(( 彼と、透明な彼と、 ))



承太郎さんは海の生物が好きらしく、その研究とかで忙しいんだって聞いたことがある。確かに承太郎さんは多忙だ。現にわたしがお風呂から出てきたらもう机に向かってノートをまとめている。あんなに愛し合った後なんだからもう少しこう、なんかあってもいいのに。一緒にお風呂に入りたいなんて恥ずかしいことは言わないから、もっと、こう。

「承太郎さん」

後ろから承太郎さんに抱き付くと、承太郎さんはすまなそうな顔で、あぁ、悪いな、と言った。悪いなってことは止められなくてごめんという意味。承太郎さんが一度研究者モードに入ってしまうとなかなか彼氏モードには戻ってきてくれないのを知っているからこそ脱力。あーあ、今日はもうだめかぁ、ちょっぴり寂しいな。仕方がないからごろんとベッドに横になって承太郎さんの背中を見る。大きくて逞しい背中。かっこよくていくらでも見ていたいけど、今はこの背中も少し憎い。

「承太郎さんのばか…」

ぽそ、と呟いても承太郎さんには届かない。寂しくて逆の方向を向くと、ふわりと頭に暖かい感触が降ってきた。不審に思って上を見ても何もない。

「ん…?」

今のは何だったんだろう。小首を傾げると、次は頬を撫でられたような感触。人の手、みたいな…? でも何もいない。その感触は撫で撫でと優しくわたしを落ち着かせるような動作で、何だか少し知っているような感触。正体不明の感触なのに恐怖と同じくらい心地好さを感じた。

「ん、む…」

それがわたしの唇を優しくなぞる。次にふにふにと遊び、顎を擽った。この感触、そういえば承太郎さんの掌に似てるかもしれない。それでも正体不明のそれに心を許したわけではない。透明の何かに触られるというのはどうも落ち着かないのだ。承太郎さんに助けを求めようと口を開くと、その手はわたしの体のラインをゆっくりとなぞった。

「っ…!」

つつぅ、と腰から脇腹へ、そして胸へ。あとは眠るだけなのでブラジャーはしていない。服の上からやわやわと揉まれて思わず息を飲んだ。先端を布越しに遊ばれて、それが何と気持ちいいことか。

「、ん…」

指で弾かれ、爪で引っ掻かれる。見えないのに何をされているかがよく分かって腰が浮きそうになった。直接触ってほしいようなもどかしさに眉を寄せると、ふわりと服が捲られる。

「えっ、ちょっと待っ…」

動きを制そうにも正体は透明なのだ。どこを押していいのかも分からずにキョロキョロすると、突然胸にぬるりと何かが這う。

「あっ、ぅ…!」

この柔らかさは、舌、なのかな。先端をくりくり舐められて時折噛まれたり吸われたりする。わたしがされたいことを知っているような動きに翻弄され、あまりの気持ちよさに背中が反ってしまう。どうしよう、下、すごい濡れてる…。本当は助けを求めたいのに、正体不明の感覚にこんなにも感じてしまえば承太郎さんに幻滅されてしまうかもしれない。本当は怖いのに心地好くて気持ちいい。浮きそうな腰を必死に堪えながら膝を擦り合わせる。声も、我慢しないと。先端を口に含まれて強く吸引されるような感触に唇を噛み、必死に声を押し殺したところで、掌が足をなぞった。

「待っ、て、ぇ…っ」

そこは本当にだめになる。いやいやと抵抗をしても脱げていく服に涙が滲みそうだった。あっという間に剥ぎ取られてしまったショーツは足首で丸まっていて、驚いているうちにぬるりと秘部を撫でる感触。くちゅ、くちゅ、と動く度に水音が立ち、やはり相当濡れているのだと自覚させられた。承太郎さんに気づかれたくない。

「ん、んんぅ…!」

触られたくて厭らしく勃ち上がっている芽をねろねろと舌でなぶられて、指が蜜壷へ入ってきた。やっぱり承太郎さんの感触とよく似ていて指が太い。それでも先程まで承太郎さんに愛されていたせいか難なくそれを呑み込んでしまい、わたしの敏感なところを容赦なく擦られる。

「く、ふぅ…っ、ん、ん、んんぅ…っ!」

気持ち良くてどうしようもない。おかしくなりそうだ。強引なのに決して荒くない、優しい手付きでわたしを責める。好きなところを熟知しているかのようにわたしの弱点ばかりを的確に触るのだ。芽を舐められたり強く吸われたりするだけでも腰が蕩けてしまいそうなほどの快感なのに、内壁を優しくトントンと押し上げてちょうど芽の裏側を愛撫されたら、腰が高く持ち上がって声が我慢できなくなる。太股がどんどん痙攣していき、目の前がチカチカしてきた。あ、どうしよう、もう声我慢できない、いきそう、いく、いっちゃいたい。

