※主人公視点/ヤンデレ

飽きられたら終わりって今さら気づいても遅かったかな。一応まだ私の彼氏である志摩くんは今必死に出雲ちゃんを口説いている。多分出雲ちゃんがオチたら私は捨てられるんだろうなあ。私って何だったんだろう。志摩くんの彼女だったのかな。違うんだろうなあ。志摩くんは女の子なら誰でもいいんだよね。えっちできたら誰でもいいんだよね。私の前の子もその前の子もヤり捨てられたって言ってたけど、私だけは本気だよって志摩くんが言ってくれたから信じて簡単に体を許したのに、そんなの嘘だった。どうせ私もそこらへんの女の子と一緒だった。悔しい悔しい悔しい悔しい。何で?私だけって言ったのに何で?ムカついたから私は、あることをしてやった。




(( 最低な男に恋をした ))




「出雲ちゃぁん、今日もかわいいなぁ」
「は?」

めげない。あの男、本当にめげない。出雲ちゃんは志摩くんをまともに相手しない。私だって最初はそうだった。てゆーか、皆だいたいそう。だって志摩くんって女子の間で評判悪いし、ヤリチンとか言われてる男と付き合いたいなんて思うほうがおかしいでしょ?なのに志摩くんはめげない。好き好きって毎日言う。今回は本気やで、お前しか見えへんねん。上手いこと言って毎日猛アタックを繰り返す。人間は情が移りやすい生き物だし、志摩くんだって顔が悪いわけじゃないし、そりゃあ毎日大きな愛を投げつけられてたら惚れちゃうもんでしょう。きっと出雲ちゃんも時間の問題だと思う。それで散々えっちして飽きたら捨てる。すぐに次の女に行く。それが私が惚れた志摩くんなんだもん、どんなに最低でも仕方ない。仕方ないとは思う、でも許せるわけじゃない。ムカつく。嘘つかれたのもムカつくし私を捨てるのも納得いかない。何で私を捨てるの?私何かだめだった?別にだめとかないんだろうけど、ただヤり目的で付き合おうって言ってきただけだろうから飽きたってだけだと思うけど、ムカつくもんはムカつく。こんなに愛してるのに。こんなに志摩くんじゃないとだめなのに。だからね、私は志摩くんを縛り付けようと思ったの。と言っても別に愛情でじゃない。「私志摩くんのこと愛してるからずっと一緒にいて」なんて言って一緒にいるような男じゃない。だから、世間体で縛ろうと思ったの。

私は前回のセックスで、コンドームをわざと破った。

志摩くんは気づいてなかったけど私が事前に破っといたし、中出しされたのと一緒。しかも私は妊娠しやすい日だったし、確実に妊娠する自信はある。こんなに愛してるんだもん、子供デキるよ。そしたら志摩くんだって私のことちゃんと考えてくれるはず。責任とって結婚して、デキ婚とは言えだんだん私を愛してくれるようになるはず。だから、早く志摩くんに伝えなきゃ。




「出雲ちゃん、これ俺の番号」
「要らないしこんなの」
「そう言わんといてぇや、俺休みの日にも出雲ちゃんの声聴きたいねんもん」
「…言っとくけど、受け取るだけだから」
「ほんま!?うわぁ、嬉しいわぁ。出雲ちゃん大好きやで、ほんまおおきに!」
「勘違いしないでよね、ただあんたがしつこいから本当に受け取っただけだから!」
「ええってええって、ほんまそれだけでも嬉しいで」

またやってた。志摩くんを探すのは苦労しない。まずは出雲ちゃんを探せばいいだけなんだから。もう一週間は出雲ちゃんにつきっきりだなあ。出雲ちゃんもだんだんまんざらでもなくなってきたらしい。出雲ちゃんはツンデレだから分かりにくいけど、あれは確実に志摩くんに揺れてる顔。女の勘ってやつで何となく分かる。

「志摩くん」
「おん?あぁ、名前か。どないしたん?」

後ろから声をかけたら志摩くんはめんどくさそうに振り向いて眉を顰めた。ムカつくなあ。今はまだ我慢だけど。

「ちょっと話があるんだけど、いいかなあ?」

第一今はまだ一応私の彼氏なのに、何でこんなに気を遣ってやらなきゃならないんだろう。志摩くんはうーんって考えたあと、小さく頷いた。

「ええよ。俺も話したいことあったし」
「じゃあ、屋上行こっか」
「せやね。出雲ちゃん、俺ちょっとこいつと屋上行ってくるさかい、またな?」

志摩くんは出雲ちゃんに軽く挨拶をして大人しく私についてきた。って言っても、多分志摩くんがしたい話は別れ話。だからチャンスとばかりについてきてるんだろうけど、私の話聞いたらそんなこと思えないでしょうよ。私は少しだけ口角を上げた。
屋上についたら志摩くんはフェンスに寄り掛かりながらめんどくさそうに私を見た。

「ほんで、何やねん話って」
「ちょっと大事な話なんだけど、ちゃんと聞いてね?」
「おん」
「赤ちゃんデキた」

今はまだ嘘。でももうデキたも同然だからこう言っといてもいいかなって思って言った。デキてる自信あるもん。さあ志摩くんは何て言う?責任とるって言う?結婚しようって言う?学校辞めるって言う?期待して志摩くんを見たら志摩くんはすごくびっくりしてた。そりゃそうだよね、困ったね志摩くん、どうするのかな?

「え…?ほんまなん、それ…?」
「本当だよ」
「おろし」
「…、え?」

今のなに。おろすって何を。私が固まってたら志摩くんがもう1回言ってきた。

「せやから、赤ん坊おろしぃって。育てられるわけないやろ」
「おろす…って、殺すってことなんだよ!?そんな酷いことするの!?」
「やったら自分1人で育てえや、俺知らんで」
「何それ…」

責任とってくれないの?志摩くんがやったことなのにデキたら終わりってこと?何で?

「志摩くんの子なんだよ…?私産みたいよ…」
「…いらんねんそういうん」
「志摩く、」
「あかん、もう別れようや。俺めんどくさいの苦手やねん」

言葉が出なかった。志摩くんは冷たく言い放ってその場を去った。私と目を合わせることなく。捨てられた。私多分捨てられたんだ。大好きなのに、結婚してくれると思ったのに、おろせなんて言う酷い男じゃないと思ってたのに。今まで優しかったのもきっと表の志摩くんで、裏では私のことどう思ってたんだろう。何回も好きって言ってくれたのに、やっぱり体だけ。

「…っ、た」

ずくん。急にお腹を抉られるような痛みが私を襲った。人が弱ってるときに肉体的にも苦しめようってわけ?あぁもうわけわかんない、何これ超痛い。痛すぎたからお腹抱えて屋上を出て、1番近くのトイレへ入った。痛い痛い痛い、何なのこれ。うずくまってみてハッとした。パンツが赤い。血、みたいな。何で血?糖尿病とか?それとも膀胱炎?意味分かんないよ、血なんて、生理のときくらいしか…生理?これ生理?お腹痛いのは生理痛?あれ?

「な、にそれ、っ」

抉られるような痛みに耐えながらちょっと笑ってみたら涙が出てきた。志摩くんとの子、デキてなかったんだ。いつもより早いけど、だってこれ確実に生理だよね。ってことは、デキてなかったんだ。なんだ、じゃあ私志摩くんと別れなくていいんじゃない?赤ちゃんデキたから別れようって言われたんだよね?早く志摩くんに報告しなきゃ。私はお腹の痛みに耐えながら教室に戻った。教室には出雲ちゃんと一緒に笑う志摩くんの姿があった。悔しい。でも、まだ渡さないよ。

「志摩くん」

2人のもとに歩いてったら志摩くんはめんどくさそうに私を見た。出雲ちゃんもちょっと嫌そう。でもいいよ、なんて思われようと私は志摩くんの彼女でいたいもん。

「志摩くん、さっきの嘘だよ、生理ちゃんときたから、だから、ね、考え直して?」

志摩くんははぁ、とため息をついた。

「うっといねん」

ぐさり。志摩くんの言葉が私の胸を突き刺す。志摩くんはストレートに物を言えない人だと思ってたのに、そうじゃないらしい。出雲ちゃんはふんと鼻を鳴らした。

「悪いけどこいつ、私の彼氏だから」
「え、?」
「さっきから付き合いはじめたんや。せやから、お前いらんねん」

意味、分かんない。意味分かんない意味分かんない意味分かんない意味分かんない意味分かんない。なんで。私こんなに愛してるよ。なんで私を捨てるの?意味分かんないし、笑えないよそれ。

「しま、くん…」

私の体がおかしくなるのを感じた。意識が消える瞬間、私の体が化け物みたいになったのがちょっと見えた。長いしっぽも見えたし、爪も長くなった。私化け物になっちゃうのかな。でも気持ち良いからそのまま意識を手放した。例え化け物でも、もういいの。


志摩くんさえ殺せれば。


END
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私を捨てた男なんかいらない、とヤンデレ化した主人公が悪魔になってしまうお話。バッドエンドですみません。名前様、お付き合いありがとうございました。
20121102
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