>>  東方仗助 / あいり  <<



わんわんわん!
元気良く吠える犬を眺めていると仗助くんを連想してつい口許が緩んでしまう。名前さん、名前さん、と日頃わたしの周りをうろちょろくっついて歩く様はこの犬とまるで同じなのだ。そんなわたしに何かを察したのか、仗助くんが眉間に皺を寄せる。

「なァ〜んか名前さん、今失礼なこと考えてないっスか?」
「ううん、何にも」
「ならいいけどよォ〜」

学ランを着ていない彼は、体格のせいか幾分普段より年上に見えるが、それでもやはり可愛い高校生。今日も待ち合わせの場所で合流した瞬間から尻尾をぶんぶん振り回してじゃれつく勢いでわたしにべったりだ。仗助くんにとって恋人という存在は大きいらしく、わたしを中心とした生活スタイルがたまに心配になる。

「大きい犬って可愛いよね」
「そうっスか? 俺はちっこい犬の方がいいっスけど」

リードを引くおじいさんに会釈をした。触ったら柔らかそうな毛に包まれた大型犬がおじいさんを引っ張り、元気よくわたし達を通り過ぎていく。それを目で追っていると「名前さんって犬が好きなんスね〜」と言われるが、まさか仗助くんみたいで可愛いだなんて教えられない。

「お天気いいから散歩が気持ちいいんだろうね。わたしたちももう少しゆっくりしていこうか」

元気のいい返事をしてくれる仗助くんは、やっぱり犬みたい。たまたま入った公園で日向ぼっこなんて、健全でとてもいいデートだ。先程観た映画がどうだったとか、ランチで入ったレストランがどうだったとか、ふたりでたくさんお喋りをする。仗助くんが一生懸命話している様子は見ていて微笑ましいし、やはり年下らしいと感じるような言葉遣いとテンションで、聞いているこちらがほっこりしてしまうのだ。うん、うん、と相槌を繰り返していると、ふと鼻先に水滴が当たる。

「あれ? 今──……」

言葉を続ける前に、ザァーッとバケツをひっくり返したような雨が突然降ってきた。わたし達は顔を見合わせて辺りを見回すが、屋根のあるところなんてどこにもない。あんなに晴れていたのに、見上げれば分厚い雨雲がいつの間にか居座っている。

「名前さん、とりあえずこっち! チコ〜ッと走るっスよ!」
「わ、わかった!」

仗助くんに手を掴まれ、引かれる方へ慌てて駆け出した。ばしゃばしゃと雨に濡れながら、仗助くんは一体どこへ向かうんだろう、なんて考えて。




(( 雨の下の情愛 ))




何という急展開。料金が堂々と掲示されるホテルにぽかんと口を開けてしまう。わたしも仗助くんも頭から爪先までびっしょり濡れていて電車にもタクシーにも乗れる状態ではないということは確かなのだが、果たしてこれは最善案なのだろうか。

「ここで風呂入って服乾かしながら雨宿りっスかね〜」
「仗助くんは高校生だよね…」
「私服だから大丈夫っスよ」

はいそうしましょうと素直に足を踏み入れることができないのは、わたしたちがそういうことをする仲ではないということもあるかもしれない。そもそも仗助くんはラブホテルがどういうことをする場所なのか知っていて提案しているのだろうか。健全な男子高校生が知らないはずない、とは思うけれど。

「名前さん…風邪引くっスよ…?」

動かないわたしを覗き込む仗助くんはちょっぴり困ったような顔をしていた。そうだ、きっと他意はない、仗助くんはわたしの体調を案じてくれている。仗助くんの掌を恐る恐る握り、行こう、と一言漏らすと仗助くんは漸く安堵したように微笑んだ。
中に入り、適当に部屋を選ぶ。流れるようにエレベーターへ歩いていく仗助くんが何だか高校生のように思えない。どくん、どくん、とわたしの心臓が煩くて仗助くんに聞こえてるんじゃないかと思うけれど、仗助くんはわたしと目を合わせなかった。手を繋いでいるのにまるで他人のように会話がない。公園では一生懸命お喋りしていた仗助くんが、無言でエレベーターを降りてわたしを部屋へと誘導する。