「あっ、ああぁあ…っ!」

びくんっ。びくんっ。
何度も腰が持ち上がり、全身が大きく痙攣した。正体不明の指を強く締め付けたまま全身が心地好い快感で包まれる。気持ちいいのが止まらない。シーツが引きちぎれそうなほど強く握ったのに何も我慢できなかったわたしはあっという間に絶頂に導かれてはしたなく声を上げてしまったのだ。恐る恐る承太郎さんの方を振り向くと、承太郎さんはじっとこちらを眺めていた。や、やばい。見えない何かにイカされたところを見られていたに違いない。惨めで何だか泣きそうだ。

「じょ、たろさ…」
「お遊びは終わったか?」
「な、遊んでなんて…っ、わたし、こわくて…っ」
「あんなに気持ち良さそうな声を上げて、か?」

目を細める承太郎さんに血の気が引いていく。立ち上がってベッドへ近付く承太郎さんが少しだけ怖かった。幻滅された? 叱られる? わたしは誰に何をされていたの? 全部わからない。

「スタープラチナも所詮は俺の分身か」
「え…?」
「だがその先を許すつもりはない」

何を言っているかわからない。ギシ、とベッドに体重を掛ける承太郎さんはわたしに優しく口付けた。彼氏モードに戻ってきてくれたのは嬉しくても、何だか不穏な空気に頭が混乱する。

「承太郎さん、待って…」
「待たねえ」

カチャカチャとベルトを外す承太郎さんがこれから何をしようとしているのかわからないわけではない。でも今イッたばかりなのに承太郎さんにされてしまったら。

「承太郎さん…っ、今は、まだ…!」
「往生際が悪いな、もう一度あいつに参加してもらいてぇのか」
「え、」

くい、と承太郎さんが顎を使うと、わたしの両手首が見えない掌で拘束される。力強くてびくともせず、力無く首を横に振っても承太郎さんは自身をわたしへ宛てがった。

「舌を噛むなよ」

蕩けたそこへ、ぐっ、と熱が押し込まれる。一気に奥まで挿入され、思わず背中が反ってしまう。承太郎さんに突かれながらぺろぺろと見えない何かに唇を舐められるので素直に舌を突き出してそれに絡めた。承太郎さんが激しくなっていく。

「堂々と見せ付けるんだな」
「っ、ふ、あぁ…っ、じょたろ、さ、これっ、浮気ですか…っ?」
「いや浮気にはならねぇな。スタープラチナは俺の一部だ」
「これぇっ、じょうたろさんの、なんですか…っ?」
「べらべら喋るんじゃあねえ。後で説明してやるから黙ってな」

わたしの手を拘束していたはずの掌が胸に滑ってくる。先程散々弄られた先端をまたカリカリと引っ掻かれた。快感に身を捩ると承太郎さんが不満そうにわたしの腰を押し付ける。

「行儀が悪いな」
「っごめ、なさ…」

気持ちよさが桁違いだ。承太郎さんの逞しい熱でごりごりと奥を掻き回されて、見えない手で胸を愛撫されて、おかしくなる。プシャアッと勢いよく潮を噴き出しても承太郎さんはそれがなんだとばかりに腰を掴んだまま動きを止めてくれない。一突きごとに細かく噴き上げるそれに絶叫しながら悶え狂う。頭が真っ白だ。

「じょたろさっ、じょうたろぉさん…っ」
「もうすぐだ」
「はやく、はやくうぅ…っ」

奥歯をガチガチ鳴らしながら快感に耐えてもまた絶頂へ持っていかれる。気持ちいいなんてものではない。狂わされる。終わりが全く見えずに承太郎さんに縋ると、承太郎さんが小さく「名前…、」と囁いた。それに反応してぎゅうっと承太郎さんを締め付けると、承太郎さんの熱が奥にどくどくと注がれた。やっと、やっとこの快感地獄から解放される。倦怠感が酷くて目が開けていられず、わたしはぐったりとその場で落ちる。あ、頭を撫でてくれている。この手はどっちの手なんだろう。確認したくても瞼が持ち上がらず、わたしはそのまま意識を手離した。


END
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スタプラさんのえろを書きたかっただけです。変なことにスタンド使ってすみません…!名前様、お付き合いありがとうございました。
20180908
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