「今日の芹さんは、可愛いです」

突然の言葉に芹さんは目をぱちくりさせました。今日は芹さんのお家で1日ゆっくり映画を観ながらオフを満喫していただけなのですが、名前ちゃんはとても幸せそうです。後ろから抱き締めてくれている芹さんの腕に頬を擦り寄せました。

「可愛い?俺が?」
「はい」
「…、は?」

芹さんは言葉に困りました。可愛いことをした覚えはありません。名前ちゃんとの感性の違いは勿論あるでしょうが、どこを見てそう思ったのか理解ができないのです。

「急にどうしたんだよ」
「あ、気分を悪くさせてしまいましたか?ごめんなさい」
「まぁ別に嬉しくはないけど…。何でそう思ったんだ?」
「ふふ」

名前ちゃんは芹さんの手に、ちゅ、ちゅ、とキスをしました。大きくて名前ちゃんの顔を包んでしまいそうな手に可愛らしく擦り寄られると、芹さんもドキッとしてしまいます。理由を聞いているのに反対に可愛いことをされてしまいますと、理由などどうでもよく思えてしまうから芹さんは困りました。

「おい、名前?」
「ふふふ、はい」
「楽しそうだな…?」
「可愛い芹さんのお手々にちゅうしてます!」
「はぁ……そうですか……」

さっぱり訳が分かりません。が、可愛いのです。俺の手なんか可愛くもないんだけどな、なんて思いながら好きにさせてやりますと、名前ちゃんは今度は指を唇で食みました。柔らかな感触に、むに、と挟まれると何だかムラムラしてきて堪りません。芹さんは名前ちゃんを抱き寄せてしまいます。

「名前さん」
「はい」
「俺は誘われてるんでしょうか」
「誘ってません!」
「えっ」
「そういう芹さんは可愛くなくて嫌です。ぎゅうがいいです」
「あー…、なるほど」

芹さんはやっと名前ちゃんの考えを理解しました。ここ最近はきちんとした時間がなかなか取れなかったので、会えばすぐに名前ちゃんを求めてしまっていて、こういった触れ合いだけの時間が取れていなかったのです。今日は朝からずっとこの調子で抱き締めながらの映画鑑賞でしたから、名前ちゃんはすっかり御機嫌な様子。芹さんの胸に体を預け、少し振り返ってはその胸板に頬擦りをしました。

「芹さんは、ぎゅうはお好きですか?」

その上目遣いといったら。
芹さんはぐっと奥歯を噛み締めます。

「ぎゅうもいいけど俺はもっと好きなことがあるんだよなぁ」
「ちゅうですか?」
「うーん…まぁ…」
「わたしも、ちゅうも好きです。芹さんに頭を撫でてもらいながらするのが大好きです」

ふにゃ、と柔らかな笑顔に芹さんは我慢が出来なくなってきて、名前ちゃんに顔を近付けました。嫌がられるかと思いましたが名前ちゃんはあっさり目を瞑って受け入れ体勢です。芹さんは招かれるままに唇を押し付けました。
唇が重なると、柔らかな感触がダイレクトに伝わってきます。何度重ねても気持ちいい、角度を付ければ尚気持ちいい、麻薬のようなキスです。はむ、はむ、と唇を唇で挟み、リクエストに応えて頭皮を撫でると、名前ちゃんはうっとりしながら体重を芹さんに預けました。可愛くてもっと名前ちゃんが欲しくなります。恐る恐る舌で唇を舐めると、名前ちゃんはぴくっと反応して芹さんの胸を弱々しく押し返しました。この初々しい抵抗も芹さんの興奮を煽ります。

「ん…」

芹さんは名前ちゃんの唇を強引に割ると、舌を絡めとって熱を与えました。ねろねろと擦り合い、唾液を混ぜると、名前ちゃんが小さく震えて芹さんにしがみつきます。必死に芹さんの舌を追おうと一生懸命背伸びをしてくれる姿が大変可愛らしいのですが、大人のキスが上手くできない名前ちゃんもまた芹さんのツボなのです。優しく頭を撫でながら強引に口内を犯し、名前ちゃんの肩が震えていてもどんどん責めていきます。可愛いこの反応を見ていると、また今夜も求めてしまいそうです。芹さんは唾液を舐めとると、ちゅ、と音を残して唇を離しました。

「名前…」
「…め、です」
「え?」

芹さんが名前ちゃんの髪を掻き上げますと、名前ちゃんのお顔はすっかり真っ赤になっています。悔しそうに睨むその視線も、何だかちょっと可愛いです。

「だめです。このちゅうは、だめですよ」

やっぱり、触れ合いだけを求めているようです。芹さんは分かっていますが、欲しくなってしまう以上仕方がありません。とりあえず名前ちゃんを宥めようと頭を撫でますと、名前ちゃんは悔しそうに芹さんの胸元へ顔を埋めました。

「何でだめなんだ?」
「だめなものは、だめです」
「だから何で」
「だって、き、気持ちよくなっちゃうじゃないですか。かわいく、ないです」

気持ちよくなっちゃうじゃないですか。
芹さんは我慢の限界でした。これで本当に誘っていないのであれば才能です。名前ちゃんの体を抱き抱え、立ち上がりました。

「わあっ!せ、芹さん、ちょっと、っ」
「ベッドに行きます」
「だ、だめです!」
「こちらこそだめです」
「ああっ、今日の芹さん、可愛かったのに!」

芹さんの腕の中で恥ずかしそうに抵抗を見せる名前ちゃん。今日はどうやって泣かしてやろうかと企む芹さんは成る程可愛くないですね。今日の芹さんは可愛いと言っていたのが嘘のように思えるくらいに泣かされてしまうのは、このすぐ後のお話です。

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お誕生日全く関係のないネタでしたが、芹さんお誕生日おめでとうございます。
20170417
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