普段は色気を感じさせない、至って普通の少年なのだ。大きく胸元を晒していても決して厭らしくない、長く結われた髪だって爽やかな印象を与え、色素の薄い肌や桃色の唇だって何と健全なことか。彼の美しさは芸術品のようなそれで、エロスとは違う気品があった。それが、どういうわけだろう。

「良かった、居たんですね」

濡れたブロンドがこんなにも艶かしい。シャワーを浴びた彼の色気に、ベッドの上に縛り付けられたような感覚に陥る。指先すら動かせない。胸板を伝う雫が、熱気を帯びて僅かに上気した肌が、解かれた髪が、色欲を孕んだ瞳が、わたしを女にしようとしていた。腹の底から感じる甘い疼きに戸惑い、遂には声すら出せなくなった。

「逃げなかったんですね。これが最後のチャンスだったのに」

バスローブに身を包んだ彼がベッドに膝を立てる。彼の体重でスプリングが軋み、期待に濡れるわたしはどうしても動けない。そんなわたしの頬を優しく撫で、彼はくすりと笑った。

「僕が怖いですか?」
「何、言ってるの…、別に怖くなんか…、」
「じゃあ、同意なんですよね」

怖いわけがない。わたしの方がずっと年上で、且つ初めてなわけでもない。相手は年端もいかない少年なのだから、そんな子供に恐怖するはずがないのだ。それなのに、彼の炯眼に射抜かれると自分を保っていられなくなる。自分がどうされてしまうのか解らなくなるのだ。

「目を瞑ってください」

彼の声は麻薬のようで、先程まで指一本動かせなかったわたしの瞼がすっと閉じられる。唇に柔らかな感触。吸い上げるように唇を挟まれ、角度を変えて何度も愛撫される。ぷっくりとした唇同様に肉厚の舌でべろりと唇をなぞられると無視するわけにもいかず、おずおずと口を薄く開けて彼を招いた。わたしの熱を探り、唾液を絡める。

「、ん…、」

特別なことは何もされていない。ただベッドに横になり、彼が上に乗り、唇を重ねているだけ。それなのに器用な舌で口内の粘膜を嬲られるだけでシーツを濡らしてしまいそうだ。官能的で情熱的な彼のキスで、どんどん欲情させられる。舌を隅々まで舐めて唾液を絡め、時折それを吸い上げられて啜られる。単調な動作にも愛が含まれるとこうも違うのだろうか。堪らず彼の首へ腕を回すと、漸く離された唇に唾液が垂れ下がった。

「はぁ…っ、ジョルノ……」
「もうそんな顔をしているんです? 困った人だなぁ。まだまだこれからなんですよ」

横髪を撫でられ、彼の言葉にずくんとお腹の疼きが強くなる。言うとおり、まだキスだけなのだ。キスしかしていないのにこんなにも気持ちいい。確認しなくても解るほど濡らし、不相応な少年を女として求めている。自分がこの少年によってどうされてしまうのか解らないのが、どうしても耐えられない。

「ねえ、やっぱり間違ってるわ…。わたしみたいな女では満足できないと思う。若い女の子なんて幾らでもいるでしょう?」
「えぇ、いますよ。でも貴女ほど魅力的な女性はどこにもいない」

胸板を押すわたしの手を掴み、強引にシーツに縫い付けた。もう片方の手でも抵抗しようと試みても、同じように絡め取られる。

「僕は貴女を満足させられますよ」
「っ…」

束ねられた手にキスを落とされ、甘く囁かれれば、抵抗できるはずがない。この少年に、素直に女を晒していいのだろうか。情けなく身体を暴かれ、弱点を曝すところを想像しただけで恥ずかしい。彼から目を逸らすように身体を捩ると、その最後の抵抗すら許さないとばかりに上から体重を掛けられてそれを阻止される。

「言ったでしょう、さっきのが最後のチャンスだったんですよ。そこで逃げなかった貴女が悪いんです。今更抵抗しようなんて、無駄なことですよ、名前。無駄なことはしない方がいい。そう思いますよね?」

じっと見詰められ、圧力を感じた。わたしが抵抗しようがしまいが関係ないだろうが、それでもその力強い視線に負けてしまう。やっと彼が手を解くので、今度は彼の頬に触れ、上目に誘った。

「それじゃあ、満足させてもらおうかしら」
「えぇ、勿論」

再び熱いキスを交わす。少年の丁寧なそれに、やはりわたしの欲は更に濡れていくのだ。

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シャワー後に色気カンストするジョルノくん。
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