「君、どんどん敏感になっていってないか?」

喉に流れてきた唾液を飲み込みながら見上げると、先生がわたしをまじまじと観察し始めた。こうなると少し厄介なもので、途端に居心地が悪くなる。

「なってないですよ…、」
「いいや、なってるね。現にキスだけでとろとろじゃあないか。自分がどんな顔をしているのか解らないのか?」

鏡を目の前にキスしているわけではないので、解るわけがない。先生とのキスは気持ちいいし蕩けそうになるのは事実だけど、それは大好きな先生にされているからであって、わたしが特別敏感なわけではない。と、思う。先生はわたしのスカートの中に手を入れて、ショーツ越しに脚の間を掌で撫でた。

「キスだけでこうなるのか?」
「え…?」

先生が撫でた部分に熱が帯びていく。ショーツの中は僅かに湿っているのだろうけど、それも大好きな先生に触られたからというだけだ。何をそんなに、と思いながら視線を落とすと、先生は無遠慮にわたしのショーツをずり下げる。驚いて隠すことも忘れたわたしの目に飛び込んできたのは、ショーツに伝う透明な糸。

「え!?」

思わず大きな声が出た。なに、これ? まさかわたしの? キスだけで? あれが、こんなに? 頭が追い付かないままに固まると、先生はそれを指で掬い上げて、にちにちと音を鳴らして観察した。

「演技だったらこうはならないよなァ? 最近君がやけに感じやすくなっているとは思っていたが、キスだけでこうなっているとは思わなかったよ。随分いやらしい体になったじゃあないか」
「…、発言が変態臭いですよ」
「変態なのは君だろ? まだキスだけなんだぜ」

悔しいことに言い返せない。先生と体を重ねる度に気持ちよくなる回数が増えているのは事実だ。それはわたしの感じやすい場所や弱点、されて嬉しいことなどを先生が覚えていっているからだと思っていたのだが、実はそれだけに留まらずわたし自身も先生に対応した体になっていっているようだった。先生は濡れるわたしの膣口に指を挿れ、入り口だけをトントンと叩く。第一関節だけ、たった数センチを挿入されただけで、びくんと過剰に腰を上げてしまった。

「あ、う……っ!」

体を捩ろうとするわたしを封じるように、先生は上から体重を掛けて再びキスを落とした。舌先で唇を舐め回し、薄く開いて招くと口内の粘膜を愛撫される。熱い舌同士でねろねろと擦り合い、唾液を混ぜ、それを啜り舐めとられ、また頭がぼうっとしてきた。先生の指がもう少し奥に入ってくる。

「ん、んん…っ、」

お腹側の内壁をゆっくりゆっくり擦られ、内腿に力が入った。そこを小刻みに揺さぶられるといつも直ぐに頭が真っ白になる。それを知っている先生は、わざと長く持たせる為にゆっくりゆっくり焦らすように出し入れだけを続けた。舌は激しく情熱的に絡めてくるのに、指は対称的に時間を掛けて。

「んぅ…、ふ、んん……っ!ん…!」

思わず腰が先生に媚びるように高く持ち上がる。押し付けて左右にくねらせると、先生は一旦わたしの唇から離れ、その腰の動きを眺めた。まじまじ見られると居心地が悪く、焦れて眉を下げながら耐える他ない。動かなくなったわたしを観察したいわけではないらしく、先生は中で指を折り曲げてわたしの反応を見た。

「っ、ああぅ!」

びくんっ、と体が跳ねる。そこを擦ってほしいのに、今折り曲げたようにもっと、もっと何度もそこだけを。羞恥よりも快楽を求めて先生の胸に縋り付くと、先生はそれに応えるように指を小刻みに押し上げた。ぐ、ぐ、と指先に力を入れられる度に情けない声が押し出され、涙が滲んでくる。

「っ、あ、あっ、あぅ、あっ、あぁっ、ぁ」
「ここ好きだよなァ、そんなに気持ちいいのか?」

気分を良くした先生がわたしの唇を舐めながら指だけを器用に動かした。舌を絡める余裕もなく、一方的に先生に舐められるだけだ。もう直ぐそこの絶頂へ下半身に力が入り、腰を押し付けるように善がった。

「あっ、ああぁあ……っ!」

大袈裟に腰が跳ね、膣内が攣縮する。きゅうきゅうと先生の指を咥えて精を欲するように蠢く内壁。鼓動と連動して脈打つそれを心地好いとばかりに先生は尚も指を動かしながら感触を楽しんだ。こちらは楽しむどころではないというのに。

「あぁっ、せんせぇっ、や、やめて、ぇ……っ」
「遠慮するなよ、マジに気持ちいいって顔してるぜ」
「いやあぁ…っ、あ、ああぁん、っ、せんせぇっ!」

必死にしがみついていた腕を離し、先生の胸板を強く押し返す。一見華奢に見えるのにがっしりとした男の体をした先生は全く揺るがない。それがなんだとばかりにわたしの抵抗を鼻で笑い、指先は力強くわたしの弱点を刺激してわたしを尚も追い詰めていく。どろりと粘着質な蜜が垂れ流れ、何も考えられなくなってくる。

「だめですっ、ねぇ、せんせい……っ! あんっ! もう、やめてぇ……っ!」

快楽の終点が見えてきた。奥歯をガチガチ鳴らして必死に耐えても、それはやって来てしまう。

「せんせ、ほんとに……っ、で、ちゃ……っ」
「何?」
「あああっ、ぅ、でちゃ、うぅ……っ!」

出る?
先生が聞き返したと同時に、透明の汁がプシャアアッとシーツを盛大に濡らした。数回に分けて噴き出るそれに流石に先生も指の動きを止め、ぱちくりと瞬きを繰り返す。腰がかくかくと動いて止まらない。最後まで出しきると絶頂とはまた別の快楽に体から一気に力が抜けるが、それと引き換えに羞恥が湧いて居たたまれなくなる。

「…」
「…」

いつもベラベラと煩い先生は、黙ってわたしを眺めた。何か言えばいいのに。先生に見られているのも耐えられず、両手でそっと自分の顔を覆う。濡れたシーツが冷たくて気持ち悪い。

「…、顔を隠すのか? 恥ずかしいのはそっちなのか?」

先生の興味はわたしの行動に移ったらしい。

「だってもう目合わせられないですよ……恥ずかしいですもん……」
「そう言われると興味が湧いてくるだろ」

先生がわたしの手首を掴むので、思いっきり力を入れる。見せてたまるものか。大好きな人に人生初の潮吹きを晒してしまっただけでも恥ずかしいのに、その上情けない顔まで見られるわけにはいかない。力ずくになれば先生に敵うはずもないのだが、先生はわたしの固いガードに諦めて直ぐに手を離してくれる。

「ナァ、今の顔を見せろよ」
「嫌です」
「生憎拒絶をされるとますます気になるタチなんだよ。それとも強引にされたいのか? 君、マゾなところあるよなァ〜」

いちいちムッと来ることを言うのが先生の嫌なところだ。わたしは別にマゾではない。ただ、先生に強引にされると、流されたくなってしまうだけであって。

「もう退いてください!」

先生の胸板を押すと、漸く解放された顔を覗き込みながら先生はわたしの両手を掴んだ。意図してないだろうけど、まるで手を繋いでいるみたいで恥ずかしい。

「オイオイ、怒ったのか? なんだい急に?」
「やだって言ってるのに先生が意地悪するからじゃないですか」
「意地悪? 変なことを言うなよなァ、恋人の顔を見たいと言うのが意地悪なのか?」
「先生は恋人の顔を見たいんじゃなくて、物珍しい顔を観察したいんですよ」
「…ふん」

言い返してこないというのはやはりそうだからだ。こんな扱いを受けながらも手を振りほどけないのは、手を繋ぐという普段はしない恋人らしい行為にドキドキしているからだ。わたしよりも大きくて男の人と意識させる綺麗な手がわたしの両手を包んでいる、それだけのことにときめいてしまうなんて。

「随分可愛い顔をしているじゃあないか。君のその顔をスケッチしてもいいかい?」
「まさか今からですか? ベッドに恋人がいるのに?」
「ワガママ言うなよ、君って結構自分本位な奴だよな」

先生は自分の方が我儘なのだという自覚がこれっぽっちもない。しかし恋人の我儘を聞いてやろうという気持ちはあるらしく、スケッチブックを取りに行く様子もない。わたしの内腿を優しく撫で、表情を焼き付けるようにじろじろと見て回る。

「ぼくに触れられているときが一番いい顔をしてるぜ。君、ぼくのことが好きで堪らないんだろう」
「ええそうです、だからスケッチなんて言わないでわたしに構ってくださいね」
「もっと可愛く強請れないのか?」

可愛くないのは今更の話だ。それでも先生はわたしに応えるようにベルトを外す。先生なりに何だかんだわたしを甘やかしてくれるのだから、先生だってわたしが好きで堪らないのだと思っていても自惚れではないはずだ。嬉しくて先生の首に腕を回すと、先生はわたしの顎をちろちろ舐めながらわたしに熱を突き立てた。

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質問系言葉責め多そうですよね、露伴ちゃん。
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