「ほら、脱いで」

てきぱきと湯船にお湯を張る仗助くんが浴室からひょっこり顔を出した。一瞬の出来事に反応が返せない。仗助くんがあまりにも慣れている、気がする。ラブホテルの室内はこんなに広くてベッドも大きいのに、広くて綺麗な浴室を見ても何も言わないのだ。もしかして来たことあるの、とか、そうだとしたら誰と、とか。

「名前さん?」
「えっ? あぁ、うん…」

仗助くんに限ってそんなことはない。でも、そんなのわたしの理想に過ぎない。まだ高校生なのだから、と何度も自分の中で気持ちを落ち着かせる。

「じゃあ、お風呂借りるね」
「ご一緒したかったら受け付けるっスよォ〜」
「あっち行ってて!」
「はは、冗談だって!」

いつものように笑顔を広げる仗助くんに、わたしの疑問は一層深まった。
仗助くんが張ってくれたお湯に肩まで浸かり、嫌な想像を繰り広げる。仗助くんは制服さえ着ていなければやはり高校生には見えないようで、何ともすんなり入れてしまった。そして仗助くんはそれを知っていたように感じる。ボタンで部屋を選ぶシステムもすんなりと受け入れて、普通のホテルとは違って受付に人がいないことさえ疑問を持っていないようだった。やはり来たことがあるのかもしれない。まだ高校生、そして、わたしと付き合っているのに。あの仗助くんが、わたしのことが好きで好きで堪らないと言わんばかりに愛情表現を寄越す仗助くんが、わたし以外の女の子を抱いたんだろうか。高校生の性欲は食欲のそれに匹敵すると聞いたことがある。

「こんなこと考えてたら逆上せそう…」

ぼそりと呟いた声が浴室に少し響いて消えていった。仗助くんも濡れているのだから早く出て代わってあげないと。浴室の外で僅かに聞こえる仗助くんの鼻唄がわたしの心情と相反して、どんな顔を向けていいのか解らなくなった。


 * * * 



カチャリとドアが開いて仗助くんの頭が覗く。いつもの立派なリーゼントがすっかり崩れ、濡れた髪を掻き上げる姿に思わずごくりと喉が鳴った。さっきまであんなに鬱々としていたはずなのに、色気を増した仗助くんを見て何を意識しているのか、わたしの心臓は途端にどくどくと速くなっていく。

「ドライヤー終わったっスか?」
「うん」

すっかり暖まったわたしを見て仗助くんは満足そうに微笑むが、その笑顔にすらドキリと肩を上げてしまうわたしはどうかしてしまったのだろうか。タオルで髪の水分を拭き取り、ドライヤーに手を伸ばす仗助くん。

「……あのォ〜、あんま見られるとよォ…」
「えっ!?」

仗助くんが恥ずかしそうに頬を染めた。意識し過ぎる余り、無意識にじろじろと眺めてしまっていたようだ。慌てて視線を逸らすと仗助くんはますますタオルで髪を覆ってしまう。

「いつもみてェにキマッてないっスから…こんな姿見せたくねーんだけど…」

でも、ワックス持ってきてなくて、と続けた仗助くんに漸く彼がリーゼント姿でないことに照れているのだと察しがついた。わたしがすっぴんを見られてしまうような状況なのだろうか。それをじろじろと眺め回し、仗助くんを知らず知らずのうちに辱しめていたようだ。

「ご、ごめん! でも仗助くん、いつもと違うのもかっこよくて……」

逃げるように立ち上がろうとすると、仗助くんがパッとわたしの手首を掴んで引き止め、嬉しいような恥ずかしいような、緊張した表情でわたしを見上げる。そのまま引っ張られて仗助くんの傍へ誘導された。

「仗助く、」

ん、と同時に唇が押し当てられる。時間にすればたった数秒、それでも瞼を閉じきらずにわたしを見つめる仗助くんに身体中の血が沸騰しそうだった。仗助くんが「あれ、今日は目閉じないんスね」なんて漏らす。

