【versionジョルノ】

甘えるように指を絡めて繋いでいた手をぎゅっと引き寄せられる。バランスを崩して彼の肩にぶつかり、文句を言おうと視線を遣ると、わたし以上に不機嫌な彼。じろりと冷たい目で睨まれる。

「今、誰を呼んだんです?」
「え? あぁ……」

仕事の話をしていたからか、指摘されてから彼の名を呼び間違えていたことに気付いた。甘く繋がれていた掌はギリギリと怒り任せに握りしめられて少し痛い。

「ごめんね」

でも、部下の名前を呼んだだけなのに。そう続く筈だった言葉は彼の目を見て止めた。いつもの平常心が嘘のように嫉妬する彼は、成る程歳相応の少年のようだった。彼の頬を包んで背伸びをし、皺の寄る眉間にキスをすると、彼はほんの僅かに頬を染めるものの唇はまだ尖っている。

「ただの呼び間違いなんですよね」
「当たり前でしょ、彼とはプライベートで出掛けたこともないわ」
「今後も出掛けなくていいんです」

漸く機嫌が直ったらしい少年はわたしを抱き締めて首許に顔を埋める。まだまだ甘えん坊で独占欲の強い少年なのだ。



【versionミスタ】

「オイオイ、今何つったよ?」
「え?」

パラパラとページを捲っていた手を止め、わたしを振り返る。こちらはこちらで本を読んでいた為にきちんと意識がなかったが、もしかしたら今彼の名を呼び間違えたかもしれない。誤魔化すようにそっと離れようとすると、乱暴に腰を掴まれ、元居た場所を通り越して彼の膝の上へと招かれた。いつもなら甘い時間が始まる合図だというのに、何と居心地の悪いことか。

「ごめん、今間違えた……かも」
「かも、じゃなくて間違えたんだよ。フツー恋人のことを呼び間違えるかァ? フツーじゃあないよなァ〜〜」
「だからごめんって……」

逃げるように視線を逸らすと、彼はわたしの頬を両手で包んで無理矢理視線を合わせるように正面を向かせた。全く笑っていない真剣な顔にギクリとする。こうなった彼は少々怖いのだ。

「オメーよォ、俺に隠し事してんじゃあねーだろうなァ?」
「浮気を疑ってるわけ? 貴方に愛され過ぎて他へ行く余裕なんかないのに?」
「女は嘘が上手いからな」

彼には常に誠実なのに、それを否定されるような言い方にカチンと来る。彼の手を振り払い、今度はこちらが彼の頬を潰した。

「へぇ、どこの女を喩えているのかしら? 可愛い恋人に自分を跨がせてまで話したい女って誰なの?」
「……オイオイ、ただの喩えだろうが」
「わたしだってただの呼び間違いよ」

強く言い切ると、彼はその勢いにフフッと笑みを溢した。お互いの独占欲に笑ってしまう。わたしもくすくすと笑うとあちらはもっと声を出してゲラゲラ笑った。よく似た者同士、縛り縛られ生きていくしかないだろうか。



【versionブチャラティ】

ぴくりと指先を固めた彼に疑問を抱き、顔を覗き込む。やはり少々煩かっただろうか。仕事中に甘えるのは流石にやり過ぎたかと思って彼から離れると、急に腰を抱き寄せられて再び体を密着させられた。驚きで、今度はこちらが固まる番だ。

「ブ、ブチャラティ……?」
「随分親しいんだな、俺と間違う程度には」

彼の口角は上がっていない。いつもの穏やかな表情がなく、初めて見る目に言葉が出なかった。怒りを滲ませている。何を発したのか覚えていないほど無意識に話していたが、もしかして彼の名を呼び間違えてしまったのだろうか。

「今、間違えてた? ごめんなさい。邪魔になるからわたしは向こうに行ってるわ」
「邪魔じゃあないさ、もう少しここに居ればいい」
「でも……」

彼は笑わない。こんな空気のまま彼の仕事を妨げることなど出来るわけがないのに、彼は尚も「それで、話の続きはどうした?」と促してくる。わたしの話にほんの少し笑みを広げて相槌を打つ彼を見たかっただけなのに。

「ブチャラティ……、やっぱりわたし部屋に戻るわ。どうか気分を悪くしないで……」
「続きが気になると言ってるんだ。他の男と俺を間違うほど楽しかった出来事なんだろ? 是非聞きたいな」
「そんな……」

違うのよ、ブチャラティごめんなさい。何度も謝っても彼の目は変わらない。どうしたらいつものように笑ってもらえるのか解らず、謝罪を繰り返す。視界が歪み、彼の手がわたしの目尻を拭った。

「怯えさせてしまったか……。悪かった。ただの間違いに子供染みていたな」
「ううん、ごめんなさい……」
「もう謝らないでくれ、自分の欲深さが嫌になる」

ふわりと抱き上げられて彼の膝へと降ろされた。いつもと同じ優しい掌で撫でられる。堪らず彼に抱き着くと、彼は肩口が濡れるのも構わない様子でわたしを抱き返した。

「この話はもう止そう。俺が悪かった。もう少しこのまま傍に居てくれるか?」
「ええ、勿論よブチャラティ」
「いい子だ」

彼は決してわたしの涙を放っとかない。甘くキスを落とし、泣き止んだことを確認すると、彼はいつもと同じように穏やかに微笑んで見せた。

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その他護衛チームキャラはまだお勉強中です。すみません…!
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