い、いたい…。
折角の芹くんのオフ日によりによって生理初日。痛くて動けないからどこにも行けない。声もなるべく出したくない。ソファに体育座りしているわたしに芹くんは飲み物を持ってきてくれる。

「えーっと…名前?」

芹くんはわたしの異変に気づいたのかそっと飲み物を前のローテーブルに置くと、わたしを見ながら隣に腰を降ろした。少しの振動でも痛い。動けない。返事をしないわたしを見て芹くんがしぱしぱと瞬きを繰り返した。

「お前、顔真っ青だぞ」
「ん…」
「どうした?具合悪い?」

声が出せない。さっきまでは普通にしていられるくらいだったのに、急に痛みが増す、というか、波があるのが生理痛というものだ。唸るような声しか出ない気がして口を開く気にもならない。黙り込むわたしを見て芹くんがそっとわたしの背中を摩る。

「よしよし、つらいな」

芹くんは分かってくれたのかそうでないのか分からないけど、優しい手付きでゆっくり手を動かす。暖かくて落ち着く。振動は少し痛いけど、安心する。わたしが僅かに頷くと、芹くんが少し困ったように笑った。

「俺が代わってやりたいくらいなんだけどな…」

よしよし、と手は止めない。優しく何度も繰り返してくれて、弱った涙腺が緩みそうになった。芹くんはいつもわたしをきちんと見ててくれて、わたしに尽くしてくれる。その優しさに何度も救われて、今もこうして、芹くんには解決しようがないものでも一緒になって時間を過ごしてくれる。折角のオフにわたしの面倒まで見なくていいのに。

「せりくん…、」

弱々しくて震えた声が出て、言葉を繋げば唸りそうになる。慌てて言葉を切ると、芹くんは優しく微笑んで、急かすでもなく呆れるでもなく背中を摩りながら待っててくれる。一定のテンポが心地好い。

「だい、じょぶだよ」
「なぁに言ってんだよ、大丈夫って顔してないだろ?」
「あ…、」
「俺には何もできないけどさ、嘘は吐かなくていいから」

言おうとしてる意図が伝わらなくてもどかしい。ふるふると首を横に振ると、ん?とまた言葉を待ってくれる。早く弁解したくてもまた声が出せない。きゅううう、と絞まるような痛みに奥歯を噛むと、小さく息を漏らしてからまた口を開く。

「わ、たしは、せりくんがいてくれたら、だいじょぶだから…」

途切れ途切れ、芹くんの顔も見れないままに言葉を吐き出す。床に落ちていく声が芹くんに届いたのか分からなくて不安になったけど、背中を撫でてくれてた芹くんの手が止まってわたしの肩をそっと抱き締めた。ああ、届いたんだなあ、と分かる。

「っ…名前」

芹くんの声が耳許から聴こえる。芹くんが切なそうな嬉しそうな声を出してわたしの肩口にそっと顔を付けた。たまに甘えてくるときみたいな無遠慮にぐりぐり押し付けてくる感じではなく、そっと寄り添う程度。そこにも芹くんの心遣いが感じられた。

「お前は何でそんな可愛いこと言うかなあ…」
「え、…?」
「何でもない。女の子は強いなって言ったの!」

女の子、って言ってるあたり生理痛だというのは察してくれたんだなあって分かった。流石芹くんというか、深くあれこれ聞かれて自分から説明するのは避けたかったから、こうしていろいろ察して聞かないでくれるのがいつもすごく助かってる。ありがとうの代わりに芹くんの頭にわたしの頭をくっつけるようにこつんと頭を傾けると、芹くんが嬉しそうに笑う息が聴こえた。

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弱ってるときにとびきり甘やかしてくれる芹さん。この後お薬買ってきてくれると思います。
20160706
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