「ほんっとさいあく」

名前ちゃんは不機嫌な様子です。ムスッと顔を膨れさせながらびしょびしょになった服を絞りました。今日は急に雨が降ってきたので傘のない名前ちゃんは落ち込んでいましたが、高橋さんが背後から現れて傘を差し出してくれました。少々気持ち悪いですがここまでは通常運転です。それからふたり仲良くお家に帰ろうと歩いていたところ、真横を通った大型トラックに水溜まりを綺麗に被せられ、ふたりそろって全身びしょびしょということです。家に着くなり玄関前で服を絞る名前ちゃんに高橋さんはわたわたと鍵を探しました。

「とりあえず俺の部屋でいい?お風呂お湯溜めるから」
「いや、自分の部屋行くよ」
「な、なんで」
「だって浩汰も濡れてるし、わたしがお風呂使っちゃったらその間浩汰が風邪引いちゃうでしょ」
「おれは、大丈夫!名前の服があれば、」
「え?」
「っ、なんでもない」

こいつ、また何か暴走してるな。名前ちゃんの眉が歪みます。高橋さんはたまに良からぬことを考え付いては名前ちゃんを困らせるのです。名前ちゃんはため息をつきました。

「とにかく一旦部屋戻るから、浩汰もお風呂入りなね」
「だめ、待って!」

一瞬高橋さんの声が強くなります。名前ちゃんはびっくりして目を見開きました。もともとあまり声の大きくない高橋さんが急に自分の手首を掴んで声を荒げるものですから、名前ちゃんがびっくりするのも当然です。

「お願い、今日は俺の部屋で…」

きゅうんと子犬が耳を垂らしているような目で見つめられると名前ちゃんは何も言えなくなりました。自分より遥かに身長が高い高橋さんをうっかり可愛いと思ってしまうときがあるようです。名前ちゃんはばつが悪そうに視線を落としました。

「わかった、今日だけだからね」




ぷちん、ぷちんとボタンを外されていくのを見て名前ちゃんは言葉を失いました。お湯が溜まったと言われて脱衣所へ来てみれば高橋さんは出ていく様子もなく名前ちゃんを脱がし始めたのです。びっくりして声も出ない名前ちゃんに高橋さんは優しく笑いかけました。

「はい、脱げたよ」

あっという間に全裸にされてしまった名前ちゃんは恥ずかしさを通り越して何だかむかむかしてきました。高橋さんの目に熱が籠っているのは確かなのですが、欲情しているのはどうやら名前ちゃんの体にではないようです。脱がせるだけ脱がせるとそそくさ脱衣所を出ていこうとしている高橋さんの両腕には大切そうに抱えられている名前ちゃんの服が見えました。何だか見覚えのある光景です。


「待ちなさい浩汰…」

びくっと高橋さんの肩が上がります。名前ちゃんは高橋さんの腕をがしっと掴むと、浴室の扉を開けました。

「い、一緒に、はいろ…」
「えっ、で、でも」
「やなの…?」
「っ…!」

高橋さんの目がギラッと輝きました。名前ちゃんから誘われるなんて滅多にありません。高橋さんは大変名残惜しそうに名前ちゃんの濡れた服を置くと、自分のシャツを捲ります。

「あ、あの、すぐ行くから先あったまってて!」

高橋さんのうっすら割れた腹筋が見えて名前ちゃんは慌てて中へ入っていきました。どうしよう、勢いで言っちゃったけど、お風呂明るいし恥ずかしい…。名前ちゃんはささっとシャワーを浴びて湯船へ身を隠しました。冷えていた体が次第に暖まります。

「あ、の…」

暫くすると浴室のドアが開く気配がしました。ハッとする名前ちゃんはそちらを振り向けません。高橋さんの足音がひたひたと近くに来ます。高橋さんは軽くシャワーで体を流すと浴槽の横へしゃがみ、名前ちゃんの顔を覗き込みました。

「名前、一緒に入っていい?」
「は、入れば?」
「わかっ、た」

ちゃぷん。高橋さんが中に入ってきてお湯が上に上がってきます。肩まで浸かっている名前ちゃんはそわそわと体を揺らしましたが高橋さんがすぐにそれを後ろから抱き締めてしまいました。

「もうあったかいね、名前」
「は、はあ?」
「だってほら、からだ、あついよ」

高橋さんのことが見れないままの名前ちゃんは後ろから見ても分かるくらいに耳まで真っ赤になっていたのです。高橋さんは愛おしさで胸が高鳴りました。付き合い出してかなり経つのに名前ちゃんにときめくことは日に日に増えてくるから不思議なものです。高橋さんは名前ちゃんの項へ優しくキスを落としました。

