フランってすごい可愛い顔してるくせに手はちゃんと男の子なんだなぁ、なんて感心した。わたしより大きくてごつごつしてる。骨張ってるところとか血管が少しだけ浮いてるところとかは男性って感じがするのに、あったかくて子供体温みたいなところは少年らしくて可愛い。

「いや、何してるの」
「何がですかー?」
「何がですかじゃなくてね…」

その大きな手をわたしの手に重ね、ぎゅ、なんて可愛らしく握ってくるけどわたしにとってフランはただの仕事仲間で、わたしより後に入ってきた新米幹部で、可愛い後輩みたいなもので、だから、こういうのは、えっと。

「いい加減慣れてくださいよー」

フランがぐっとわたしとの距離を縮めてきて、ここが談話室だということを忘れそうになった。部屋に誰もいないからこういうことをしていいわけではないし、そもそもフランとはこういうことをする関係でもない。それなのにフランはこうしてよくわたしで遊んでくる。フランの指がわたしの項をなぞり、ぴくっと肩を揺らすと頬にキスを落とされた。

「ち、ちょっと…」

握られていない方の手でフランを押してみるけど、こう見えてちゃんと男の子だからびくともしない。フランがわたしの顔を覗き込みながら可愛らしく上目遣いをしてきた。

「センパイ、触ってもいいですかー?」

う、と言葉に詰まる。くりくりの目が可愛くて、これにおねだりされるのに滅法弱いわたしはうんともだめとも言えずにただ視線を泳がせた。それを許可だと受け取ったのか、フランは柔らかく口元に笑みを浮かべると、そこから舌を覗かせてわたしの首筋を優しく舐める。

「あ、だ、だめっ」
「じゃあ何でする前に嫌がらなかったんですかー?」

無表情ながらも楽しそうなフランはわたしの手をさらに力を込めて握ってきた。まるで押さえつけてくるみたい。フランの舌がゆっくり下に下り、唾液が伝ってくる。ぞわっと腰が震えた、その時。

「う゛ぉぉい、やっぱりここにいやがったかぁ!」

バーン!と派手な音を立てて談話室のドアが開く。確認しなくても分かる特徴的な声なのについそちらを向いてしまった。鳩が豆鉄砲を食らったように目を真ん丸くしているスクと目が合う。

「お、おまえら、何してんだぁ!?」

ワンテンポ遅れていつもよりさらに大きな声でスクが叫んだ。あーあ、厄介な人にバレちゃったなあ、とフランに視線を送ると、同じような目をしたフランがげろーと鳴く。スクの顔はすっかり赤に染まっていた。

「な、なに、おまえらぁ、」
「落ち着きなよ」

その間にもフランはわたしから手を離さない。スクがずかずかとわたしたちが座るソファの前までやってきて、その真っ赤な顔を近付けてくる。

「デキてやがったのかぁ!?」

うう、耳が痛い。バカでかい声に耳がキーンと鳴るけど隣のフランは気にした様子もなく静かに頷く。いやデキてないよ。

「残念でしたねー。スクアーロ隊長、先輩のこと随分狙ってましたもんねー」
「う゛ぉ、な、なんで、それぇ…っ」
「あ、本当だったんですかー?やだなー」

わたしが否定する間もなくフランがべらべら喋る。ていうかスク、わたしのこと狙ってたの…。一層赤くなるスクはわたしの方にチラッと視線を飛ばし、目が合った瞬間にまた視線を逸らした。

「そ、その、だなぁ…っ、こんな形にはなっちまったが、俺は、お、おまえのこと…」

あ、このタイミングで言うんだ。言われてる本人だというのについ頑張れと応援したくなるほど顔を染めていて、その姿がヴァリアーの名にそぐわなくて少し笑える。思わず、ぶふっ、と吹き出すとスクは「笑うなぁ!」と声を荒げた。

「あはは、可笑しい、スクわたしのこと好きだったの?」
「お、おぉ…」
「あとわたしフランと付き合ってないよ」
「え゛」
「あーセンパイまだバラしちゃだめじゃないですかー」

面白いのはこれからだったんですからー、とフラン。この策士と一緒にいるとわたしの身がもたない。フランは相変わらず繋いでいる手を持ち上げてわたしの手の甲にちゅっとキスを落とすと、スクに見せつけるようにわたしを引き寄せた。

