「久遠…好き」

久遠のピアスを指で撫でると久遠が優しく微笑んでわたしの頬を手で包んでくれる。あったかくて大きい大好きな手。

「もうそんな顔して…お前なあ」
「わたしを責めるの?久遠がこうしたくせに…」
「そうだったな。でもお姫様、今日は帰るんじゃなかったのか?」

膝に跨がって久遠に抱きつくわたしにやれやれと呆れ気味の久遠。帰りたくなくなっちゃったのは分かってるくせに、そうやって聞いてくるのもずるい。

「久遠は、シたくない?」
「…今日は、お前のことを帰してやりたい」
「そう聞いてるんじゃないの久遠、シたいかシたくないかだよ」

久遠は困ったように笑う。しっかりわたしの腰に手を回して欲情した目を覗かせてるくせに、それを隠すように目を細めているのも分かってる。

「久遠」

髪に触れると久遠は気持ち良さそうに顔を動かす。すり寄ってくる子猫みたいで可愛いけど久遠は何も言ってこなかった。いつもならこうしたら勝手に襲ってきてくれるくせに。

「久遠…、どうしてもだめなの?」
「…」
「久遠」
「もう1週間経ったけど、いいのか?」
「いいよ。わたし久遠とずっと一緒にいたい」

だめ?と首を傾げると久遠がわたしの顎に指を絡ませ、自分の方へ導いた。そっと唇が触れる。

「名前…」

湿った音を立てて、唇を啄まれる。良かった、今日もシてくれる。待ちきれないとばかりに久遠の唇を舌でなぞると久遠は唇を薄く開いてわたしの口内へ舌を入れてきた。受け入れるように絡ませると、久遠はわたしの後頭部に手を回してより角度を付けて深くまで貪ってくる。

「ん…、ふ」
「っ…」

舌を舐め回され、唾液を混ぜられ、部屋にはぺちゃぺちゃとまるで猫がミルクを飲んでいるような水音が響く。わたしも久遠も猫になってしまえたらいいのに。わたしも久遠の首に腕を回して、もっともっとと久遠を煽る。舌を吸われて力が抜けていくと久遠がさらに水音を立ててきた。わざとこうしてえっちな気分にさせる癖にそれに反応するとわたしだけを責めるから久遠は意地が悪い。

「んあ、は…、」

久遠が優しく舌を抜き取る。垂れる唾液がもったいなくて溢れないようにキスして吸い取ると、久遠はまた呆れたように笑った。キスだって、その先だって、わたしにやり方を教えたのは久遠なのに。

「久遠、このままずっと一緒にいたいね」
「一緒にはいたい、けど」
「けど…?」
「…いや。俺だけのものにしたい。ずっとお前を俺の腕の中に閉じ込めておきたいよ」
「久遠…」

久遠が愛おしそうにわたしの頭を撫でる。大好きで仕方ない。わたしだって、わたしがいなきゃ生きていけない久遠をたまらなく愛おしく感じる。こんなのおかしいって分かってるけど久遠の大きな愛を感じられるのは本当に心地好かった。

「名前、好きだ」
「わたしも好きだよ」
「まだ…」
「え?」
「まだ足りない、もっと言ってくれ」
「ふふ、欲張りさん。好きだよ久遠、大好き」
「あぁ俺も…愛してる」

久遠は体を捻って体勢を変え、わたしをベッドに押し倒した。久遠はわたしの上にいるときが一番かっこいい。

「ねえ、今日本当にわたしを帰したかった?」
「そんなわけないだろ、一生ここにいてほしい」
「久遠は素直の方が可愛いよ。最初からそう言えばいいのに」
「可愛いなんて嬉しくないけどな…お前を帰してやりたい気持ちは本当にあるんだよ。でもどうしても帰したくない」
「わたしも帰りたくないよ」
「俺を甘やかすなよ…」

久遠が唇を押し付けてくる。どうしていいか分からない様子の久遠が可愛くて仕方ない。考えなくていいのに、ただわたしに溺れればいいのに。久遠の舌がどんどんわたしに熱を持たせていく。

「ん、くお、っ」
「帰したくない…、名前、ずっと、ずっと俺の傍に、」
「久遠…っ」

ああ、このまま猫になってしまえたら、どれだけ楽なんだろう。世間体を気にせず、ずっと部屋にこもってお互いの熱を感じられたら、どれだけ幸せなんだろう。久遠は余裕が無さそうにわたしの服を剥いでいく。何度も何度も脱がされているのにその度にドキドキするのは、久遠がわたしを食らいつくそうとギラついた目でわたしを見下ろすからだろう。久遠の手がわたしの体を撫でる。

「く、おん…っ」
「はぁ…っ好きだ…」




この部屋に閉じ込められて、今日で7日目。


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甘やかしていたら共依存になってしまったようです。帰してあげたいけど外に出したくない久遠と、依存させる気満々の夢主ちゃん。突っ込みどころ満載です。
20160816
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