「っやぁ…っ」

ここが弱い名前ちゃんは急な刺激に肩を上げます。ぴくん。高橋さんはスイッチが入ったようにちゅ、ちゅ、と何度もキスを降らせました。

「は、かわい、名前…っ」
「や、め、」
「なんで…?誘ったのは名前でしょ?名前はしたくなかった?おれ、おれは、名前が可愛くて、はぁ…っ、したいよ…」

耳元で聴こえる切なげな声に名前ちゃんは身を捩ります。吐息が耳にかかり、それすらも気持ちいいのです。名前ちゃんの体は本当に敏感です。高橋さんはその耳へ舌を突っ込みました。びくんっと跳ねる名前ちゃんは小さく声を漏らし、その声は浴槽へ反響しました。高橋さんの喉がごくりと鳴ります。

「かわい…っ、名前、寒かったね…俺があっためるね…?ね、おれの舌、あつい?名前…」
「そこで、しゃべんないでぇ…っ」
「ん…?可愛いね名前…名前…はぁっ…」

ぺちゃぺちゃぴちゃぴちゃ。耳の中で高橋さんの舌が動く音が響き鼓膜がびりびり震えました。名前ちゃんは思わず首を反らしてびくびくします。高橋さんは耳は舐めたまま名前ちゃんの乳首に手を伸ばし、後ろからこりこり刺激しました。名前ちゃんはこれも大好きです。

「はぁっやん!あ、そこぉ…っやあ…っ」
「やだ?やなの名前?」
「や、だぁ…っあ、あん!あああ…っ」
「すごい、きもちいよ俺…ここすげえこりこりしてる…ね、やだ?これやなの?」
「やな、のぉ…っひゃあんっ」

やっと名前ちゃんの耳から舌を引き抜いた高橋さんはいやいや首を振る名前ちゃんにすっかり勃起しました。嫌がるくせにびくびく体は震え、少しずつですが腰が揺れだしていたのです。なんて可愛いんだろう、おれの名前は世界一可愛いなあ、なんて平和なことしか考えられません。高橋さんは項にしゃぶりつき、そこからちろちろ舌を小刻みに動かしながら背中へ移動します。その間も乳首をずっと押し潰して名前ちゃんを喜ばせていました。

「ひぃっ…せ、なかは、やだぁあ」
「なんで?気持ちいい?背中で気持ちいいの?名前可愛い…背中気持ちいいね?」
「ちがうぅ…っやめっ」
「ここも、こっちもやだ?じゃあどこがいい?名前はどこが気持ちいい?全部いいんだよね」
「ん、はあ…っ」

背中への刺激から逃げるように背中を反らす名前ちゃんは胸を突き出しているようにも見え、高橋さんは一層興奮しました。人差し指の腹で小刻みに弄ったり親指と一緒に摘まんだりして刺激し続けると、名前ちゃんの腰が大袈裟に振れてきます。名前ちゃんの顔はとろとろです。

「はにゃ…っこう、こうたぁっ、あ」
「ん?どうしたの?」
「そこ、そこやなのお…っ」
「そこってどこ?背中?乳首?」
「ち、ちくびっち、やぁんん!さわん、ないでぇえ…っ」
「いっちゃうね…名前いっちゃうんでしょ…?だからやなんだよね?そうでしょ?はぁ…っ可愛い…ねえいっていいよ…?それとも別のとこでいきたい?」
「べ、べつの、はぁやぁあっ!ちくびやだあぁっ!あ!」
「ほら早くどこか言わなきゃ乳首でいっちゃうよ…?どこ?ねぇ名前どこでいきたい?乳首でいく…?」
「ん、あっあー!や、だぁ、あ!ああぁあ…っ!」

びくっびくんっ。名前ちゃんの体が2回程跳ね上がり、浴室には高くて甘い声が響きました。高橋さんは自分の腕の中でぐったり体の力を抜く名前ちゃんに思わず目が血走りそうでした。可愛い可愛い可愛い可愛い!高橋さんのモノは痛いくらいに反り立っていて、お湯の中なので分かりませんがきっと先走りをだらっだらでしょう。高橋さんは名前ちゃんの体を持ち上げて自分と向かい合わせにして膝の上に座らせます。とろとろ顔の名前ちゃんは肌が色付いていてとてもいやらしく、高橋さんは射精しそうになるのを必死に堪えました。

「名前、かわいいよ…っ」
「さいあく…」
「ごめんね、いきたくなかった?ごめん、ごめんね…」

ごめんと言いながらも全く申し訳なさそうにしていない高橋さんは名前ちゃんの唇に吸い付きます。ぬるりと入ってくる舌に名前ちゃんは素直に口を開き、応えます。あっちをなぞりこっちをなぞり、口内を味わうように動く高橋さんの舌はまるで飴でも舐めているように丁寧な動きでとっても美味しそうに目を細めていました。名前ちゃんは高橋さんにしがみつきながらちゅぷちゅぷ水音を聴いていましたが、お腹に硬いものを感じてびくっと腰を逃げさせます。な、なに?と名前ちゃんが目を開けると、バキバキに勃起した高橋さんのモノが目には入り、高橋さんはそれに気づいて唇を離しました。ねとっと糸を引く唾液はぷつんと切れ、お湯の中へ消えます。

「こ、こうた…っ」
「上がるまで我慢できるよ…体洗ってあげる、ね?もっと名前のからだ触らせて…」
「だめ、ぇ…」

高橋さんは名前ちゃんの体を気遣いますが、名前ちゃんは我慢できませんでした。こんなにしている高橋さんをほっとけないのです。名前ちゃんはうるうるのおめめで高橋さんを見上げました。

「しよ…?ね、こうた入れたいでしょ…?」
「っ、だから、上がったら、」
「いま、ほしくなぁい…?」

名前ちゃんは高橋さんを喜ばせる天才でした。ガチガチではち切れそうな高橋さんは余裕なく奥歯を噛み締めると、名前ちゃんの腰を掴んで自分のモノを入り口に宛がいます。

「は、おれ、最低だ…っいれたい、入れたいよ、つらいのに、ごめん…っ名前、いれていい…?」
「ん、いれて…」
「だいすき、さいていでごめん、いれる、いれるね」

高橋さんは掴んでた腰をぐいっと自分の方へ引き寄せます。ぐぷっと挿入された高橋さんのモノは膣に入った瞬間にびくびく脈打ちました。

「っはあぁ…っで、そ、」

高橋さんは体を震わせながら名前ちゃんの肩へ顔を埋めます。名前ちゃんも高橋さんのモノをきゅうきゅう締め付けながら快感に耐えました。暫く深い呼吸を繰り返し、高橋さんは顔を上げます。

「うごいて、平気?」
「うん…」
「つらかったら、おれのこと殴って止めて…」

高橋さんは名前ちゃんをしっかり抱き抱え、お湯の中でばしゃばしゃと腰を振り始めました。大袈裟なくらいにお湯が跳ね、名前ちゃんは高橋さんにしがみつきます。

「あ、あぁっあ、ひゃう、んあっ!」
「はぁっ…名前…名前…名前…っ名前っ」

高橋さんは何度も名前を呼びながら腰を振ります。あまり深くまでは挿入せずにGスポットに引っ掻けるように浅いところを何度も擦りました。名前ちゃんは強い快感に高橋さんの背中へ爪を立ててしまいます。

「あっ〜…!あ!や、こうた、だめぇっひゃあん!だめぇ!そこ、いっちゃう、すぐいっちゃうからあぁ…っ!」
「とめられないから、ごめん、なぐって…っ」
「あ、いく、いっ、こうた、こうたぁあっあ!あぁん、あ、や、ああ!」

びくびくびくっ。名前ちゃんは先程よりも少し長めに体を痙攣させました。膣の中が一生懸命収縮していて高橋さんの精子を吸い取るようです。高橋さんはびくっと腰を跳ねさせました。

「名前、すき、っはあ、く…っすき」

高橋さんは名前ちゃんに深くキスをし、名前ちゃんの舌を舐めながら中へ出します。勢いよくびゅるっと内壁を叩く精子はとても熱く、名前ちゃんは舌を舐められながらもう1度太股を痙攣させました。




ぱちっ。名前ちゃんが目を開けると天井が見えました。あれ?と思いながら目を擦ります。どうやら寝ていたのは高橋さんのベッドの上のようで、高橋さんの姿はありません。

「こうたぁ…?」

寂しくなって名前を呼ぶと、別の部屋からガシャーンと派手に食器を落とす音が聞こえました。そのうちバタバタと騒がしい足音と共に高橋さんが現れます。

「名前起きた!?大丈夫!?」
「どうして…?」
「とにかく起きて良かった…俺わけわかんないくらい興奮しちゃって、お風呂の中なのに名前のこと…」
「!」

そういえば、と名前ちゃんは顔をボボッと赤らめます。すっかり思い出した名前ちゃんは慌てて高橋さんの口を手で塞ぎます。

「そ、それより!なんか割ったの?浩汰こそ大丈夫?」
「ああ、ごはん作ってたんだけど名前の声が聞こえたからびっくりしたら落としちゃった、怪我はないよ」
「そう…なんかごめん」
「ううん、誰でも天使の声が聴こえたら嬉しくてびっくりするでしょ?」
「はぁ…?」

高橋さんはちゅっと名前ちゃんのおでこにキスをすると名前ちゃんをゆっくり起こし、手を引きました。

「もう盛るだけだから食べよ!今日は名前が最近ハマってるカレードリアだよ」
「…、よく知ってるね」

髪も乾きパジャマを着ている自分を不思議に思いながらも名前ちゃんは手を引かれるまま部屋を出ていきました。


END
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大変お待たせ致しました、というレベルでなく本当にお待たせしております、七葵さんへ。余裕のない高橋さんが書けていたらと思いますがどうでしょうか。今後ともよろしくお願いします。リクエストありがとうございました。
20160418
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