「む、ぇ…」

名前ちゃんが顔を歪めるので芹さんは不思議そうに小首を傾げました。もきゅ、もきゅ、と何かを一生懸命咀嚼している姿は小動物のようで大変可愛らしいのですが、眉間に寄った皺を見ればあまり美味しそうに味わっていないことがよく分かります。そんな顔を見たことがなかった芹さんは吹き出してしまうのを必死に堪えました。

「どうしたんだよ、まずいのか?」
「ま、ずくは…」

むむ、と尖った唇からはそれが嘘なんてすぐに分かってしまいます。芹さんは名前ちゃんの頭をぽんぽんしてあげました。

「無理しなくていいよ、お子ちゃま名前ちゃんは何が嫌いなんだー?」
「お子ちゃま…」
「はは、冗談、むくれるなっての」

芹さんはけらけら笑いますが、お子ちゃまなんて思われてしまっては不本意なので名前ちゃんはふるふる首を振ります。

「大丈夫、です、食べられます」
「食べられるだけで好きじゃないんだろ?食わず嫌いしないのは偉いけどさ」
「偉いって、何ですか!わたしはお子ちゃまじゃないんですよっ」
「知ってるよ、俺が大人にしたんだから」

愉しそうに囁く芹さんはおじさんみたいなことを言います。未成年の名前ちゃんに勝手に男を教え込んでおいて俺が大人にしたなんて少々強引すぎますが、名前ちゃんはぶわわっと顔を赤く染めました。大人の女性と呼ぶにはまだまだの反応です。

「なっ、芹さん!何言ってるんですか!」
「ははは、ぷりぷりしてるお前も可愛いなあ。怒るなよ」
「もう知りません!」
「ごめんって。ほら、何が嫌いなんだ?言ってみな」

芹さんは、ん?と言葉を促しました。名前ちゃんは芹さんから少しずつ視線を離していきます。

「あ、あの……わたし、ネギが苦手なんです…」
「ネギ?」
「はい、…だからその…ねぎまが…」
「あーなるほど!ネギ!」

これ美味いから食いな、と先程名前ちゃんに渡したねぎまを思い出して芹さんはクックと喉の奥を鳴らしました。きっと大好きな芹さんに嫌いなものを勧められて言い出せなくて我慢したのでしょう、そんな健気で可愛い名前ちゃんについ笑みが溢れてしまいます。

「あーもー、お前ほんと可愛すぎ」
「や、でも食べられます…!」
「お子ちゃま舌だなあ」

芹さんは名前ちゃんの髪をぐしゃぐしゃ乱すと、可愛くて仕方ないとでも言うように目を細めました。またもやお子ちゃま扱いされてしまった名前ちゃんはむむうと唇を尖らせます。

「お子ちゃまじゃないから食べます」
「無理するなよ、俺が食うから。ほら貸して」
「む、う」
「なぁんだよ」

不満そうに膨らむ頬も可愛くて芹さんは指で押しました。ぷにぷにのほっぺたに空気が詰まって何とも言えない可愛さが芹さんをときめかせます。このままますます拗ねさせても可愛いのですが、少々ネガティブ思考な名前ちゃんが子供な自分に落ち込んでしまったら困るのでこのへんでやめておこうと芹さんは名前ちゃんから手を離しました。

「まあでも、確かにお前はお子ちゃまではないよな」
「え?」

芹さんは内緒話でもするように名前ちゃんの耳元に唇を寄せます。

「俺のまずいの、ちゃんと飲めるんだもんな」

芹さんの顔を見なくてもにやにやしていることが想像できるような笑いを含んだ声に、名前ちゃんは耳を手で覆いながら芹さんを睨み付けました。

「芹さん!!!!」
「はは、冗談だっての。本当に可愛いねぇ」

芹さんは名前ちゃんの頭を撫でながらけらけら笑い、名前ちゃんは、この子供扱いはいつになっても終わらないんだろうなと諦めるのでした。

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芹さんは最低な下ネタを呼吸するかのように吐き出すので最低です。
20160718
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