何度も何度も同じことの繰り返しを、どのくらい続けているだろう。画面に指を滑らせながら目をぎらつかせ、ノルマ達成を目指していく。別にゲームの腕を上げたいわけではないのだが、真剣にやらなければダイヤが手に入らない。それが問題なのだ。たった10連のダイヤを掻き集めることにだってこんなにも労力を費やすのに、彼はすんなり来てくれない。

「あー、ハートが切れた……」

漸く顔を上げると、わたしの声に反応したように承太郎さんが顔を上げる。海洋生物の分厚くて難しそうな本を閉じると、わたしの頭の上でぽんぽんと掌をバウンドさせた。

「終わったか?」
「いえ……一旦休憩って感じです……」
「そうか」

ぐい、と手を引かれて承太郎さんの胸へ顔を抱き寄せられる。どうやらハートが溜まるまでの数分間を癒してくれるらしい。素直に承太郎さんの背へ腕を回し、その胸板に鼻を押し付けた。この体温が心地好い。

「ありがとうございます、承太郎さん」
「いや。まだかかるのか」
「まだまだですよ、だって全然来てくれないですし……。他の子はたくさん来てくれたんですけどね」
「何だってそんなものに拘るのか解らんがな」

承太郎さんはきっと暇なんだろうと思う。いつもならわたしの一方的なお喋りに優しく相槌を打ち、それも楽しいのか楽しくないのか承太郎さんは感情が顔に出にくいから解らないのだが、それなりにコミュニケーションは取れていた。しかし今現在、わたしはスマホと睨めっこ。今日は承太郎さんと会話すらあまりしていないのだ。

「だってこの承太郎さん、可愛いんです。スタープラチナもちっちゃいし」

承太郎さんもスタープラチナも可愛いとは形容しがたい体格をしているが、アプリ内のふたりは小さくてとっても可愛らしい。承太郎さんはわたしの腕を掴んで少しだけ体を離すと、じっとわたしを見下ろしてくる。

「本物はこっちだ」
「それは解ってますけど……、承太郎さんの全部が欲しいんです」
「欲張り過ぎだぜ」
「だめですか?」

わたしもじっと見上げて返せば、承太郎さんは再び腕を引いて胸へ抱き寄せた。この逞しい胸板に密着すると安心する。可愛らしい承太郎さんでは成る程こんなことはしてもらえないと解ってはいるけれど。

「……やれやれだぜ。あと何分で回復する?」
「あと12分です」

そうか、と呟く承太郎さんの掌はわたしの頬を優しく撫で、わたしは誘導されるように瞼を閉じる。重なる温もりがいつもより甘く、ひょっとして承太郎さんはほんのちょっぴり寂しいのではないかと自分の都合の良い解釈をして嬉しくなった。唇を挟み込むように何度も重ねられて、大きな掌で後頭部を押さえられる。承太郎さんの舌が唇をゆっくりなぞった。

「ん…っ、承太郎さん、12分したら終わりですからね…?」
「あぁ」
「っ…ん、ん…、」

ぬるりと絡め取られる舌。承太郎さんの掌はするすると背筋をなぞって下りてきて、わたしの服の中へ静かに入り込む。数分で終わらないようなことをし始めそうな気配に、両手で承太郎さんの手を掴まえるがびくともしない。それどころか、舌が、唇が、気持ちいい。

「じょたろ、さん…、っ、だめですからね…っ」
「あと11分ある」
「でも、だってこんなの…っ」

素肌を撫でられるとぴくっと肩が浮いてしまった。承太郎さんの指先がわたしの身体を火照らせる。

「あと10分」
「ぅ……、はぁ……っ」

なんて可愛くない承太郎さん。アプリの承太郎さんはこんなことしない。ちっちゃくて、可愛くて、優しい目をしていて、こんな承太郎さんとはまるで違う。体格が違いすぎて抵抗できなかったり、色欲を孕んだ目をしていたりしない。わたしは、わたしが欲しいのは。

「強情だな」

ふっと笑う承太郎さん。ハートが全回復するまでにはまだ時間が掛かるし、それからでもいいかと頭の隅でぼんやり考える。次にキスをされたらもう抗えない。抗いたくない。かっこよくて、色気があって、わたしに構われようとする承太郎さんが愛おしい。承太郎さんはわたしの下着のホックをぷつんと外しながら、更に甘美な口付けをわたしに寄越した。

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ピタパタポップ、4部承太郎さんがなかなか来ないフォロワーさんへ。
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