舐めるような腰遣いに爪先を伸ばして絶頂を迎える。ぐぷり、ぐぷり、深いところを集中的に責め立てる彼はいつだって気持ちよくわたしを泣かせてくれるのだ。
「あう、あうぅ…、ミスタ…、」
「はぁ…っ、オメーの中、うねってるぜ…、俺の精子がそんなに欲しいかァ…?」
軽口を叩きながら欲を擦り付け、彼は汗を伝わせる。きゅうきゅうと彼の射精を促す内壁はぴったりと熱に吸い付き、快楽を貪ろうとしていた。全身から噴き出す汗が、酸素が薄くてぼんやりする頭が、わたしにキスを落とす甘えん坊の彼が、わたしの興奮を煽っていく。
「ああん、あっ…、ミスタ、ねぇ…っ、どうにか、なりそう…っ」
「なってもいいぜ、責任は取ってやるよ…っ」
膝を抱え込むように身体を折り曲げられ、上から体重を掛けられると、ポルチオに彼の先端が当たってしまう。そこは嫌だと首を振っても、彼はとことんわたしを泣かせようとしているのだ。
「ああぁあ、ああ……っ!!!」
「ヒヒ…、少し揺さぶっただけでたまんねェだろ?」
「いやあっ、ミスタッ、ああぁ…っ!」
「ここ弱いもんなァ…、っ、他の男にも、可愛がってもらってるだろうけどよォ…ッ」
蠢く内壁に甘く息を漏らし、彼は歯を食い縛る。一層奥にぐっと腰を押し付けて、ゴム越しにびゅうううっ、と射精した。涙で張り付きそうな瞼を持ち上げて必死に彼を見上げると、それは気持ち良さそうに眉を寄せている。
「く……っ、名前、病み付きになるぜ…、」
「あん、あ、あぁあ…」
返事の代わりに喘ぎを漏らせば、彼は嬉しそうに目を細めた。散々泣かされたわたしからすれば凶悪とも呼べる男根が引き抜かれる頃には、わたしの意識は今にも飛びそうになっている。

「このまま寝るか?」
腕枕をしてくれる彼は、情事の後もスキンシップを大切にするタイプだ。本来なら今にも眠ってしまいたいのだけど、今日は何だか甘えたい気分だった。重い瞼を抉じ開けて彼に擦り寄る。
「ねえ、わたしって信用ないかしら」
わたしの言葉に彼はキョトンと目を丸くした。
「ブチャラティったらわたしに何も教えてくれないのよ。今日幹部への指令も同行したのに、黙りなの。わたしが外部に情報を漏らすと思ってるのかしら?」
「幹部への指令〜〜? 現に俺にゲロっちまってるのは良いのかァ?」
「あら知らなかったの? それじゃあ聞かなかったことにして」
慌てて笑顔を作って誤魔化そうとすると、彼は溜め息を吐いてわたしの頭を一層抱き寄せる。
「ブチャラティはお前を巻き込みたくねェんだよ。本当はギャングにしたことも間違いだったって自分を責めてるはずだぜ。だってお前はスタンド使いじゃあねェ。そうだろ?」
劣等感を煽られる。わたしは皆の足手まといなのだと、そう言われているように聞こえてしまうのだ。
「でも…、自分の身くらい自分で護るわ。その為に貴方に銃を教えてもらったのよ」
「スタンド使いと一般人じゃあワケが違う。こいつは俺の独り言だがよォ、……近いうちにデカイ戦争が起きるぜ」
ハッと顔を上げて彼を見上げると、ばつが悪そうに視線を逸らされた。きっと口止めされているのだろう。麻薬を動かす頭を暗殺することに関係しているのだろうか? だからわざわざヒットマンチームの協力要請を? それとも全然別件の何かだろうか?
「こちら側が攻めるの? それとも、ジョルノが狙われているの?」
「……独り言っつったろうが。これ以上は言えねェんだ」
彼は優しくわたしの髪を撫で、慈しむように額にキスを降らせる。少しだけ擽ったい。
「俺だって、お前には生きてほしい」
「……ブチャラティは今更わたしを追い出さないわよね?」
「さァな。そいつは俺から言うことじゃあねェ。だけどよ、お前が表で生きていきてーと思うのなら、ブチャラティはその為の努力は惜しまないだろうな」
「わたしはここから離れないわッ!!」
感情が荒ぶり、つい大きく声を張ってしまう。こんなことなら信頼されていない方がマシだった。ブチャラティは心の底からわたしを思ってくれている。だからこそ、わたしが確実に生きていける道を選ばせようとしているに違いない。悔しいのか悲しいのか解らない、兎に角喉が熱くなり、涙が込み上げてきた。彼はそれを拭うこともせず、ただ胸を貸してくれる。優しく撫でる掌が、今のわたしには苦しかった。
「眠れるのなら眠っちまえよ。俺はずっとお前の傍にいるぜ。明日の朝まで隣に居てやるよ」
「ミスタ……、わたし……、」
「……ブォナ・ノッテ」
ちゅ、と唇にキスを落とされる。優しく甘い、魔法のキス。わたしを眠りへと導くおまじないのように。

命を絶つことになるのなら、きっとわたしは貴方達の為に。

目を覚ますと、寝顔はぐっと幼くなる彼が薄く口を開けて眠っていた。あんなに泣いたのに夢見は悪くない。彼にはいつだって泣かされている気がするが、これが存外ストレス発散になるのだ。情事も、愚痴も、弱音だって、全て受け止めてわたしを思い切り泣かせてくれる。なんて心地好いのだろう。
「愛しい人…」
彼の頬へ唇を寄せると、擽ったいとばかりに身を捩る姿がまた愛らしい。彼に肌を重ね、次は唇にキスをした。
「ん、んん…? 名前……?」
「ボンジョルノ、ミスタ。起こしてごめんなさい」
「なんだァ…? 朝から美人にお誘いされんのは、悪い気はしねーけどよォ…」
俺はまだ眠いんだよ、とわたしを抱き寄せて腕へ収める。今日の仕事は何時からだったかしら、と考えるものの、覚えがないということはわたしがまだ連絡を見ていないということだ。どうにか彼の腕から抜け出してスケジュールの確認をしなければ、いつも優しいジョルノだって今度ばかりは見逃してくれないかもしれない。身体を捻って彼の腕を退かそうとすると、彼はわたしの腰を乱暴に抱き寄せた。
「っ、ミスタ…」
「はいはい解ったよ、今すぐに、なんだろ…」
「んんっ!?」
彼の唇がわたしの言葉を塞ぐ。違う、そうじゃない、と抗議したくてもこれでは敵わない。彼の胸板をいくら押し返してもびくともしないどころか、それを催促と受け取り、彼の手はわたしのお尻を優しく撫でた。
「ん、んく…っ、」
そこから前部に滑るように。彼の手は徐々にわたしに熱を灯させる。その気にさせるのが上手な官能的な手だ。
「っぷは、…っ、ミスタ…」
「コンドームまだあったか…? そろそろ買わねーとなくなるよなァ」
寝惚けている彼の手癖の悪いこと。誘っている訳じゃない、退いてほしい、と頭の中で叫んでも彼の唇を押し当てられて弱点を器用に責められれば言葉など出てこなくなる。彼に甘えたような喘ぎだけが漏れ、彼がますますその気になってしまうのだ。
「ほら、手を退けろよ。スるんだろ」
最後の抵抗で彼の腕を力無く掴んでいたのだけど、それも無駄になった。彼に教えられた性感を待ち望んでしまう。おずおずと手を離すわたしににんまりと口許を歪めると、彼はわたしに覆い被さった。
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