「だって急に…っ、今日はってことは仗助くんはいつも閉じてないの!?」
「だってもったねェだろオ〜〜、名前さんの可愛い顔見たいっスから」

それから後頭部へ手を回されて顔を近付けられ、今度は瞼を閉じた。こんな顔を見られているのだと思うと恥ずかしいが、目を開いたままあの美しい顔がドアップに映る方がわたしの心臓が耐えられない。ちゅ、ちゅう、と分厚い唇に愛撫され、心地好さに仗助くんの腕に寄り添おうと思った瞬間、ぬるりと肉厚な舌がわたしの唇をなぞる。

「ん、む、」

ねっとりと唇をなぞられ、おずおずと口を開いた。仗助くん、こんなキスもできるんだ、なんてどこかで冷静な自分もいる。だけどやっぱり平静を保てないわたしは慌てて仗助くんの胸板を押そうとするが、仗助くんはびくともしないどころか更に深くわたしの口内へ舌を突っ込んだ。ぬめる舌がわたしの粘膜をなぞり、唾液を絡めて音を立てる。舌先を、裏を、根元を、ゆっくりしゃぶるように舐め、時折唾液を飲み込んだ。それが恥ずかしくて仗助くんの胸を押してもやはり退いてはくれない。歯列、歯茎、上顎、また舌に戻ってきて、吸い付いて舐め啜る。

「んっ…、んぅ…っ」

漸く唇が離れると、わたしの唾液で濡れた仗助くんの唇が僅かに光っていた。

「名前さん、……いいっスか?」

仗助くんは上目にわたしを見つめてくる。髪から伝う滴が喉元を濡らし、色気を孕んだ高校生に、女を許していいのだろうか。そして、仗助くんはわたしが初めてじゃないんだろうか。こんなキスだって、わたしは教えていない。

「仗助くん、ちょっと慣れてるよね…」
「はいッ?」
「わたしより若い子との方が、いいでしょ」

嫌な言い方をしてしまったが、事実そう思っている。学生同士学校生活で青春を送った方がずっといいだろうし、その上社会人のわたしとは生活リズムだって違うのだから仗助くんには我慢させてばかりだ。それに、性に関してもやはり若い子の方が魅力的なのではないかと思う。仗助くんはわたしの言葉にみるみる顔を赤くしてわたしの腕を引っ掴んだ。

「何言ってんスかッ!? 俺は名前さんとしかシねェっスよッ!」
「え? …シたことないの?」
「あ、当たり前だろ…、こォ見えて仗助くんは純愛派っつーかよォ〜〜…」

名前さんの中で俺はどんなイメージなんスかねェ〜、と拗ねる仗助くんにぱちくりと瞬きを重ねる。したことがない? それなら、ラブホテルも来たことがない? それが本当だとしたら、どうしてあんなに落ち着いていたのだろうか。唇を尖らせた仗助くんの頬を優しく撫でる。

「だって仗助くん、慣れてる感じがしたから」
「……そりゃァ好きな女とこういうとこ来る妄想なんて死ぬほどしてるっスから…シミュレーション?っつーか…」
「妄想、してたの?」
「〜〜〜ッ……アンタは俺のことガキ扱いしすぎなんだよ!」

いつもにこにこわたしの隣を歩き、別れ際に触れるだけのキスを交わす仗助くんが、別人のように思えた。きょとんと目を丸くするわたしに怒鳴るとそのまま腕を引き、わたしをふわりと抱き上げる。うわ、なんて間抜けな声が出ているうちに仗助くんはさっさとわたしをベッドへ運んでしまった。優しく降ろされたと思えば、仗助くんはその上へ覆い被さってくる。

「アンタがいつも俺のこと可愛いっつーから年下らしく可愛がられとこうかと思ったけどよォ、男は好きな女を抱きたくなるんだからしょうがねェだろ。純粋な少年を演じんのは飽きたっつってんスよ」

ぎらつく炯眼で射抜かれると言葉が返せなくなった。唇が触れるだけで幸せそうに微笑んでいた仗助くんは、本当はずっとわたしとさっきみたいなキスをしたり、それ以上のことを妄想していたというのだ。ラブホテルの仕組みも調べていたのだろうか。それらを理解した上でわたしをここへ誘ったのならば。

