人と男の人。それを見詰めるジャンルカ。新しいお父さんよ。一体何人目だよ。痛い・・・・叩かないで・・・・。ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。愛して・・・愛して愛してっ!ジャンルカが女の子に求めていたのは母性だったんだ。だけどどうやってもそれを得る事は出来なかった。だからジャンルカはそれを・・・・・。あぁ・・・もう駄目だ・・・・意識を手放しながら叫び声が聞こえた気がした----------








グランドに戻ってきたらジャンルカが総太を抱きしめていた。ジャンルカは総太の事を恋愛対象で見ていたのか。ズキリと胸が痛んだ。だけど頭の中では警報が鳴り響いている。抱きしめているジャンルカの様子がおかしい。近寄っていけばはっきりと見えてくる二人。総太の顔が真っ青だ。総太を絞め殺そうとでもしているのか?一体何故?総太が自分の傍からいなくなってしまう。そう思っただけで身体は動いていた。二人の所へ掛けて行きジャンルカの腕を掴もうと伸ばしたら、ジャンルカに手を強く掴まれた。


「オレはっ-----------」


ふっと気を失う二人。初めて見たジャンルカの表情に戸惑いを覚えた。悲願しているような表情。ジャンルカは総太に愛されたかったのか?一体どういうことなんだ・・・。総太が息をしているのを確かめそっと息を吐き出す。よかった・・・生きている。総太をおぶさろうとした時良く知った声が聞こえた。








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