「まあでもミー達がこういうことをする関係ってことには変わりないんでー、スクアーロ隊長はそこで指を咥えて見ててもらえますー?」
「な゛んだとぉ!?」

フランはわたしに抵抗させる暇なく腰を撫で、スクがいるのに先程の続きとばかりに首筋を舐め始める。さすがに焦って離れようとするけど腰はがっちり掴まれたまま。

「ん…っ、フラン、ちょっ、と、」
「う゛ぉぉい、どういうことだぁ!?名前はこいつのことが好きなのかぁ!?」
「そういう、わけじゃ…っあ、」

フランの一方的なのにやめてもらえず、ぢゅ、と音を立てて吸われた。やだやだと首を振ると、フランがスクを見上げる。

「センパイは気持ちいいことが好きなんですよねー」
「や…っ、ち、が」
「嘘つかないでくださいよー。ミーに体触られて喜んでるじゃないですかー」

唇で、舌で、指で愛撫されるとどうしても体がふわふわして何も考えられなくなってくる。スクの喉がごくっと鳴った。

「う゛ぉぉい、俺もやるぞぉ」
「えっ」
「お前らが恋人じゃねえなら俺だって手ぇ出してもいいんだろぉ?」

言うが早いか、スクはソファに片膝をついてもう参戦する気満々だった。べろ、と耳を舐められる。

「う、ひっ」
「うひって、お前なぁ…」
「ちょっと勝手に触らないでくださいよー」
「テメェのもんじゃねえだろうがぁ!」

わたしを挟んで口論するふたり。うーむ、どうしたものか。この隙に逃げてしまおうかと腰を浮かすと、フランに二の腕を掴まれてソファへ押し付けられる。やっぱりだめ、かぁ。

「分かりました好きにしてくださいー」
「う゛ぉぉ」
「でも、やるからには気持ちよくさせてくださいよー」
「分かってるよぉ」
「…は?」

もう和解してる、と感心したところ、またスクに耳を舐められた。ぴく、と体を捩ると、反対側の耳をフランが舐める。

「っあ、うそ、やぁあ…っ、」

ふたりに両耳を責められると、聴覚がすっかり水音に支配される。くちゅくちゅと厭らしい音が鼓膜を揺さぶって耳の中で響き、熱い舌が蠢く。ねぶねぶと丁寧に舐め回すフランと、舌を中に突っ込んで強引に掻き回すスク。どっちも気持ちよくて腰砕けそう。

「あ、あ、ゃあ…っう、」
「センパイ可愛いですー…」
「んやっ、そこで、しゃべんないで、ぇ」

唇を耳にくっつけながら息を当てて声を漏らすフランが色っぽくて、思わず手を伸ばすとスクが握ってくれた。フランよりさらに大きくて男女差だけでなく年齢差まで実感させられる。

「は、ぁう、あ、う…っ」
「顔蕩けてるぜぇ…」
「ひゃ、あっ、だから、しゃべんな、で…っ」

スクも耳朶を舌でなぞりながら囁き、吐息混じりの声を耳に吹き掛ける。ぞわぞわと腰が震え、熱がもどかしい。快感が体にじんじん響いて、口が閉じられない。スクの舌が、フランの舌が、わたしの耳をじわじわ犯す。

「あ、っあぁ、ん…っ」
「センパイ可愛いですねー…、顔トロトロにしちゃって、そんなに気持ちいいんですかー?」
「は、ぁ、きもちぃ…っ、きもちいいよお…っ」
「やっと素直になってきましたねー。こうして耳の奥舌で掻き回されるの好きですもんねー」
「あ、ぁあ、ん、すきっ、はぁ…っ」
「ここだけじゃなくて、あっちの“ナカ”も舌で掻き回してあげたくなっちゃうなー」
「は、あ、あ、ふらん、んぅっ、ふらんん…っ」
「体びくびくしてますよー、想像しちゃったんですかー?」

フランはいつものようにわたしを言葉で責めながら熱を与えてくる。だめだって分かってるのに快楽に抗えなくて、気持ちよくなると何も考えられなくなる。フランに委ねると気持ちよくなれるからつい素直に感じてしまう。びくっ、びくっ、と体を跳ねさせていると、スクがわたしの腰を指でなぞって耳の奥に直接声を投げ込んだ。

「う゛ぉぉい」
「っふあ、」
「後輩にいいようにされて恥ずかしくねえのかよぉ?やらしー体してやがんなぁ」
「ひっ、や、ちが、ちがうの…っ」
「何が違えんだぁ?いつもこうして気持ちよくしてもらってたんだろぉ?」
「は、ぁう、あ、んん」
「初めての男も受け入れやがって感じまくってんじゃねえかぁ、なぁ、俺の舌気持ちいいかぁ?」
「はぁ、ん、きも、ち…っ」
「気持ちいいんだなぁ?」
「あっん、きもちい…っ、すき、そこすきぃ…っ」