「こういうことをするのも、シミュレーションしたの?」
「……毎晩してるぜ」

仗助くんへ腕を伸ばすと、それを合図に唇が重ねられる。舌を遣い、熱を分け合うキス。仗助くんの大きな手はわたしの身体のラインを優しくなぞり、腰へ、脇腹へ、胸へと上がってきた。

「服、脱ぐよ」
「俺が脱がせてもいいっスか?」
「ふふ、いいよ」

ゆっくりとたどたどしい手付きでボタンを外し、服を脱がせていく。スカートを脱がし、キャミソールを脱がし、肌を露にするのは恥ずかしいが、ごくりと喉を鳴らす仗助くんがこんな姿で興奮してくれているのだと思うとたまらない。ブラジャーのホックを漸く外し終えた仗助くんは剥ぐようにそれを取ろうとするが、咄嗟に手で押さえ付ける。

「わたしばっかり恥ずかしいんだけど…」
「じゃあ俺も脱ぐっスよ」

少し恥ずかしそうに頬を染めて仗助くんが服を脱いでいくのをじっと見つめた。普段は身体のラインが出るような服を好まないけれど、仗助くんの身体は程好い筋肉がつき、成熟した男のそれと等しい。いつも可愛がっている高校生は、今からわたしを抱く男なのだと実感する。服を脱いだ仗助くんがわたしの下着を優しく脱がせた。

「綺麗っスね…」

大きな掌で胸に触れる仗助くんは、溜め息のような声でぼそりと漏らす。感触を確かめるように優しく丁寧に揉みしだき、これだけでは性快感はないはずなのに何だか興奮が止まらない。期待で勃ち上がる乳首が仗助くんの掌に当たると、仗助くんは背を丸めてそこへ唇を寄せた。

「っ…」

ぴく、と浮く肩を誤魔化そうと身を捩る。ねろねろとゆっくりと乳頭を舌先で撫でるそれは可愛らしいけれど、反対の乳首は指で少々強めに摘ままれた。力加減がまだ解っていないだけなのだろうが、強弱付けられる愛撫に息が漏れそうになる。

「名前さん、かわいい…」
「ん、ぇ…、」

乳首から唾液を引いて仗助くんが顔を上げた。今度はわたしと目を合わせながら、乳首に前歯を引っ掻ける。柔らかい刺激から強い刺激に変わって気持ちいい。

「ふ、っ、仗助くん…、」
「ん…?」
「きす…」

口が寂しくなって甘えると、仗助くんは嬉しそうに笑ってわたしの唇へキスを落とした。角度を変えながら、二度、三度。吸い付くように唇を挟まれ、舌先で舐められ、その間に仗助くんの掌はわたしの内腿を撫でる。

「名前さん、濡れてる…」

そりゃあ濡れるよ、と思ったけれど恥ずかしくて反応できなかった。ショーツをずり下ろされると糸を引くほどに感じている。仗助くんに見せるのも恥ずかしいくらい欲情しているようだ。

「あんまり見ないで…」
「無理っスよ、ずっと見たかったんスから…」

何ともストレートな物言いに思わず口許が緩んでしまう。仗助くんは本当にわたしとこういうことをすることを妄想していたのだと思わされる。今までそんなに我慢させていたのだろうか。仗助くんがわたしの太ももをぐいと開き、その間へと顔を埋めていく。

「っ、仗助くん、そんなことしなくても…、」
「俺がしてェんスよ。ここ舐めることだってスゲー考えてた」

仗助くんの柔らかな舌がクリトリスを撫でた。舌先でゆっくりと、次第にちろちろ小刻みに移り、固く尖らせた舌で嬲られる。それだけでも気持ちいいのに、仗助くんは親指で皮を剥くと、真っ赤に充血しているそこへ吸い付いた。

