刀剣男士と審神者。付喪神と人間。
交わる関係だとは端から思ってはいない。ただ主が俺のことを刀として好いてくれて傍に置いてくれているだけで嬉しかった。主とはこれ以上の関係を求めたりしない、というか、求めないようにしていたんだと思う。それなのに主は俺をそんな関係すら許してくれなかった。

「清光なんか、嫌い」

苦しそうな声。主の視線が畳へ落ちる。俺が主に何かしたんだろうか。俺の気持ちが解ってしまったとか。思い当たる節が幾つかあるから途端に汗が噴き出してくる。

「急にどうしたの?」
「清光と一緒に居たくないの」
「近侍を……外すってこと?」
「……そう」

何で嫌われたのか、どうして近侍を外されるのか、理由が伝わってこない。そっか、と呟くのが精一杯で喉の奥が熱くなる。持っていた会議用資料を束ねると主の文机に重ねて置き、のろのろと腰を上げる。一緒に居たくないってことは、今すぐ出ていった方がいいんだよね。主は俺を見ない。

「じゃあ、代わりの近侍を頼みに行くよ。誰にするの?」
「……解らない」
「解らないって……、じゃあ俺が適当に選んでいいの?」
「だって、清光が、いいんだもん……」

えっ、と声が漏れても主は俺を見ないまま。俺がいいっていうのは、それこそどういう意味なのか解らない。主は俺が嫌いで、一緒にも居たくなくて、近侍すら外したいのに、近侍は俺がいい。仕事ができるから? でもそれにはもっと適役が他に居る。初期刀だから? それだけの理由なら嫌いな俺を選ばないはず。主はどうして俺が近侍にしておきたいのか、どうしてさっきから俺のことを見てくれないのか、解らない。

「主、俺を見てよ」

懇願するように主へと声を絞ると、主が泣きそうな顔で俺を見上げる。ねえ、主、それはどんな感情? 俺のこと嫌いだから? 顔も見たくないから? それにしては、何だか、その泣き顔は。

「清光と一緒に居ると、わたし、何だか苦しいの……っ」

揺れる声を聴いて、思わずそれを腕の中へ閉じ込める。愛しい愛しい俺の主。言葉が足りないよ、そんなの、俺が勝手に都合良く解釈しちゃいそう。もっと苦しくさせたい。もっと嫌いって言われたい。だってそれは、ねえ、主。

「大丈夫だよ、心配しないで俺を傍に置いといて」

俺の言葉にこくんと頷く主を更に抱き締め、主の髪へこっそり口付けた。

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「#審神者に嫌いと言われた時の近侍の反応」というタグでの短文です。
20190720
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