付き合い始めて一週間。今まで話したことはあまりありませんでしたが、志摩くんの大胆な告白にきゅんっとやられた名前ちゃんは付き合うことを決意したのです。とは言えお互いをあまり知らない2人は、付き合い出してから知っていくことにしたのですが。

「おっぱいおっぱい騒いでる男子って、好きじゃないんだよね」
「え」

志摩くん、大ピンチです。

「え、なんて?」
「だから、ああいう人、好きじゃない」

名前ちゃんは廊下で騒いでいる男の子達をちらりと見ました。その子達は巨乳教師を見て騒いでいるようです。志摩くんは顔が青くなっていきました。志摩くんだっておっぱいが大好きなのですから。

「あ、そうだ、今度の日曜日、志摩くんの部屋行ってもいい?」
「、え?」
「だからぁ、寮の部屋!志摩くんの部屋見てみたいんだ〜」

志摩くんはますます顔を青くしました。志摩くんの部屋にはいくつもエッチな雑誌があるのです。巨乳なお姉さんが並ぶ雑誌が見つかれば、自分はおっぱいが好きだと主張しているようなものです。志摩くんは焦りました。




(( おっぱい好き男子 ))




「あかん、これあかんやつや」
「どこがあかんねん、ええやんか受け入れてもろたら」

頭を抱える志摩くんの横で勝呂くんは人事のように言いました。

「あきませんよ坊!名前ちゃん、おっぱい好きな男嫌いやゆうてんのですよ!?」
「せやかてお前のこと好いとるんやろ?受け入れてくれるもんやないんか」
「あきません…ああもうあかんどないしよ…」

志摩くんは一先ず雑誌を全て捨てることにしました。大好きなモデルさんもいたので泣く泣くです。これも大好きな名前ちゃんのため、と志摩くんは雑誌を処分します。あとはDVDですが、これは雑誌と違って少し値が張ります。そう簡単に捨てられません。

「坊、これ要ります?」
「要らんわそんなもん」
「ええっ、ごっつ綺麗なお姉さんぎょーさん出ますえ?」
「要らん」
「じ、じゃあ子猫さんは?」
「要らんです」
「ほんならどうしたらええんですか!これは!」
「捨てればええやろてさっきから何遍もゆうてるやんか」
「あきませんよ坊!あっそうだ奥村くんに、」
「見つかったら奥村せんせぇに殺されますえ」
「…」

子猫丸くんが志摩くんにトドメの一言を浴びせ、このやり取りは終わります。嗚呼、俺のAV達。志摩くんは泣きそうになりました。

ある程度処分も終わり、お掃除も終わり、志摩くんはぐったりしていました。それでも愛する名前ちゃんのため。あんなに不真面目だった志摩くんもいい顔をしています。

「これで名前ちゃん呼べるで…!」

志摩くんはこれで大丈夫だと信じていました。




日曜日。
今日は約束通り名前ちゃんが志摩くんの部屋に来る日です。志摩くんは朝からずっとどきどきしていました。そわそわしている志摩くんを、勝呂くんと子猫丸くんは静かに見守ります。

「志摩さんがあないに一途なん、初めてとちゃいますか?」
「せやな。俺らは今日1日ここにいない方が良さそうや」
「そうですね。志摩さん、ほんまに変わりました」

2人は嬉しそうに微笑み、部屋を出ていきました。それと入れ代わりのように、部屋のドアが開かれます。

「志摩くん?」

名前ちゃんの声です。志摩くんは名前ちゃんに駆け寄りました。

「名前ちゃん!おはようさん」
「おはよ。良かった、部屋間違えちゃったかと思った」

名前ちゃんは今日も優しい笑顔を見せます。志摩くんはほわんと胸が熱くなりました。こないな可愛い彼女がいるなんて幸せもんや。

「中入りぃ。お茶しかないんやけどええ?」

志摩くんは名前ちゃんを中へ入れるとそこらへんへ適当に腰掛けるように言いました。名前ちゃんは志摩くんのベッドの近くに座ります。

「お茶入れるの手伝おうか?」
「ええって、座っといてや」

志摩くんはその後、こう言ったことを後悔しました。


志摩くんがお茶を持ってくると、名前ちゃんは黙々と読書をしていました。何や名前ちゃん、彼氏の部屋に来てまで読書かいな。そんな真面目なところも可愛いんやけど。志摩くんはますますほわんと胸を熱くさせます。しかし。

「志摩くん、こういうのが好きなの?」

ふふっと名前ちゃんは笑います。志摩くんは何かと思って名前ちゃんの持っているものを見ました。その瞬間、顔が真っ青になります。

「な、何でそれ…!」

なんと名前ちゃんが持っていたのは志摩くんのエロ雑誌でした。タイトルは“おっぱい天国”。これではおっぱいが好きだと告白したようなものです。志摩くんは焦りで一瞬目の前が真っ白になりました。

「え、ちょお待って、なん、」
「どうしたの?」
「な、なん、何でそれ、持ってるん」
「カーペットの下から出てきたよ?」

名前ちゃんはケロッとした顔で言います。志摩くんはますます真っ青に……あれれ?志摩くんなんだか大丈夫そう?

「名前ちゃん、それ、怒らないん…?」
「え?」

そう、志摩くんはいけると思ったのです。こんなの見てるなんて、と怒られると思っていたのにふわふわ笑っているだけの名前ちゃんを見て、坊が言ってた通り受け入れてくれるんや、なんて単純に考えました。しかし、やはりそんな甘い世の中ではないのです。

「志摩くん、これ見て興奮した?」

びりりりり。名前ちゃんは雑誌を破きながら楽しそうに笑いました。志摩くんは再び真っ青な顔になります。あかん、名前ちゃんめちゃくちゃ怒っとる。名前ちゃんはなおも訊きます。

「ねぇ志摩くん?どう?これで抜いたりもした?」

志摩くんはもう名前ちゃんの顔を見られませんでした。床を見つめたまま拳を握っています。

「名前ちゃん…あの…」
「志摩くんは胸が大きい人がいいんだね。小さいと興奮しないもんね」
「名前ちゃん、」
「…志摩くんのばか」

あかん嫌われた。志摩くんは思わず泣きそうになりました。本当に好きやったのに、こないなことで別れるなんて。志摩くんが項垂れた、そのとき。

「志摩くんは、私の胸じゃ興奮しないの…?」
「…、へ?」
「私以外で興奮しちゃ、やだ」

恐る恐る顔を上げると、名前ちゃんはむくっとほっぺを膨らまして拗ねていました。志摩くんはずきゅううんとやられてしまいます。

「名前ちゃん、堪忍な、こういうの好きやったんや。せやけど、もうこういうんも要らんねん。名前ちゃんだけおったらええ。…信じてもらえるか分からんけど」

志摩くんはそう言って名前ちゃんの手を取りました。名前ちゃんも志摩くんの目をじっと見つめ、しばらく黙り込みます。やっぱり嘘臭いんかな。志摩くんは不安になりましたが、名前ちゃんはふわりと笑ってくれました。

「そっか、ならいいや。でももう2度と見ないって約束だよ?」

ああ良かった。志摩くんは泣きそうです。今日も天使のような笑顔の名前ちゃん。惚れて良かったなんてしみじみ思います。名前ちゃんはにこにこしながら言いました。



「じゃあ、あそこの棚の裏に隠してあるAVも処分してね」
「えっ」


END
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志摩くんが真面目になるお話。アンケや拍手より志摩くんとのハッピーエンドの希望が多かったので、何とかハッピーエンド(?)です。名前様、お付き合いありがとうございました。
20121129
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