「あっ、ん…!」
「痛かったっスか!?」

急に声を上げたわたしを気遣うが、色欲の隠しきれない瞳が興奮に揺れている。ふるふると首を横へ振って見せると仗助くんの頭を優しく撫でた。

「ううん、変な声出してごめんね…」
「変な声じゃなくて、えろい声っつーんスよ」

感じているだけなのだと解れば、仗助くんは更にクリトリスを責めていく。唾液をたっぷり乗せてそれを絡めるように周りをねろねろと縁取り、ぷっくりと勃起してくるそれにキスを落として舐め啜った。ぢゅるう、と下品な音が恥ずかしい。吸引される度にびくびくと跳ねる腰がまるで仗助くんにもっともっとと強請っているようで思わず顔を覆う。

「名前さん…、なァ、顔見せてくんねーんスか」
「っん、ぁ、だって、ぇ…っ」

唇を噛んでいても鼻から吐息が漏れてしまった。くぅん、と甘えるような声が仗助くんによって女にされていくことを自覚させる。恥ずかしい。大好きな彼に情けない顔を暴かれるのはこんなにも恥ずかしいことなのだろうか。仗助くんが面白くなさそうに唇を尖らせる。

「それじゃあ見られたくねェなんて考える暇すら与えなきゃあいいんスよね」
「え、っあ!? あぁ、ぅ…っ!?」

仗助くんの指が膣の中へゆっくり入ってくる。身体と比例して大きい掌は指まで太く、内壁が丁寧に開かれていった。ぐぬ、ぐぬ、と中で響く粘着音。ゆっくり丁寧に出し入れして馴染ませると、もう一本太い指が追加された。それだけで膣内は苦しいのに、腹奥が疼いて仕方ない。

「あ、ぁ…、じょ、すけく…っ、」
「痛くねーっスか?」
「ぅん…っきもちぃ…」

わたしの言葉に安堵の笑みを溢し、仗助くんはまたわたしの脚の間へ顔を埋めた。今舐められたらイッてしまいそうなのに、仗助くんの温かな舌がクリトリスを這う。

「あっ、あぁ…っ! 仗助くんっ、まって、ぇ…っ!」

抉るように下から舐め回され、その間にも指は膣内で折り曲げられる。クリトリスの裏を押すようにくいくいと擦られると腰が跳ね上がって喉が反ってしまった。中を掻き回される度に徐々に増していく煩いくらいの水音は仗助くんの口から垂れてきた唾液なのか、それとも膣口から垂れ流れる蜜なのか。ひくひくと内腿が攣っていき、爪先まで一直線に力が入る。仗助くんの指をぎゅうううと締め付けてびくんと腰を持ち上げると仗助くんは嬉しそうににやりと笑ってわたしを見下ろした。

「あぁあ…っ、はぁ…っ、はあ…っ」
「名前さん、かわいい…」

わたしの絶頂は伝わってしまっただろう。尚もどくんどくんと脈打つように仗助くんの指を締め付けてしまうわたしを愛おしそうに見つめ、それから触れるだけのキスをした。ぐったりと身体の力を抜いていると、仗助くんはコンドームの封を破いてそれへ被せようとする。慣れない手つきが何とも愛らしい。

「わたしがしようか?」
「……なァんか名前さん、経験アリってカンジっスね」
「そんなことはないけど…」

実際それほどの経験はない。それでも社会人と高校生では多少の差は出てくるだろう。それが面白くない仗助くんは唇を尖らせるが、大人しくわたしに委ねてくるので丁寧に被せてやった。くるくると根本まで被せると、その上から軽く上下に扱く。

「うっ、ぐ、名前さん! ふ、不意打ちはずるいっスよッ!」

甘い声を隠そうとわたしを睨む仗助くん。そのまま扱き続けると仗助くんは少しだけ前屈みになり、「あぁもう、ちょっとォ!」と声を上げるので可愛くて少し笑った。わたしの身体をベッドへ押し付け、仗助くんがその上へ乗る。

「気持ちよくなかった?」
「…悔しいけど名前さんにされるとヤバいっス。でも今日は俺が愛したいんスよ」

愛なんて小っ恥ずかしいことをさらりと言っても様になってしまう綺麗な顔が少し憎い。影を落とすほどに長い睫毛がわたしの肌を撫で、首筋にキスを落とされた。

「痛かったら言ってください」
「うん」

唇にもキスを交わし、仗助くんの熱がわたしの中へ入ってくる。質量のある立派な男根は飲み込むだけで成る程苦痛を伴うかもしれない。なるべくゆっくりと心掛けているのか、気持ち良さそうに漏れる吐息が焦れているのだと感じて愛おしくなる。快楽に歪める眉が、大事そうに触れられる掌が、わたしで感じてくれている仗助くんが、わたしを堪らなく感じさせた。蜜が溢れて止まらない。