中にくちゅくちゅと唾液を塗られ、舌の柔らかい感触で内側から犯される。耳の中はふたりの声と水音しか聴こえなくて、自分の声すら分からない。

「あ、あはぁっ、ん、やぁあ、っ」
「センパイだらしないですよー、口から唾液垂らしちゃってー」
「そんなに気持ちいいのかぁ?」
「あ、ぁあ、きもち、あん、すく、ふらんん、あっ、はぁ…っ」
「さっきから腰揺れてますよー。欲張りさんですねー」
「ん、やぁ…っ、だめっ、いっ、ちゃいそ…っ」
「イッてもいいんだぜぇ」
「はぁっ、や、ああっ」

目の前がチカチカしてきて体の中心がすっかり溶かされたように熱を持っていた。フランが奥の方まで舌を入れ、スクが耳に歯を立てる。びくっ、と大袈裟に腰が跳ねた。

「っあ、あ、ああぁあ…っ!」

はあ、あ、なにこれ、気持ちいい。直接どこを触れたわけでもないのに耳を舐められるだけでこんなに気持ちいいなんて、どうしよう、おかしくなっちゃったのかな。不安になってフランを見ると、フランは優しく微笑んでくれた。

「こんなトロトロのセンパイ初めて見ましたー。悦かったみたいですねー」
「あ、う、あ…っ」
「ちょっとトんじゃってますかねー?大丈夫ですよー」

よしよし、と背中を摩られてはくはく口を開けると、スクがわたしの顎を掴む。見上げるとスクも穏やかな笑顔を見せてくれた。

「ゆっくりでいいから息しろよぉ」
「は…っ、あ、う」

スクは口端から溢れたわたしの唾液を親指で拭い、舐める。涙も優しく拭ってくれて乱れた髪も直してくれた。優しい。

「おいところでいつもはどこまでヤッてんだぁ?」
「…聞いてどうするんですかー」
「いいから答えろぉ」
「嫌ですよー、絶対そこまで進むつもりですよねー」

フランはわたしの肩を抱き寄せてガードするようにスクから遠ざけるけど、スクは気にした様子もなくわたしの手を握る。感触を確かめるようにふにふにと触ってるけど、気恥ずかしいからやめてほしい。

「今日は、シねえよぉ」
「…ミーがいないときに手出したら怒りますよー」
「じゃあお前がいればいいんだなぁ?」

スクは大きな手でわたしの頭をくしゃくしゃ撫で、ソファから立ち上がった。

「次も気持ちよくしてやるからなぁ」
「は、え…っ?」
「好きだぜぇ、名前」

ちゅ、と手の甲にキスを落としてからスクは気分が良さそうに大股で部屋を出ていってしまった。パタン、と閉じたドアをぼんやり眺める。

「何目で追っちゃってるんですかー」
「えっ」
「センパイは、ミーだけじゃ不満なんですかー…?」

フランが拗ねたように唇を尖らせる。不満っていうか、そもそもわたしは嫌がってるんだからね。

「スクアーロ隊長よりミーの方が先だったのにー…」
「フラン?」
「センパイはどっちを選ぶんですかー?」

選ぶって、このふたりのうちどっちかと付き合うような台詞。スクは好きって言ってくれたから分かるけど、フランにはただからかわれてるだけなのに。

「どっちも選ばないよ。だからわたしを玩具にするのはやめてね」

いそいそと乱れた服を直すと、フランが手首を掴んでくる。びっくりしてそちらを向くとフランがじろりとわたしを睨んでいた。

「何で遊んでるんじゃないって分からないんですかー…」
「え…?」
「ミーだって、センパイのこと、」

手首に力が入ってて痛い。思わず顔を歪めるとフランはハッとした様子でわたしを離して立ち上がった。視線が揺れている。

「フラン…?」
「センパイは酷いですー」
「えっ、なん、」
「もう、行きますからー…っ」

フランはぷいっとわたしに背を向けて、部屋を出ていってしまった。何なんだかさっぱり分からない。機嫌が良さそうだったスクと不機嫌極まりなかったフラン。どちらの理由も分からずにわたしは隊服のボタンをしめた。

「どっちを選ぶんですか、かぁ…」

何となく呟きながらソファの背に体重を預ける。フランの付けたキスマークには暫く気づかなかった。


END
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大変お待たせ致しました、というレベルでなく本当にお待たせしております、南さんへ。3人は初めてなので緊張しました。いちゃいちゃのリクエストでしたがエロめになってしまってすみませんでした。今後ともよろしくお願いします。リクエストありがとうございました。
20161123
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