逞しい身体と甘い言葉に酔わされて、熱い夜を共にしたのが数日前。何度も何度も絶頂に導かれ、これ以上ない快楽に悶え狂ったのは初めてだった。顔も悪くないし、声だってそう。相性も好みも一致した仲だった。一晩限りの関係にするには惜しいと頭の隅で思ってしまったのは事実だけれど。

「まさかこんな形で会うとはね」
「知らなかったか?」
「ええ、あなたもでしょ?」
「まあな」

彼に銃口を向け、また彼もわたしに銃口を向ける。所属する組織の対立関係だと知っていたらあんなに熱い夜は過ごせていないはず。熱の孕んだ低音であれほどわたしを口説いていたくせに、今の彼からは殺気しか感じない。射抜くような炯眼に溜息が出る。

「いい目してるなァ、俺の下で泣きじゃくるオメーも興奮したけどよォ。その目は何人も"殺ってきた"って分かるぜ」
「あら、たった今あなたを殺そうとしてるのに愛想を尽かさないの?」
「言っただろ、俺はこう見えてロマンチストなんだよ。お前が抱える全ての感情が俺に向いていないと気が済まねェんだ」

確かに彼はロマンチストだ。一晩限りの女相手に何度でも愛を囁いたのだから。快楽主義だけど、その中でも恋愛に擬似したセックスでも求めているのだろうか。そうだとしても、少々愛の行き過ぎた男を演じるつもりらしい。

「それはそれは、随分屈折したロマンチストだこと。生憎、わたしは恋人に銃口を向ける男なんて愛せないわ」

残念だ、と言うように肩を竦めて見せる彼は、じっとわたしを見詰めたままハンマーを下ろす。そのまま躊躇いもせずにトリガーを引くつもりのくせに、演技臭い動作が癇に障った。

「私を愛しているなら大人しく殺られて頂戴よ」

わたしの方もセーフティを解除する。あの晩を思えば非常に惜しいが、組織を裏切るほどセックスに飢えているわけではない。目を細めて彼を狙うと、彼も銃を手で支えてわたしに定める。

「つれねェな、最期までお前を見詰めさせてくれよ。綺麗に殺ってやるから」
「そんな愛情御断りよ、馬鹿ね」

パンッ、と同時に放たれた銃声はあの晩重なり合ったわたし達のようにひとつに溶け合い、一発の発砲にしか聴こえなかった。

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シリアス向いてないと分かっていましたが敵対関係どうしても書いてみたくて書きました。シリアスお得意な「青い煙」のきよか様にも図々しくリクエスト致しましたら書いていただけましたので自慢させてください。こちら*です。18歳以上の方のみ4444の入力をお願いします。(別タブで移動します)
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