「仗助くん、動いて、いいから…」
「は、ぁ…っ」

わたしの言葉とほぼ同時に腰を振る仗助くんは御預けを食らっていた犬のようだった。やっぱり仗助くんは大型犬だなあ、なんて微笑むと、仗助くんはわたしの指を自分のそれと絡め合わせて小刻みに腰を遣う。伝う汗が色っぽい。若干の圧迫感は残すものの、仗助くんの大きな男根はわたしの好いところをごりごりと擦り上げた。

「あっ、ぁあ、あ、あぁう…っ」
「ん、名前さん…っ、はぁっ、」

初めてなのだから当然だが、テクニックを問われればないに等しい。しかし膣内の全てを擦り上げるような質量がそれを感じさせなかった。どう動かれても気持ちいい。無遠慮に快楽を貪り、腰を振りたくる仗助くんに喉が反ってしまう。

「あっ、あぁっ、だめぇっ! じょうすけくんっ、あん…っ! ああぁ…っ!」
「く、ぁ…、スッゲー…締まる…ッ」

奥を叩かれる度に目の前がチカチカと白くなった。呼吸が苦しい。脳髄まで貫かれるような快感に腰を引きたくても、上から体重を掛ける仗助くんがそれを許さないのだ。甘えるように絡めていた指を解いたかと思えば両手でわたしの腰をひしと掴み、更に腰を押し付ける。射精をする為の腰遣いにわたしの腰はどんどん持ち上がってしまった。

「あぅ…っ、ああっ、じょう、く…、っ、ああぁ…っ!」
「あ〜……名前さん、はぁ…っ、もっと、愛してェのに…ッ」

びゅる、びゅるうう。コンドーム越しに伝わる仗助くんの欲にわたしも内腿を痙攣させる。内腿どころか、腰も、腹も、仗助くんを感じる全てが彼によって脈打っていった。

「はぁ…っ、はぁ、はぁ…っ、仗助、くん…」
「名前さん、スッゲーかわいい…」

倒れ込むようにわたしを抱き締め、首筋に鼻を埋めてくる。少々体重が苦しいが、それもまた愛おしい。温かな粘膜が仗助くんを離したくないとばかりに甘え、仗助くんもまた引き抜こうとはしなかった。そのままキスを、頬へ、額へ、唇へ。舌が口内を貪り、最初に交わしたときより更に熱くなった舌で愛撫される。愛おしくて堪らない。

「仗助くんも可愛かった…」
「……何だって?」

愛情表現のつもりだったが仗助くんの顔を見て慌ててかっこいいと言い直した。不機嫌そうに口を結ぶ仗助くんの頭を優しく撫でる。

「まだガキ扱いすんのかよ」
「違うよ、仗助くんが好きだからこうしたいの。だっていつもは固めてあって触れないから」
「…まァ、名前さんがしたいならいいけどよォ」

拗ねて見せるものの悪い気はしていないようだ。くしゅくしゅと髪を弄ると仗助くんが照れ臭そうに視線を泳がせた。その仕返しなのか、仗助くんもわたしの頭をぎこちなく撫でる。

「そろそろ雨止んだかなあ」
「止んでたら帰りたいんスか?」
「だって当初の目的は雨宿りだったでしょ」
「だったらよォ〜〜、ずっと降ってていいんスけどねッ!」

甘え上手な仗助くんが鼻先をぐりぐり押し当ててくるのでなかなかベッドから出られる気がしない。それもまた可愛らしくて、「しょうがないなぁ!」と仗助くんを抱き締めた。


END
--------------------
不健全台詞お題だったのでにこにこでした。高校生のラブホテル利用はお止めください。名前様、お付き合いありがとうございました。
20190529
(  )
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -