「腰、少し浮かせて」
「ん…」

僅かに腰を上げると音也くんがわたしの下着を脱がせてしまう。まだ胸を舐められただけなのにとろとろの蜜が下着に張り付いていた。こんな風になったのは初めてなので戸惑うと、音也くんが嬉しそうに微笑む。

「もう遅かったね。俺に触られるとすぐ汚しちゃうんだから」
「え…」

これが初めてなのにまるでいつものことのように言われてしまった。つまり、今の音也くんと同じ時を過ごしているわたしは、こういった行為も初めてではないのだろう。音也くんの触れる手付きも成る程慣れたものだ。

「ここ、すごい…」

音也くんの中指が割れ目に触れる。ぬる、ぬる、と蜜を指に擦り付けてそこを何度か往復した。確かに濡れている。シーツにとろとろと落ちていくその蜜は止まることを知らず、自分がはしたなくなってしまったような感覚に顔が熱くなった。こんな自分、初めてなのに、音也くんは引かないのだろうか。

「名前って本当に俺のこと大好きなんだね」

ふと音也くんがわたしの頭を撫でる。続けて嬉しそうに頬や額にキスを降らせるので、訳が分からないわたしは瞬きを繰り返した。

「初めてなのにこんなに濡らして俺のこと求めてくれるんだよね」
「え、あ…」
「そんなに前から俺のこと好きだったの?」

好きだ。音也くんのことが大好きだ。出会ってすぐに惹かれ、何度も何度も恋をした。これ以上なく好きになってもまた更に好きになってしまう。音也くんと同じ時を過ごすわたしがどれほど音也くんのことが好きなのかは分からないが、今のわたしだって音也くんのことが大好きだ。

「うん…」

恥ずかしくて小さく頷くと、音也くんはわたしの唇を優しく塞いだ。熱い舌になぞられ、擦り合わせ、蕩けさせられる。熱を分け合うキスが心地好くてうっとりしていると、突然音也くんの指が中へ入っていた。びくっとして体を強張らせると、唇が僅かに離れて音也くんの目が薄く開かれる。

「だめだよ、力抜いて。痛くないようにするから」
「ん、っ、でも…っ」
「ゆっくり息をして、そう。俺のことちゃんと感じて。名前の中に俺の指が入ってるんだよ」

自覚させるように、ぐぬ、と中で指を掻き回す。根元まですっかり埋まった指は、ゆっくり引き抜かれてまた埋められた。抜いて、押し込む、抜いて、押し込む。その繰り返しをじっくりされる。

「ほら、少し柔らかくなってきた。自分で分かる?」
「ん、ん、わかっ、んな…っ、ん」
「かわいい…ここ小さいからもう1本挿れたら苦しいかな」
「あ、っん…!」

小さいなんて、たった3つしか変わらないのに、すっかり子供扱いだ。いつも無邪気で素直な音也くんはわたしよりもずっと子供に思えることがあるのに、急にお兄さんぶられるとドキッとする。でも、そのお兄さんがわたしにはっきりと欲情してくれているのだ。

「あは、とろとろだぁ…」

ぐっと内壁が押し開かれ、音也くんの指がもう1本埋まった。シーツを濡らす蜜は後から後から漏れ出して音也くんの掌もぬらぬら光っている。これが大好きだという証だとしたら止まらなくても仕方ない。

「あ、ん、ん、くぅ、ん」
「声我慢してるの?いつもみたいにえっちな声出してもいいのに」
「やだ、ぁ、んん…っ」
「いつもの自分がどんな声出してるか知りたい?」

いつもの自分というのは、普段音也くんに抱かれているわたしのことなのだろうか。興味はある、でも、少し怖い。ちら、と音也くんを見上げると、音也くんは宥めるように笑って見せてくれた。それからわたしの耳にキスを落とす。

「ここを触るとね、名前、俺の指締め付けちゃうんだよね」
「っ、あ!?」

次に、ぐりっと親指が芽を押し潰す。中に指を入れたまま、器用に親指だけで皮の上から刺激するのだ。固く凝っているそれをぐりぐりと押されると腰が勝手に上がって中を締め付けてしまった。音也くんの指の感触が強くなる。

「あぁ、っあ、あぁあ、っ」
「少し強かったかな?いつもに比べたら優しくしてるんだよ」

容赦なく押し潰すくせにこれで手加減しているとしたら、普段のわたしはこんな強い刺激をどう耐えているのか分からない。びくんびくんと勝手に腰が逃げる。中が熱い。気持ちいい。

「ああっ、そこやだっ、おと、く、そこやだぁ…っ」
「うわ、どろって出てきた…そんなに気持ちいいの?」
「きもちい…っ、あん、すご、だめになる…っ」
「うんうん、名前はここが弱いからね」

わたし以上にわたしの身体を知っている音也くん。ぐちゅぐちゅと中で指を出し入れしながら親指は突起を刺激する。皮の上からでも勃ちきっているのが分かるくらい、捏ね回されて溶かされそうだった。

「でもね、名前は中に俺のを挿れて奥をゆっくり突かれるのが一番好きなんだよ」
「、え…っ」
「試して、みる?」

音也くんの指が中の凝りを押し上げる。背中が反れて声が我慢できない。こんなに気持ちいいのに、更に上があるのだろうか。わたしは壊れてしまわないだろうか。

「おとや、くん…っ」

わたしが音也くんの首へ腕を回すと、額にキスを落としながらベルトを外している。ポケットから避妊具を出してスムーズに被せるのも、わたしとの行為に慣れているのがよく分かった。おかしくなりそうなこんな行為を、音也くんは普段何度もわたしと繰り返しているのだ。

「名前、力を抜いて、俺の目を見てて」
「あ、あ、ぅ…っ」

蜜壷に宛がわれた熱に息を飲むと、大丈夫、と頭を撫でてくれる。音也くんがわたしに興奮してくれている。あんなに熱くなってくれている。それを少し怖いと思ってしまうなんて、音也くんからしたらわたしはやはり子供なのだろうか。はく、はく、と息を繰り返すと、音也くんの熱が少しずつ中へ挿ってきた。溶かされる。

「ああ、あぁ…っ」
「っ、名前、目逸らさないで、俺を見てて…?怖くないから、ね、」
「音也くんっ、おとや、ぁん、く、っ」
「はー…、きもちい…。俺の感触ちゃんと覚えてね。痛い?」
「いたくな、い…っ」

音也くんがわたしの前髪を退けてキスを落とす。擽ったい優しいキスと反して、音也くんの熱はわたしの奥まで貫いた。ぎちぎちの中に音也くんの立派な男根が収まっていて、信じられない。それでいて痛くないなんて、やはり音也くんのことが大好きすぎて、身体がこれを受け入れるように出来ているのかもしれない。

「名前はね、ここの奥の、こりこりしたところをゆっくり触れられるのが好きなんだよ」
「っ、あぁ!?あ、あぁあ…っ?」
「まだ痛いかもしれないからゆっくりね」

性交渉について無知なわけではないが、てっきり中に入れたら腰を振って出し入れして擦り合うのかと思っていた。こんな風に奥まで咥え込んでから腰をゆっくり揺らされて、先端で最奥の壁をじっくり捏ねられるなんて、想像と違う。こり、こり、と押し潰すように動かれて思わず首が反ってしまった。

「あ、ああぁっ、ん!」
「そうやって直ぐ目を逸らす。折角慣れてきたのに、若返っちゃったら忘れちゃうんだね」
「だって、ぇ…っ、ん、あん、」
「気持ちよすぎるから、だっけ。何度も名前に言い訳されたから知ってるよ。でもちゃんと俺を見ててくれなきゃだめ。名前を抱いてるのは、俺だから」

腰は優しくゆっくり動かされているのに先端は容赦なくそこを押し上げて潰す。音也くんの固い熱がごりごり中を抉り、わたしの身体を支配してしまう。単純で単調な行為がこんなにも気持ちいいなんて、おかしいだろうか。

「おと、く、っ、もういや…っ、もう、あ、ああ、!」
「すごい締め付け…っ、これだけ解したらもう痛くないかな?俺ちょっと動きたい…」
「ん、うん…っ」

こくこく頷くと、音也くんはわたしの手に自分の手を重ねて熱を引き抜いた。どろどろになった蜜が一緒に溢れ、それを押し戻される。根元まで埋まると、たん、たん、と腰を遣われて奥を叩かれた。先端が先程の場所に当たる。おかしくなる。

「やぁっ、あ、ああぁっ、あ、う、」
「はあ、名前…っ、ん、名前、名前、っ、名前…」

音也くんはわたしをじっと見下ろした。熱を孕んだ瞳と視線が絡み、幸せでどうにかなりそうだ。こんなにもわたしを求めてくれている。何度も名前を呼んで熱を昂らせてくれる。心地好い。

「おと、くん、すきっ、あん、すきぃ…っ」
「おれも…っ、名前、大好き、だいすきだよ…っ」

熱い視線が絡んだまま内腿が攣れてきて、腰が上下に動いてしまう。音也くんも限界が近いのか、眉を寄せ、腰の動きを大きくした。色っぽい。

「ん、名前、すきだよ、好き、ずっとだいすきだからね」
「うん…っ、すき、あ…っ、わたしも好きだよ音也くん、っ、」
「俺の名前、もっと呼んで」
「あ、あ、音也くんっ、おと、音也くんん…っ」

ぶるっと震えた腰を押し付けられ、中に欲を吐き出された。ゴム越しに熱いそれがどくんどくんと満ちていく。わたしも中を痙攣させ、お腹に力が籠って激しく達してしまった。真っ白になっていく頭を、音也くんが優しく撫でている。

「名前…、平気?」
「ん、ぁ…」

平気だと伝えようとすると、舌が上手く回らなかった。まだ腰が揺さぶられているような、ふわふわとした感覚。焦点がなかなか合わないわたしに優しく笑うと、音也くんは小さくキスをしてきた。ちゅ、とただ重なるだけのキス。でも、いつもと伝わってくる気持ちの量が違う。

「可愛かった…。名前、俺のこと大好きだね」
「おとやくんも、大好きでしょ」
「うん、すっげー好き」

音也くんは楽しそうに笑ってわたしの隣へ横になった。汗ばんだ体を寄せ合い、暫く抱き合う。こんな幸せな時を、3年後のわたしはいつも味わっているのだろうか。だとすれば成る程今より更に音也くんのことが好きになるに違いない。

「音也くんのこと大好きなのに、きっとこれからもっともっと好きになっちゃうんだね」
「あはは、そうかもね。たまに叱られるもん、こんなに好きにさせないでって」
「ふふ、言いそう」

音也くんがわたしの頬を撫でる。

「俺のこともっと好きになっていいからね。何年後でも、ちゃあんと名前のこと愛してるからさ。安心して俺に惚れてってよ」

穏やかな音也くんの声。大好きな音也くんの感触。今日だけでももっともっと大好きになってしまったのに、更に求めるなんて音也くんは欲張りだ。それでも、音也くんも同じようにわたしを好いてくれているのであれば。

「うん…」

笑って小さく頷くと、音也くんは嬉しそうにわたしを抱き寄せた。

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TLの癒し担当。脳が同期しているため思考が双子なので、毎度突然のリプでドキドキさせてられているフォロワーさんです。よく妄想の題材にさせていただいています。4周年おめでとうございます。これからも宜しくお願いします。
20170624
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